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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第9章 アルクネメとツインネック・モンストラム
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第109話 小さな抵抗

「やられた!間に合わなかった。」


 飛び続ける「カエサル」は最期の対「魔物」駆逐弾頭が消失したことを感じ、自分の行動の遅さに悔しさが込み上げてくる。


「悔やんでる暇はない。唯一残ってる新型砲塔を守れ!砲弾さえできれば、まだ手はある。」


 「スサノオ」が「カエサル」並びに「サルトル」に指示を出す。


【了解しました。直ちに兵士に指示を出します。】


 「サルトル」からすぐに返答が来た。


「直ちに防護に向かいます。」


 左翼に向け「カエサル」が加速した。


 左翼の砲撃車が急加速で後退を続けていた。

 「カエサル」はすぐさまそこに舞い降りる。


「全員無事か。」


 「カエサル」の突然の降下に、逃げるために懸命に砲撃車を後退させていた国軍兵士が驚愕し、砲撃車から落ちそうになった。


「大丈夫だ。戦線からの離脱を責めに来たわけではない。其れより、この砲撃車を守るために後退させてくれて礼を言う。直ちに「天の恵み」回収用搬送車に撤退させてくれ!」


 何が起こっているのか理解出ないまま、国軍兵士3人は最敬礼をし、すぐに「カエサル」の命令を実行に移した。

 後退していた車体を、鮮やかにホイールスピンさせ、180度回頭、さらに最大速力で「天の恵み」回収用搬送車に向かった。


 一方、「スサノオ」は対「魔物」駆逐弾頭が開けたツインネック・モンストラムの左中央の亀裂を目指していた。

 その周囲の赤い目は消えていた。


 「スサノオ」はその亀裂なら、通常の重装甲の内側を破壊できる好機だと考えた。


 だが、そう考えた者は「スサノオ」だけではなかった。


 アサガ・ジェニエートは対「魔物」駆逐弾頭が目前で落とされた時、既に破壊された甲羅がツインネック・モンストラムの弱点であることに気付いた。

 そして自問自答した。


 俺は、ミノルフ司令のように飛ぶことが出来るのだろうか?


 だが、ミノルフがそれまで空を飛ぶことはしていなかった。

 もっとも、飛竜使いなんだから、自ら跳ぶ必要はなかったはずだが…。


 「天の恵み」上での戦闘がミノルフの能力を引き上げたのは間違いなかった。

 ならば、自分にもできるはずだ。

 いや、今出来なければ、死ぬだけだろう。


 アサガはツインネック・モンストラムに向かって走り始めた。

 そして、念を足元に集中させる。

 数歩は変な感じに足をすくわれるような感じだったが、その異様な足元に、自信を深めた。


 俺は飛べる!


 瞬間、重力が消えるような感じに心がついていかず、倒れそうになる。

 そこでさらに足を空間にないはずの階段を想起させた。

 そこに足がかかるような確かな感触を得た。

 そのままそこを蹴った。


 そのままアサガは空中を舞っていた。


 いける!


 そのまま亀裂の箇所に一直線に飛び、自分の剣をそのまま回復を始めていたそのまま突き刺した。


「そこを退け!」


 空から、声が降ってきた。


 アガサは上空を見上げると「スサノオ」が攻撃態勢に入っているのが見えた。


「「スサノオ」様!」


  アガサは突き刺さった剣を、抉るように抜き、とっさに後退の跳躍をした。


 「スサノオ」はその両手を光らせて頭上にかざしていた。

 そしてそのままその光の塊をツインネック・モンストラムの甲羅の亀裂に叩きつけた。


 少し遅れてその亀裂から火炎が吹きあがった。


 グギギガオオオオオオオオオオオオ。


 ツインネック・モンストラムが奇怪な絶叫を発した。


「右肩部分に集中して攻撃しろ‼」


 「スサノオ」が戦闘用リングに向かい命令を発した。




 「スサノオ」が命令を発する前に、すでにフォルクがその刃を深々と刺し、そこから薙ぎ払っていた。


 ツインネック・モンストラムの亀裂に対する攻撃は、ダダラフィンとグスタフが周りの「魔物」達を完全に排除していた。

 すでにガンジルク山に戻って行く「魔物」達も多くいたため、当初、重層な「魔物」達の群れは消えつつあった。


「その足、切断できないか!」


 ダダラフィンが傷を攻めたてているフォルクとアジルにそう声を掛けた。


「ダメだ!この中の肉塊は抉り取れるが、皮膚はかなりの強度を持った装甲のように硬い。」


 その言葉を聞いたダダラフィンは、「魔物」達を薙ぎ払った勢いのままに、宙を舞った。


 フォルク達が肉をこそぎ取っている情報にある甲羅のような装甲に一の太刀を打ち込む。

 が、少し傷がついた程度のへこみしかなかった。

 が、続けてもう片方に持っている剣を今抑えられている剣の上から打ち付ける。


 打撃音が凄まじいが、ほんの少し傷がついたに過ぎなかった。


「ダメかあー、硬いなあ。」


 そう言いながら着地した横をグスタフがすり抜け、破壊された甲羅のへりに手を掛けた。


「うおりゃあああああああああ!」


 奇声を発しながら、尋常ではないパワーをその両手に注いだ。

 微かにガチッと音が鳴ったと同時に先にダダラフィンに傷がつけられた甲羅の部分が剝がされた。


 そこにアジルの剣が上段から振り下ろされた。

 大量の血しぶきが放たれる。


 確実にツインネック・モンストラムの身体を削っていたが、そして確実に血と共に「テレム」が流失していたが、しかしツインネック・モンストラムの身体から考えると微々たるものに思えた。


 2か所の破壊された部分に対する小さな攻撃に、しかしツインネック・モンストラムが首でそんな人類を弾き飛ばす。


 そんな攻防しか、今の人類にはできないのか?


 新型砲塔を「天の恵み」回収用搬送車に無事に格納させたのち、前線に戻った「カエサル」はそう絶望に襲われた。


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