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賢者の哀しみはより深く   作者: 新竹芳
序曲 第9章 アルクネメとツインネック・モンストラム
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第105話 オービット探索能力

 オービットは今、サムシンクの防御の中にいた。


 二人とも「テレム強化剤」を使用することにより、「魔導力」が大幅に増強されている。


 サムシンクの防御の力はすでにこの輸送車全てを覆っている。


 オービットの「探索」の能力は40㎞から100㎞以上にまで拡張されていた。


 「オーブ、何か異常はない?」


 兵員輸送車の座席に座っているサムシンクの向かいで、オービットは静かに目を閉じている。

 微かに眉間が動いている。


「うーん、凄い遠くの空が少し騒がしい、かな。」


「どういうこと?」


「ちょっと遠すぎて、細かいところは解んないんだけど…。大きなものがゆっくりこの戦場の上に移動してる、感じかな。本気で「視れ」ば、分かるかもしれないんだけど…。さすがに、今は余裕、ない。」


 戦場と、その近辺に主に神経をまわしている。

 今、明らかに「魔物」達の行動が変わっている。

 次々と脱落、いや離脱する「魔物」が出ている。

 そして、彼らの生息地、ガンジルク山に戻っているのである。


 さらにもう一つ、かなりの細く、薄い反応ではあったが、見逃せない現象があった。

 これは強化された能力を持って、初めて知ることが出来たものだ。


「ツインネック・モンストラムの背からすんごく細い糸みたいに天に伸びているものがある。多分、絹糸よりも細い。」


 そんなものがこの輸送車の中から見えるのか?


「そのものすごく細いものは、ツインネック・モンストラムの身体から今度は地上の方に幾百と流れているんだけど…。うーん、これは、ちょっと…。」


 オービットはそのものの行き先から、ある考えに行きつく。

 とすると、天に伸びるその極細の糸状のものは、どこまで続いているのだろうか?


「これ、一体どこまで…。これは、さっきの遠い空くらいまで行ってそうだけど…。あれ?何か、いえ、誰か、いる?」


「オービット、大丈夫?さっきから何かやってるようだけど。」


「うん、大丈夫だよ。能力が強化されると、見えなくてもいいものが見えてしまうのね。あっ、始まるわ。」


【マリオ、アルク、準備は整った。射線を通してくれ】


 アスカの声がオービットとサムシンクのもとにも届いた。


「これで終わればいいんだけど。」


 サムシンクが呟く。


 そう、これで終わってくれれば、今見た光景を報告しなくてもよいかもしれない。

 だが、これがうまくいけなかった場合、極細の糸状のものの正体いかんで、次の一手を打つことが出来るはずだ。

 オービットは「サルトル」との通信を開くべく、リングを起動させた。

 すぐに交信受諾の信号を受ける。


【「サルトル」です。オービットさん、時間がありません。すでに「スサノオ」と「カエサル」が前線に出る準備を整えました。対「魔物」駆逐弾頭も射出シークエンスに移行中です】


「承知しております「サルトル」様。異常な「魔物」達の一つの原因が観測されました。私のイメージ、送ります。」


 先に見た「探索」の結果を明示した。


【これは…】


「天にまで伸びる絹糸よりも細い糸状のものです。そして、このツインネック・モンストラムから、他の「魔物」達に広がっています。」


【すでに、これが何かの見当はついているようですね、オービット卿】


「はい。この細い糸状のものは、高濃度の「テレム」であると考えられます。」


【「テレム」…、あれが…。天空のどこかからああいう状態でツインネック・モンストラムに供給されているから、このオオノイワ平原という「テレム」低濃度地域であの巨体を動かすことのできる理由か…。あんな糸のようなもので…】


「いえ、糸状に見えますが、糸のようなものではありません。おそらく、極限まで細くビーム状にして、照射しているものだと思います。」


【天空から直接ツインネック・モンストラムに照射しているという事か。だが、誰が、何のために?】


「それは解りません。ただ、ツインネック・モンストラムから、その供給が切れた「魔物」達がガンジルク山に戻っています。何の目的で、誰が行っているかわわかりませんが、明らかに我々に対する敵対行動であろうと思います。」


【了解した。ただし、この事は極秘扱いで、お願いしたい】


「…はい。」


 オービットは自分が緊張していたことを自覚した。




 オービットの情報はすぐに他の賢者に伝えられた。


【宇宙からか…。つまり、「向こう側」がやっていると、言う事か】


 「スサノオ」が呟く。

 今、「スサノオ」と「カエサル」は上級士官用の更衣室で、国軍の制服に着替えているところだった。


【おそらく、この星の衛星軌道上に「テレム」生産基地を作ってあったとみるべきでしょう。ですが、「天の目」は対地監視用ですので、存在を確認することは、かなり難しいと思われます】


 「カエサル」がはっきりと断言した。


【ですが、今現在、我々の手にはもうひとつ、衛星の制御装置があります】


【「天の雷」、か】


 ランスロットが、大型モニターの前で、かすかに震える声を出した。

 対地上攻撃用雷撃射出衛星「天の雷」は、その軌道を変更できるように、姿勢変更噴射装置を持っている。

 その角度をうまく使えば、その見えない衛星を見つけることが出来るかもしれない。


 現時点でも、ツインネック・モンストラムに「テレム」を供給し続けるとすれば、同じ静止軌道の近い場所に存在するはずなのだ。


【「天の雷」を使って、確認を検討する】


「頼みます、「ランスロット」。」


 見えない衛星を発見できたとして、どうやってその「テレム」をツインネック・モンストラムから遮断が出来るのか?


 賢者たちはそのプランの検討に入った。


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