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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第10章 賢者の哀しみ
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第132話 「魔物」の弱点

 赤い目が復活し、その光が二人を照らす。


「もうお終いだぜ、アルク!」


 「魔物」がアルクネメにそう言った瞬間、その赤い目から光がこぼれるように上に向かって飛んだ。

 と同時に衝撃がアルクネメを襲った。

 何とかアクパが上方に障壁を張り、上空からの攻撃をしのぐ。

 それは今しがた赤い目から放たれた赤い光弾だった。


「こんなことが…。」


 アルクネメが呟くと同時に、今度は前方から赤い礫が叩き込まれる。

 剣で何とか身を庇ったが、その勢いのまま後方に身体を弾かれてしまった。

 数発直撃を喰らい、羽毛のような白い輝きを纏った両腕から赤い血が流れていた。


(お姉ちゃん、大丈夫?ごめん、対応が遅れた)


(大丈夫、どうってことないわ。でも、乗っ取られたってこと?このツインネック・モンストラムの身体が)


(全部ではないよ。でもあいつの脚が神経を奪って、奴の周辺は支配下に置かれている。さっきの赤い光の攻撃もそうだけど、空間にも干渉が出来ちゃうかもしれない)


(それは、どういう意味?)


(もともと僕の身体は大きすぎて、動かすのが大変なんだ。だから空間に干渉して、重さを限りなく小さくして移動するんだ。さっき、鎖を付けられてた時は「テレム」が膨大にあったから、浮くような感じで移動していた。でも移動を考えなければ、周辺の空間を歪めて、近くの大型の「魔物」を捕まえて自分の近くまで持ってきたんだ)


 その話はいったい何を意味するのか。

 この環境で自分はどう戦えばいいのか?


 そう思った瞬間に、アルクネメに戦慄が走った。

 すぐさま剣を盾代わりにして、その場所からさらに退く。


 あっけなくその剣が折れた。

 ブルックスが持って来てくれた剣が…。


(何が今起きたの、アクパ!)


(空間の断裂。でも、うまく使いこなせていない。それでなくても多くに「テレム」を消費するから)


(私にも使えるの?)


(今はダメ!僕がこの身体に慣れてない。特に近いところは出来ないし、「テレム」もどれくらい使うか見当がつかないよ!)


 アルクネメは自分の経験からくる警告に純粋に従い、ツインネック・モンストラムの身体の上を小刻みに移動していく。

 おそらくこの体内への攻撃はアクパが完全に抑えているようだが、細かい礫が不定期にアルクネメを襲う。

 さらに大きな赤い光弾が様々な位置から放たれていた。


 アクパの言を思い出し、近くで赤い光を放つ目を踏み潰すと、光は消えるが、少しするとまたその光は戻り、アルクネメに赤い光弾を射出する。


(何とかできない?アクパ)


 ツインネック・モンストラムの身体の上を掛け、そして跳びながら、その中央にいる「魔物」に対し攻撃しようとするが、間断ない飛来物に神経をすり減らしていた。


 剣は折れたが、ロングソードは問題なく出ていた。

 さらに光弾を出し、何とか赤い目を潰そうとアルクネメは「魔物」の赤い目が壊れるイメージをぶつける。


 何個かは潰れた。

 しかしすぐに再生するように見える。


(再生するよりも早く潰していかないと。今は奴がうまく体をコントロールできていないんだよ。慣れたら、危ない)


(それは解ってる。奴の防御も弱くなってる。でも、近づけない!)


(体内への攻撃は続いてる。さすがに頻度は低いけどね。出来れば光の弾で全部の赤い目を潰してほしい。障壁は何とかするから!)


 アルクネメは前に踏み出し、ロングソードを一閃。

 その後ありったけの光弾を「魔物」に向かって放ち、すぐに退く。

 そのいた場所に赤い光弾が降り注いだ。


 アルクネメの放った光弾は数発が「魔物」を捉えた。

 赤い目も潰れた。


 だが連続の攻撃には移れない。


 「魔物」本体はほとんど攻撃を体内破壊に回しているようだ。

 それも攻撃回数自体が減っている。

 間違いなくツインネック・モンストラムの身体に対するコントロールにその力を使っている。


 ツインネック・モンストラムの身体に赤い目が増えてきている。


 そしてその赤い目からの攻撃が頻繁に行われている。

 明らかに、身体を慣らすためだ。


 相手の攻撃する範囲が広がりが大きくなってきていることは、人類にとって脅威以外の何物でもない。


 アルクネメは焦っていた。


 赤い目をいくら潰しても再生される。

 さらにツインネック・モンストラムの身体への支配領域が広がっている。


 今、神経接続を行っているあの足を切断するしかないか?


(かなり難しいと思うけど、今ならできるかもしれない。防御は任せて!)


 降り注いでくる赤い光弾はアクパが弾いてくれている。


 精神を集中する。


 目標「魔物」の左足。


 アルクネメが瞬時に跳んだ。


 目の前に「魔物」の左足。

 すぐに剣を向けた。


 衝撃がアルクネメを襲った。


 アクパが障壁を張ってくれたので、何とか身体は無傷だが、衝撃で後退させられた。


(やっぱり、今一番の弱点だからね、あの足は。ほとんどの「魔導力」をあそこの防御に使ってる)


 アクパの声を聴いたときに、両側から軽い衝撃を感じた。


(あいつ「幻体」を出してきた!それも2体!)


(なんで?「テレム」はツインネック・モンストラムの身体に注いでるんじゃないの!)


(注いでる。でも、もっと下の方まで神経を張って、溜まってる「テレム」を回収して、回し始めたんだ)


 アルクネメの目にも、その回転してる「テレム」の流れが見えた。

 そして、アクパの言う虫もツインネック・モンストラムの身体に多く発生し始めている。


 一刻を争う。

 しかし、どうすればいい?


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