第139話 「魔物」について
今回の話は、本来昨日投降する予定でした。
登校する前に、前の話すを上書きして、消してしまいました。
1時間ほど呆然として、書いた内容を思い出して描いたため、内容が微妙に変わってしまいました。
久しぶりに自分の馬鹿さ加減に呆れました。
後ろのスクリーンに電源が入り、「魔物」についての特徴が列記されている。
「まず、「魔物」について、一般的に知られている特徴を述べていきます。一番の特徴はその黒い肌と赤い目だと思います。特に赤い目は全身に点在し、その数が多いほど攻撃に対する耐性が高いとされています。さらに生存年数が長いほど、その体が大きくなるとされています。ただ、「魔物」の厳格な分類が出来ないことから、その大きさや、姿形からモンキー級やエレファント級などという区分けしかできないのが現状です。」
スクリーンに各「魔物」の写真が掲示されていた。
「実際には、先の戦闘でツインネック・モンストラムという化け物が出てきて、今後ももっと強力な「魔物」が出る可能性はあるのですが、これまでの一応確認されている最大のものが、ホエール級の全長10mです。伝説上メガホエール級の15mというものがあります。伝説と言われていましたが、ツインネック・モンストラムは30m以上でしたので、既に実在したものと思われます。ただ、大きいものについては知識としてあるかと思いますが、逆に最小の「魔物」がどのくらいの大きさか知っていますか?」
この質問は虚を突かれた、とミノルフは思った。
脅威とみられている「魔物」はC級となるモンキー級や、ウルフ級であろう。
それほど脅威ではないものの、被害があるところではD級と言われる、ドッグ級くらいだろうか。
学生たちにしたところで、講義で聞く「魔物」はそんなところだろう。
「今まで確認された最小のものは1㎜前後のエーキャリ級です。いわゆるダニです。その上が10㎝程度のインセクト級です。」
その二つがスクリーンに映された。
黒い肌と赤い目がしっかりと視認できる。
「こんなものを見たことはないんだが、結構いるものなのか?」
バンスが遠慮無しに「サルトル」に聞いた。
「この小ささなので気付きにくいというのもありますが…。この身体ではすぐに「テレム」を消費してしまうことが予想されます。ですので「テレム」の多い場所、例えばガンジルク山のようなところではないと、生きていけないというのがまず一つの理由。さらに小さいさ故、大きい「魔物」にあっさり捕食されてしまっているというのがもう一つの理由です。ですので、なかなか見当たらないというのは間違いないでしょう。」
「その大きさに意味があるんですか?」
サムシンクがおそるおそる聞いてきた。
「サルトル」が笑顔で頷いた。
「いい質問ですね。それがこれから話すことに大いに関係あります。まず、これは知ってることだと思いますが、「魔物」には性別がありません。これはご存じですね。」
「ああ、知ってる。だからこそ、どう発生しているのか、という事を言われてるな。」
「そうです。性別がない。単細胞生物は細胞分裂で増殖します。これは単細胞生物であるからこそ、出来る戦略です。雌雄同体という生物、例えばカタツムリなどがありますが、これはお互いに受精が出来るというものであり、性別がない、という事ではないんです。」
「さっきの話から考えると、そのダニの「魔物」から始まり、際限なく喰らい、でかくなるという事か?」
バンスの問いかけに「サルトル」が頷く。
「その通りです。「魔物」達は、通常の動植物を食べますが、より惹かれるのが「テレム」と「魔導力」です。端的に言えば、「魔物」達はそのテリトリー内で「テレム」と「魔導力」を持つ者を喰らい育っていくわけです。」
「だが、そんな1㎜程度の奴がどうやって…。」
ミノルフの呟きに反応するように、スクリーンが切り替わる。
「これは「魔物」のウルフ級を捉えた映像です。この部分を拡大します。」
スクリーンに矢印が現れ、ウルフ級の黒い背中が拡大された。
そこには黒い色が重なり見えづらいが、確かに黒いダニのようなものがウルフ級の血を吸っているようだ。
「なるほど。」
バンスがその映像に頷きながら口にした。
「この「魔物」達は子供や卵を産まない。当然のことながら、分裂して増えるわけでもない。では、どうやって増殖をしていくのか?」
「それが解らないということではなかったということでしたよね。「バベルの塔」は、「魔物」の発生がどういた方法かわかっているのですか?」
医療回復士であるアスカは、医学の知識においてはバッシュフォード家付きの医師である父から教授されている。
特に「特例魔導士」としてからは、できうる限りの「魔物」について勉強してきたつもりだ。
「魔物」に関しての研究論文も可能な限り査読してきた。
「わかっています。そのために「バベルの塔」があると言っても過言ではありません。」
「サルトル」はそう言ったのち、ここにいる者をもう一度見渡す。
「再度のお願いです。ここで見聞きしたことは、ここにいる者以外には秘匿してください。お願いします。」
世間一般に知られている「魔物」についての知識以上のことがこれから語られる。
これは人の「魔物」化ということに関わるものであることは、ここにいる全員が理解した。
「まず、医学的な知識になりますが、感染症について、説明します。」
いきなり、「魔物」とは全く違う話題に変わり、皆少しの間、表情が固まった。
何故このタイミングで、感染症の話?
「ある種の感染症、例えば肺炎、身近なものですと「ものもらい」などがありますが、これらは最近が引き起こす病気として知られています。この治療には抗菌材と知られる医薬品や、医療魔導士が体内での病気のもと、この場合は細菌ですが、を駆逐することで駆除します。純粋に最近は顕微鏡などで確認できますし、培地を作成してそのコロニーのでき方でも判断は可能です。「魔導力」の小さい医師はその経験からも診断治療ができます。医療魔導士の数は少ないので、通常の医師の力を馬鹿にしてはいけません。ここにいる方にそんなことはないと思いますが。」
この言葉が、戦場で「特例魔導士」たる学生たちが冒険者たちを蔑ろにしていた件の揶揄であろう、とミノルフは思った。
が、これの何処が「魔物」の発生に関係するのか疑問になった。
「つまり「サルトル」様は、「魔物」の発生が感染して起こるのではないかと、考えているのですか?」
ミノルフがこの話の帰結が見えないと思っていたところに、その結果を明示する発言をする者がいた。
医療回復士であるアスカだった。
その発言は、「サルトル」以外の者に驚きをもって迎えられた。
「魔物」は感染する!
「アスカ卿の見識の高さは流石の一言に尽きます。」
「だから、あの戦場で、多数の「魔物」がいたあの空間でうつったと?」
「その考えはあまりにも早計です。我々は人が「魔物」になることは絶対にないと結論していました。この戦いが始まるまでは。その根拠について、これから説明します。」
ごめんなさい!まだ説明回続きます。
「魔物」というものの発生に関わるもので、この世界の根本にかかわる話ですので、お付き合いください。
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