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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第4章 「天の恵み」攻防戦 Ⅲ
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第43話 二つ首の化け物

 二人から見て「天の恵み」の反対側をダダラフィンとバンスが抑えていた。

 グスタフもまた近接戦闘を行っていた。

 「魔物」の死体は、国軍が持ち出してきた火炎放射器を用いて焼いて言っている。


「こんなものまで、あるとはな。」


 ダダラフィンは小さく呟いた。


 たぶん「バベルの塔」が貸与したものなのだろうが。


 最初から奴らだけでやればいいじゃないか。


 ダダラフィンは「バベルの塔」が持っている技術なら、自分たち人類は不要なのではないかと、疑念がもたげてくる。


 おそらく彼らはもっと効率のいい殺戮兵器を持っていることだろう。


 しばらく滞在したことのあるモンデリヒトでは、明らかに高い技術力を見せつけるように、町の中を機械たちが走り回っていた。

 聞くところによるとアルクネメの幼馴染の少年はバイクという機械仕掛けの乗り物でセイレイン市まで来たという。

 そんなものが充実すれば馬などは不必要だ。

 事実巨大な「天の恵み」運搬車を筆頭に、自分たちを運んだ移動車両や、戦闘指令車には馬はつながれていない。


 とりあえず、デザートストームとオオネスカのチームで「天の恵み」の周囲の掃討を完了し、国軍が対「魔物」シールド装置を展開していた。

 この詳しい動作原理は知らされていないが、どうやらその周囲の「テレム」を分解することにより、「魔物」たちを近づけないようにしているのではないかとシシドーが推測していた。


「緊急警告!アクエリアス別動隊に引き付けられていた「魔物」たち、特に巨大な二つ首の化け物が反転、「天の恵み」の方向に進路を変えました!」


 アクエリアス別動隊の残存兵力である唯一残った戦闘指令車から、全兵士に対し緊急伝令が走った。


 すぐにオービットの情報がその事実を補足。オオネスカも上空からその模様を知らせてきた。


 デザートストーム連合部隊の全員が、その化け物の映像をアイ・シートから受け取る。


 先にオオネスカとミノルフの戦いで見た、二つ首の優に2倍以上の大きさであった。


「こいつとやるのか?」


 ダダラフィンが呆然として、呟いた。


 だが、すでにオオネスカとエンジェルはその化け物に向かって跳び始めていた。


 すぐにそれにアルクネメが反応、光る円盤状のものが足元に発生したかと思うと、すぐに上昇を開始した。

 残されたマリオネットは自分の全神経を足元に集中し、同じような円盤を発せさせた。


「あいつら、バケモンか?」


 グスタムは同じ戦士であるマリオネットまでもが、この「魔導力」を使いこなし始めていることに驚嘆した。


 だが、同時に、マリオネットの目から赤い涙のようなものがこぼれたのを見逃さなかった。


「大丈夫か、マリオ。死に急ぐんじゃないぞ。」


 だが、グスタフのその言葉はマリオネットには届かなかった。


ー-------------------------


 二人の部下を引き連れて、戦場を馬を操り駆けまわっていたモナフィートの目は、今絶望の色を発していた。

 何とか半分に減った戦力を再配置して、自ら戦場で「魔物」たちの注目を集めさせ、「天の恵み」から出来るだけ引き剝がそうとしていた。


 だが、あの巨大な二つ首はとうとう反転をし始めた。


 集まってくる他の「魔物」は集団で無力化していたのだが、最大の脅威が、自分たちに飽き、よりおいしそうなもの、「天の恵み」にその対象を変えてしまったのだ。


 謎の攻撃は2回目以降、行われてはいない。

 おそらくそれぞれの首から行われたのち、エネルギーを貯めるための時間が必要なのだろうと推察される。


 だが、その時間がどれほどなのか、全く見当がつかない。


 もし、その力が「天の恵み」に行使されれば、何もかも水泡に帰してしまう。


「直ちに全軍に、敵が反転し、「天の恵み」を狙っていることを知らせよ!」


「イエッサー!」


 二人の部下が同時に言い、すぐに戦闘リングを通じ、アクエリアス別動隊に唯一残る戦闘指令車に檄が飛ぶ。


 それに呼応するように、各隊が所有する飛竜隊の姿が見えてきた。


 飛べるものは、アクエリアス別動隊の方向にいる「魔物」に向かう。


 連絡を受けたミノルフはそこに巨大な二つ首の「魔物」を目視した。


「でかいな。」


 全長が20mを超える二つの首がある「魔物」。


 「天の恵み」での戦いの相手よりさらに大きいその体は、ゆっくりと「天の恵み」に向かっていた。

 その巨体を支える足は8本を数える。

 背中にはかなりの硬度を持つであろう甲羅に、異様な赤い目が所狭しと敷き詰められている。


 ただし、その移動速度は恐ろしく遅い。


 もし戦うのであれば、そこが唯一のミノルフ側の有利な点である。


「ここは先程から、一番長く戦っている場所だからな。」


 ミノルフはひとり呟いた。


「どういうことですか?」


 ミノルフの独り言に応える声があった。


 いつの間にか、横にオオネスカとエンジェルがいた。


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