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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第10章 賢者の哀しみ
143/231

第143話 アクパの存在

明けましておめでとうございます。

説明回ばかりで申し訳ありません。

この説明会は、次作以降の本編に重要になるため、もう少し付き合っていただけると、嬉しいです。

 「サルトル」達の乗る輸送車両は先を行く「天の恵み」回収用搬送車にかなり近づいていた。

 また交易ロードまでも、もうすぐの位置に来ていた。

 交易ロードに「天の恵み」回収用搬送車を入れることが出来れば、一つのヤマを越えることになる。


 外にはもう暗闇だけが支配していたが、交易ロードを示す灯りはもうすでに視界に入っている。


「お呼びですか、「サルトル」様。」


 会議室には半分だけ照明がついている。

 そのスクリーンの前に賢者「サルトル」が座っている。

 アルクネメが声を掛けると、瞼を開き、アルクネメに視線を向けた。


「休んでいたところを呼んでしまって、申し訳ありません。」


 すでにこの車両に乗っているものは、個室を与えられ各自食事と休憩を取っている。


 オオネスカも、ダダラフィンも眠りについている。

 ダダラフィンの様態は安定しており、義足を作ることで「バベルの塔」とは話がまとまっているらしい。


 オオネスカの内臓の損傷もアスカとこの車両の機材で、かなり痛みを軽減しており、国に帰り次第、医療省直轄の中央病院での治療が決まっている。

 その為の医療データーもアスカが書面を作成して、戦闘用リングによる情報伝達が済んだところだ。


 「テレム強化剤」の効力は既に切れて、二人とも野戦服姿に戻った。

 もっともオオネスカはその野戦服を脱がされて、医療用の白いガウンを着て眠っている。


「大丈夫です。まだ眠れる状態ではなかったので…。」


 アルクネメがそう言って、ここに呼ばれた理由を聞こうとした時に、アルクネメが入ってきたドアが再び開いた。


 ミノルフがこの会議室に顔を出した。


「ミノルフ司令も呼ばれたのですか?」


「ええ、二人を呼んだのよ。ちょっと聞きたいことと、司令は私に聞きたいことがあるかと思って。」


 確かに、先ほどの「サルトル」の要請が終わった時、何かを「サルトル」に聞こうとして、中途で聞くのをやめたようには見えた。


「やはり見抜かれていましたか。」


「何を聞きたいかは想像がつきますが、まずはアルクネメ卿の事から話しあいましょう。」


「私のこと、ですか。」


「ええ。先程も言いましたが、私はアルクネメ卿を国民、いえ世間と言い換えた方がいいでしょうね。そんな周りからの非難から守りたいと考えています。」


「はい、それは先ほども伺いました。ご配慮の感謝します。」


 そう言ってアルクネメは座っている「サルトル」に軽く頭を下げた。


「いえ、それは我々全国民があなたに感謝をするべきだと思うのですが、あのような理由から、貴女の真の活躍を伝えることが出来ないのが、申し訳なく思っています。ですが、もっと近しい話として、オオネスカ卿の貴女への対応が心配です。」


 その言葉に、オオネスカが倒れて意識を失う前の自分に対する憎しみの心が、いやでも思い出されてしまう。


 オオネスカには並々ならぬ恩もある。

 だが、それ以上に自分が長女という事もあるが、姉のような存在として慕っていた。

 そのオオネスカの剣のような言葉に、アルクネメはマリオネットを殺したことよりも、心を痛めていた。


(お姉ちゃん)


 アクパが心配そうに、アルクネメに囁いた。


「その声です、アルクネメ卿。その声の主も私が不安に思っている一つなのです。」


「えっ!」


 アルクネメは、急に鋭い言葉で「サルトル」から言われた意味が分からなかった。


 隣にいるミノルフに視線を移す。

 ミノルフもアルクネメを見ていた。


「そのアルクではない心の声が聞こえるんだ。俺にも、「サルトル」様にも。」


 その声に、アルクネメは遅まきながら気づいた。

 心の壁はある程度構築していたつもりだったが、もう一つの心までは心の壁が薄かったらしい。


 そう、アクパの心の声が、周りに漏れていたのだ。


 もともとこの世界のご先祖様たちは言葉を持たず、心でコミュニケーションを取っていたように、今でも近ければ心で会話することは可能だ。

 だが、知られたくない感情も露見してしまう可能性があるため、人は心で会話せず言葉を使う。


「その子は誰ですか?」


 聞こえていたのがいつからか?

 誰がこの声を聴いていたのか?


 「サルトル」とミノルフは間違いなく聞いている。

 そして、この声の主も賢者はおそらく検討を付けているに違いない。


 適当な嘘で誤魔化せる相手ではない。

 それに、適当な嘘が思いつかない。


「ツインネック・モンストラムの残留思念、そんなところですね。アルクネメ卿。」


 何も言えなかったかわりに、賢者が自らの考えを述べた。

 その意味に、隣のミノルフが驚き、一歩後ろに下がった。


「アクパとあなたが呼んでいる声を聞きました。アクパーラー、古代この世界を支えていた巨大な甲羅を持つ亀の名前と記憶しています。ツインネック・モンストラムとはかなり異なる気もしますが、体の大きい甲羅を持つ伝説上の生き物と解釈すると腑に落ちました。」


 言っていることがそのまま正解である。

 アルクネメの身体が思うように動けないほど、緊張して固まっている。

 口を動かすこともできず、口の中が異常に乾いた。


「そして、ツインネック・モンストラムの力を借りて、「魔物」となったマリオネットの身体の赤い目全てを潰そうとした。ですがさすがに、そんな器用なことはあなたには不可能でしたね。」


 その場に「サルトル」はいなかった。

 何故、そんなことまでわかるんだ?

 アルクネメは知らぬ間に、少女にしか見えない小柄の賢者に強い視線をぶつけていた。


「アルクネメ卿、貴女が言いたいことは解ります。何故、そんなことまでわかるのか?でしょう。」


 微かにアルクネメの首が縦に動く。


「隠しても仕方のないことですし、この後の指令への疑問の解答でもあるので、伝えましょう。あの戦闘を見ていたのは、あの場にいた者だけではなかった。」


 あの場に居ず、その状況が分かる人なんて…。

 そう「探索士」しかいない。


 あの絶体絶命の状態で助けてくれた人物。

 一人だけ心当たりがある。


 オービット・デルム・シンフォニア。


 だが、それがオーブ先輩だとして、その詳細を賢者に話すだろうか。


「あの場の戦いを「探索」したのは確かにオービット卿でした。でも、その力を使ったものが別にいました。」


「賢者「カエサル」。」


 ミノルフがぼそりと呟いた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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またいい点、悪い点を感じたところがあれば、是非是非感想をお願いします。

この作品が、少しでも皆様の心に残ることを、切に希望していおります。

よろしければ、次回も読んでいただけると嬉しいです。


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