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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第9章 アルクネメとツインネック・モンストラム
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第108話 対「魔物」駆逐弾頭 Ⅳ

 「スサノオ」と「カエサル」は野戦服に身を包み、一路交易ロードを目指す「天の恵み」回収用搬送車から前線、ツインネック・モンストラムに向け飛翔した。


「新型砲塔の一つが潰されたようです。」


 「カエサル」が悲壮な想いで「スサノオ」に投げかけた。


「ああ、あと4発になってしまった。直撃した対「魔物」駆逐弾頭は予想どうりにツインネック・モンストラムの「テレム」を奪ってくれたが、天より無尽蔵に供給されているのであれば、漏れている個所を防がれては、意味がないな。」


「とりあえず、残った2台の砲撃車を防護しないとまずいが…。「ランスロット」からその後の情報は?」


「「天の雷」を動かして、周りの状況を確認してるようです。「テレム」をビーム状にして供給しているとすれば、最大射程を考えると、静止軌道が限界だと思いますが。」


「レーダーも他の「天の目」を活用していますが、そのような衛星を捉えることが出来ません。」


「「ランスロット」の情報収集を待つしかないな。「カエサル」は左翼の援護と砲撃車の防御を、私は右翼に行く。」


「了解!」


 二つの飛行隊が分離し、各々の部署に向かった。




 アルクネメは光の翼を羽ばたき、オオネスカとエンジェルのいる高度まで飛んだ。


「砲撃車がやられたわ、アルク。」


 近くに来たアルクネメにオオネスカが告げた。

 それはアルクネメも承知していた。

 だがそれよりも、オービットが「探索」した結果をアルクネメは気にしていた。

 どうやら「魔物」を操る存在、「敵」がいるらしい。


 もし、今「敵」がオービットの存在を知ったなら、おそらく攻撃目標がオービットになる可能性を考慮し、アスカにオービットのそばについてもらったのだ。


 アルクネメはこの高所からツインネック・モンストラムを見つめた。

 その小高くなっている背中を。

 そして、確かに見えた。

 そこまで優に500mはあるだろうが、微妙に光が散っている感じの細長い存在。

 確かに絹糸よりはるかに細い。

 その先の赤い目がその極細の糸を受け止めていた。


 あの糸を切断することが出来れば、ツインネック・モンストラムの動きが止まるはずだ。


 そう考えた瞬間だった。


「「撃てー!」」


 砲撃を指示する言葉がアルクネメの耳に同時に伝わる。


 右翼、左翼共に対「魔物」駆逐弾頭をツインネック・モンストラムに解き放った。


 先に受けた左の肩の部分は黒い肉が盛り上がりつつあった。


 左翼から撃たれた対「魔物」駆逐弾頭は明らかにツインネック・モンストラムの首を狙って放たれた。

 右翼は逆に右の足元に照準がつけられていた。

 

 首に吸い込まれるように加速した弾頭は、ツインネック・モンストラムの目がその弾頭を見た瞬間、その首に大規模な半透明の障壁が出現した。

 しかもその障壁は、先の障壁と異なり、微妙な角度をつけていた。

 その影響で、弾頭は弾かれ、空中にその進路を変えた。

 そのまま上空に姿を消し、直後爆発した。


「ダメか!」


 ヤコブシンの悲痛な叫びに、グスタフがおもむろに円筒形の「テレム強化剤」注入器を腹部に打った。


「グスタフ!なにをやっている!」


 グスタフの行動に、シシドーが大声でグスタフの行動に止めに入った。

 しかし、遅かった。


 2本目の「テレム強化剤」の注入に、シシドーもヤコブシンも目を見張った。


 明らかに大きさが違う。グスタフの強靭な体を包んでいたはずの野戦迷彩服が敗れた。

 肌の色も、もともと浅黒かったが、さらに黒さをましている。


「どういうつもりだ、グスタフ!死ぬぞ!」


「大丈夫さ、マリオもやっているよ。俺たち戦士は近接戦闘を得意としている。このままじゃ、みんな死ぬだけだ。ちょっと行ってくる。最後の対「魔物」駆逐弾頭、外さねえでくれよ。」


 そう言い残して、もう弱腰になっている「魔物」達に突入していった。


 次々と「魔物」の体が宙を舞っている。

 そして、その場から高々と跳躍し、そのままツインネック・モンストラムの首に渾身の「魔導力」を込めた拳を打ち込んだ。


 爆発音。


 しかし、ツインネック・モンストラムには通じないようだ。


 分厚い皮膚に少しばかりのくぼみを作っただけであった。


「畜生!かてえなあ。」


 落ちながら、眼下にいる「魔物」たちにグスタフはアルクネメが得意としていた光弾を降り注ぐ。


 大部分の「魔物」達が逃げた場所に綺麗に着地した。


「3発目、撃ちます!」


 すぐさま放たれた対「魔物」駆逐弾頭は修復されていく左の肩に再び着弾した。


 いや、着弾する前に固定化され、そのまま地面に落下、爆散した。


 が、それと同時に右翼から歓喜の声が上がった。

 右翼の放った弾頭弾はものの見事に右足に激突、爆発した。


 ツインネック・モンストラムはバランスを崩し、右の肩がそのまま地面に屈する。


 倒れたツインネック・モンストラムはその瞳を砲撃車に向けると、短く音のならないようなか細い声を発する。


「砲撃車、動きません!」


「電気系統沈黙。エンジン停止。弾頭装填できません。」


「全員退避!」


 砲撃車長の絶叫に他の二人もあわてて、砲撃車を飛び降りた。


 直後、ツインネック・モンストラムの瞳が動かない砲撃車にそそがれた。


 爆発。


 この瞬間、「スサノオ」達の反撃の切り札がなくなった。



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