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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第1章 「天の恵み」回収作戦 前夜
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第12話 「賢者」サルトル

「「賢者」が来ているのか、この別動隊に‼」


 ミノルフは現在飛竜大隊を任せているヤーバン・ジルサンドからの報告を受け、驚いた。


 既に作戦開始の日の出まで1時間を切っていた。


 作戦開始するセイレイン市第18番門の城壁上部でミノルフはその周辺に展開されている戦力を確認しているところだった。


 この後の予定は、開門が作戦30分前。

 その10分前にこの別動隊総合指令のミノルフが全部隊の戦闘員にこの作戦の意義を演説する。


 「バベルの塔」からの供給された特殊車両は、ミノルフの考えていた量をはるかに凌駕していた。


 人員移動用車両が50両。

 これは定員100名であることから、単純に地元騎士団、冒険者チームと養成学校の学生の人員を目的地に送り込めることになる。

 これだけでもかなりの量なのだが、これに砲撃装甲車両が、5両追加されている。

 この操作は全て「バベルの塔」から行われ、誰も運転することはないと思っていたのだが、すべてではないが、この戦力車両の2台に「鉄のヒト」がいることを確認していた。

 これらは現在、最外城壁の外に今配置されている。


 まずこの場に「魔物」が来ることはないはずだが、万が一のため、飛竜大隊から5名が空から監視している。


 一体「バベルの塔」では何が起こっているのか?


「「賢者」は誰がこちらに来ているのだ。当然、この「リクエスト」の発案者のスサノオは本体に居るんだろう?」


「こちらの別動隊、正式にシリウス別動隊の名称が決定しましたが、「賢者」サルトルが既に到着しております。付随情報として、もう一つの別動隊の名称も決定しました。アクエリアス別動隊だそうですが、こちらには「賢者」カエサルが同行するようです。」


「わかった。俺は会えるのか、「賢者」に。」


「当然です。というか、あちらから後5分前後でここに来ると思います。国軍のこの別動隊の最高司令官、国軍第3大隊司令、タスクノライド・エーミン・バイエル准将も付き添ってくるそうです。」


「了解した。こちらに着いたら連絡してくれ。」


 ミノルフは異常なまでの「バベルの塔」の介入が何を意味するのか、考えずにいられなかった。


 昨夜考えた最悪の想定。

 わざと「魔物」の巣窟に「天の恵み」を落とし、全体の戦力の経験値をレベルアップさせることだと考えていた。

 多大な犠牲を出したとしても。


 だが、「バベルの塔」のこの多大な戦力の提供を直接見ていると、別の考えが、見方を変えることをしてみた。


 「天の恵み」とは何か?


 その疑問だけではない。


「天の恵み」は、どこから来るのか?


「天の恵み」を送り込んでいるものは何者なのか?


 これらの疑問とともに、「バベルの塔」とは何なのか?


 最初は、「バベルの塔」が「天の恵み」を操っていると思った。

 だが、それを送り出しているものがいた場合、その者との関係は?

 「天の恵み」がわざとあの場所に落とされたとして、それは「バベルの塔」の意志か、送り出したものの意志か?


 ミノルフは思考を停止した。


 バイエル准将に連れられる形で、全身をマントに隠した小柄な人物が姿を現したからだ。


「賢者」サルトル。


「シリウス別動隊統合司令官キリングル・ミノルフ殿、「賢者」サルトル様をお連れした。」


 バイエル准将がミノルフに声を掛けた。

 その言葉が終わらぬうちに「賢者」は全身に纏うマントを丁寧に脱ぎ始めた。


 その姿をさらした「賢者」に、ミノルフはその表情を硬くした。


 出てきたその人物はどう見ても10代前半、もしくは10歳より下かもしれない。


「この地で「賢者」として行動しておりますサルトルです。今後も関係を持つことになると思いますので、なにとぞお見知りおきを。」


 呆然としているミノルフに対し、そう「賢者」サルトルが自己を紹介した。


「あなたが、「賢者」、サルトル、様ですか?」


「はい、このような身なりで申し訳ないのですが。「バベルの塔」執政者の一人です。」



 そう言いながら右手を差し出してきた。

 固まっているミルノフの脇をヤーバンが軽く肘で押す。


 はっとしたミノルフが慌てて自分の右手を差し出し、「賢者」サルトルの右手と握手をした。


「こちらからもよろしくお願いします。「賢者」サルトル様。」


「早速ですが、ミノルフ殿の戦闘員への挨拶の前に、私からもいいでしょうか。」


 通常であれば、「バベルの塔」執政者である「賢者」サルトルの言葉は非常にありがたい。

 だが、この少女に、その責が務まるのか。

 本当に「賢者」サルトルだとしても。


「ミノルフ統合司令、不安なのは百も承知しておるが、私からも頼む。この作戦行動参加者、特に国軍からの参加者には、ぜひこの言葉が必要なのだ。」


 バイエル准将も実は不安なのだろう。

 だが、この別動隊にまで「バベルの塔」執政者、「賢者」が直接来ているという事になれば、その言葉は国軍兵士にとって非常に大きな意味を持つことも理解できた。


「了解しました。開門15分前。もうすぐですが、その時間にお願いします。「賢者」サルトル様。」


「ありがとう、統合司令官ミノルフ騎士殿。」


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