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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第2章 「天の恵み」攻防戦 Ⅰ
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第18話 チャチャナル・ネルディ・バンス Ⅰ

 ブルックスが渡してくれた剣と盾は、最初に戦士のマリオネットに渡そうとしたが、アザムル同様、その肉体に「魔導力」を使っており、拳を武器として使用する関係上、断られた。

 結果、盾をアスカが、剣をオービットに渡した。

 それとブルックスが開発した「テレム」発生器は全員に渡した。

 皆、半信半疑だったが、リングとの同調操作を行い、少し握りしめるようにすると「テレム」の数値が結構上がったことを確認すると、とりあえず使ってみるという事になった。


 アルクネメは残った2つの発生器のうち、一つをブルックスが指示した通りヘアバンドに括り付ける形で帽子の中に格納した。

 これは、「テレム」を発生して頭部に防護壁のようなものを形成するイメージで守れるとの言葉を信じた。


 食事を終え、アルクネメとオオネスカ、オービットは連れ立って、川沿いに簡易のカーテンが設置された洗い場に向かった。

 全身を洗うとまではいかないが、上半身だけでも清潔にしたいという事で3人はここに来た。

 男性二人は留守番である。

 一応、安全性は高いとはいえ、視認できる範囲で「魔物」の巣窟、ガンジルク山がある。

 警戒を怠っていいわけではない。


 武具、背嚢を川辺に置き、上半身の野戦服、シャツ、胸を押さえてる胸当てと留め具のないブラを脱ぐ。

 ここのところ成長している自分の二つの膨らみを眺めた。

 押さえつけている反動で赤みがついている。

 出来れば下着も洗いたいところだが、そのような余裕はない。


 オービットが大きな膨らみを女子だけとはいえ、誇らしげに見せつけるように露にし、川の水をその二つの膨らみにかけている。

 若さを証明するようにその掛けられた水をはじく肌は、女から見ても惚れ惚れしてしまう。


「本当に腹立つほど、オーブの胸は綺麗よね。自分のを見てしまうと、殺意すら湧いてくるわ。」


 オオネスカが、睨みつけるような目つきでオービットの胸を見つめている。

 そういうオオネスカはアルクネメより明らかに可愛らしい。

 あんな言い方をしていると、つい揉んで大きくなるための手助けをしてあげたくなる。


 そんなことを想いながら、桶で川の水をすくい、肩から掛け流す。

 水の冷たさが自分の身体にある熱を奪っていく。

 自分の胸を軽く洗いながら、汗の気持ち悪さが薄れていく。

 その時、自分の胸の先を触った時に、不意にブルックスとの口づけを思い出してしまう。

 身体がうずくのを感じる。

 そんな自分を二人が見つていることを感じて、慌てて力強くこすり、洗浄を終えた。


「上半身だけだけど、さっぱりしたね、アルク。」


 気軽に声を掛けてきたのはオオネスカだ。

 ブラを付け、しっかりと胸当てを装着し、シャツ、野戦服を身に着ける。


 オービットは相変わらずの胸の付きだしである。


「ここからは贅沢は言ってられないから。気を引き締めていこう。」


 オオネスカがアルクネメ、オービットにそう言って野営地に戻る。


 もしかしたら、また私の心が漏れてしまったかもしれない。


 アルクネメは、オオネスカの態度にそんなことを考えてしまう。


「しっかり、生きて帰ろう、アルク。私たちの力を信じて。」


 オービットにまで元気づけられてしまう。

 だが、二人の言うことは、全くその通りだと思う。

 アルクネメは武具と背嚢をしっかり背負い、野営地に向かった。


ー------------------


 まだ夜になると肌寒い季節だ。

 野戦用のマントをかぶり、アルクネメは先ほどバンスの入れてくれたホットミルクを啜っていた。


「お嬢さん、えっと、アルクネメさんだっけ。」


「アルクで結構ですよ、バンス殿。温かいミルクの差し入れ、ありがとうございます。」


 既に日付が変わろうとしている。

 今さっき、オービットと夜間監視を交代したところだ。


 基本的に「冒険者」チーム、デザートストームと協同で事に当たることをオオネスカとダダラフィンの間で決まった。

 奇しくもアザムルの一言目が実現した形である。


 2時間ごとの交代だが、デザートストームとは1時間ずらしてある。


 あと1時間はアルクネメとバンスは一緒に監視することになる。


 焚火のところで向かいに座る位置で二人が配置されている。

 野営テントも隣同士で設置した。

 少し離れたところに篝火も灯されている。


「あまり個人のことを聞くのも何なんだが、アルクは幾つだ?かなり若く見えるんだが。」


「16です。養成学校では3年に在籍しています。」


「3年だと!正気か、お前さんも、学校も‼」


 アルクネメの言葉に驚いたような声を上げた。


「他のチームメイトはみな、5年生です。今回のミッションは気心の知れたいつものメンバーでやりたいとオオネスカ先輩に言われて、私が決めました。私の「魔導力」はかなりのレベルだそうです。」


「うん、いや、皆事情はあるからな。まして、自分の意志であれば、俺は何も言えないよ。でもな、16か。俺の娘も16に今年なるんだよ。地元で馬の調教師になるために勉強している。」


 と、すると自分の父親くらいの年なのだろうか。

 アルクネメはそんなことを考えた。


「となると、やっぱりしかっりとこの仕事をやらんとな。アルクはこの「リクエスト」終了して学校を出た後はどうするか、考えているのか。とはいえ「特例魔導士」の未来は狭いがな。」


「幼馴染が剣や盾を作る鍛冶屋の息子なんですが、結構強い「魔道工具」を作るんです。それがいかに素晴らしいか、私の腕で証明していきたいと思っています。今回の武具も彼が用意してくれました。あと・・。」


 アルクネメは自分の持っている剣と盾、そして手首に括り付けてある「テレム」発生器を見せる。


「この剣と盾には「テレム」を吹き付けてあるそうです。あとこの小型の物なんですが、彼は「テレム」発生器だと言ってました。」


「ほう、「テレム」発生器、か。」


「フィルターに「テレム」を発生させる「テレムリウム」を組み込んであって、空気中に必要なものがこの中に入ってくれば「テレム」を発生することが出来るようです。」


「ほう、よく考えたもんだ。今の話だと、もともと力がないと使いこなせなさそうだな。「特例魔導士」ならではというところか。」


「だという事です。ただ、まだ試作品で、実際に使えるかどうかは分からないとも言われましたが。」


「だと、リングの表示から目が離せんなあ、ハハハハハ。」


 たからかに笑うバンスの顔に自分の両親を思い出す。

 ダメだ、そんなことを今思い出すことではない。


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