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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第2章 「天の恵み」攻防戦 Ⅰ
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第19話 チャチャナル・ネルディ・バンス Ⅱ

「バンス殿はどちらの出身なんですか?「冒険者」の方には各国を渡り歩くこともあるそうですが?」


「ああ、俺はこのクレイモア国の出身だよ。王都より北にあるイワタキタ藩に家族がいる。ダダラフィンはムゲンシンの出身だがな。」


「「冒険者」は長いんですか?」


「長いと言えば長いか。18にダダラフィンの父親のモンサンド・ダダラフィンに弟子入りしてからだから、25年くらいになる。まあこの「リクエスト」が終わったら、身の振り方を考えるためにイワタキタに戻るつもりだがな。このチームもシシドーがこの「リクエスト」後にタハトに戻って、医療省に入省するつもりらしい。チームは解散する予定さ。」


「もしかすると、この「リクエスト」のために再結成されたのですか?」


 そうアルクネメが言うと、明らかな動揺がハンスの態度に現れた。


 うわー、すんごく、目が泳いでる!


 さっきの紹介するときの最後の目的が絡んでいそうね。


 アルクネメは、車内での不自然な会話を思い出す。

 と、同時に車内の座席の配置に意図的なものを感じていた。


「まあ、その、なんだ。いい報酬もらって、隠居ってのもいいかなとかさ。」


「先ほどまでの会話の切れがありませんよ、バンス殿。」


「はーあ、まあ、しょうがないか。もともと、俺は隠し事なんか、向いてないかんな。既にお前さんとこのリーダー、バッシュフォード伯爵令嬢は気付いてダダラフィンとこの協同作戦を受け入れてるし。」


 一生懸命自分に言い訳をするバンス。

 その言動にアルクネメは微笑んでしまう。


「やはり、我々学生の「防護者」だったわけですね。」


「まあ、そんなとこだよ。この移動車両の配置からして、故意だ。学生と「冒険者」を向かい合わせてるからな。」


 バンスは自分用に淹れたコーヒーを煽るように飲み込んだ。


「既に分かってるとは思うが、王国政府も、「バベルの塔」も、ただこの「天の恵み」回収のための人員集めで学生を徴用したわけではない。出来れば参加なんかさせたくなかったというのが、本音だ。「特例魔導士」が生まれてくる確率を考えれば当然だろう。だが逆に、その能力を使わないのは作戦遂行上、惜しいと考える勢力もあった。今回の「リクエスト」は異常なんだよ。発令から実行まで2日ないなんて、この「冒険者」を25年間やっていて聞いたことがない。そして最大の戦力を投入している。今、この国の戦力の半分以上が「リクエスト」に集められているんだ。俺たちの情報網には、この「リクエスト」の執行時に叛乱がおきるのではないかなんて噂までたっている。そこまでしても、「天の恵み」回収を最速で行いたいと、「バベルの塔」執政者たちは考えているんだろう。何故かは解らんが。」


「と言っても、初陣はたとえ能力が飛びぬけていても、死亡率が高い。そこで協力者を募り、「リクエスト」をこなしつつ、学生を守るように指示が来た。」


「全くその通り。だからと言って、危なくなりゃ、自分の命が大事だからな。学生は切り捨てる気でいるんだけどよ。こっちとしても、学生の「特例魔導士」の才能にかけてるところはある。アスカっていう「医療魔導」の能力を持つ坊ちゃんとオービットっていう「探索」の能力を持つ色っぽい姉ちゃんの才能は見なくともわかるくらいにずば抜けていた。だから既にあの姉ちゃんの力はこちらと同調させてもらっている。」


 確かに連動しているシステムに次々とデーターが送り込まれてきている。

 その取捨選択は内臓のコマンドと「魔導力」によって勝手になされているが。

 出発時のチームでのやり取りの倍以上が流れ込んでいる感覚だ。


「リーダーに従います。それがこの「リクエスト」を達成させて、生きて帰るための最善の選択ですから。」


「あの二人は専門に特化しすぎていて、俺らくらいのレベルでも分かっちまうが、アルクやゴツイ兄ちゃん、伯爵令嬢のはっきりした力は俺らにはまだわからん。だが、その才能が開花したらきっととんでもないことになるんだろうな。そんな風には感じてるよ、あくまでも個人の感想だがな。」


 まあ、お世辞とこれからのことを考えて、自信をつけてもらうという事でもあるんだろうけど。

 アルクネメはバンスの言葉をそう解釈した。


 その時だった。


 アイ・シートが真っ赤になる。


 続いて戦闘用リングを通じて脳に直接響く。


 警告!「魔物」接近!


 アルクは素早く立ち上がり、戦闘準備に入った。


 焚火の向こうでバンスも同じ行動をとっていた。



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