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第1話

ドシリアススタートです。

短編から来た人はギャップにびっくりするかも…?

僕が産まれた時から、僕の味方はたったの2人だった。



産んでくれた母上と叔父上だ。

母上は、この国の国王陛下の側室で、正妃より5年近く遅れて嫁いだ。


叔父上が、国のバランスを考えて提案したらしい。

僕から見ても、母上は綺麗で頭が良くて優しい人だと思う。あくまで正妃と兄上をたて、控えめな母上。


ーーそれでも、正妃は母上と僕が嫌いだったんだろう。


ずっと命の危険を感じながら過ごした。専属の侍女に殺されそうになったり、食事に毒を盛られたり、刺客に襲われたりを繰り返した。


僕はどうやら母上譲りの頭のようだ。この年齢ではあり得ないような言葉や知識の習得だと教師から言われた。


ーー僕は生きるために、母上を守るために必死に生きてるだけだ。何も知らないままでは母上を守れないし、生き延びることも出来ないと思ったから。



気付けば、笑わない子供になっていた。



「わたくしが不甲斐ないせいで、ディオに負担ばかりかけてしまったわね…。」


母上はいつも悲しそうに僕を見るけれど、そんな顔をしないで欲しい。


「母上は悪くないです。僕は、母上の子供に産まれて幸せです。母上こそ、愛想のない子供になってしまい申し訳ありません。」


「そんなこと…っ!!

貴方はわたくしの大切な愛しい子よ。」


そう言って、抱き締めてくれた。

母上からはたくさんの愛情をもらった。なのにそれになかなか思うように想いを返せないのが悔しかった。


そんな僕を心配そうに見つめる人がもう1人。




「子供はもっと親に甘えていいんだ。」



そう言って、僕に会いに来ては護身術を教えてくれたり、勉強を見てくれたり、時には遊びに連れ出してくれた人が、叔父上だ。


国王陛下である父上の年の離れた弟で、まるで本当の父上のように僕に愛情を注いでくれた。


嬉しかった反面、悪い噂もあって、母上は助けてくれる叔父上の手をなかなか取ることが出来なかった。


【実はディオルド殿下はコーエン王弟殿下の子供なのではないか】



幼い僕の耳にも入るくらい、噂はあちこちで囁かれた。

母上は何度も否定していたのに、周りは信じなかった。実の父上にさえ、疑われていたのだろう。


父上は、公式の行事以外ではほとんど僕に会いに来ることはなかった。兄上を甘やかし、政務を母上や宰相任せにするのを諌めねばならない…と叔父上が厳しい顔をしていたのが今でも忘れられない。



武芸全般優れ、頭も良い叔父上が父上だったら良かったのに…と思った。


その話をすれば、叔父上は苦笑いを浮かべ、俺は兄上を支えてこの国を守れればそれで良いのだと多くを語らなかった。


ーーその言葉の本意を知るのは、もっと僕が大人に、大きくなってからだった。


そんな叔父上が、隣国との諍いに駆り出された。辺境騎士団団長に就任せよと王命が下ったのだ。


「何故、叔父上が…っ!!!

辺境は辺境伯が団長をしていましたよね!?」


そう、わざわざ叔父上を選んで辺境まで行かせるなんて………どう考えてもおかしい。


「……わかってる。

それでも、この国の民を守るために、辺境の守りは強固でなければならない。…それが出来るのは、俺だけだろう。」


「でも……っ!!!」


こんなに不安や怒りでない交ぜになったのは初めてかもしれない。


「ふっ、こんな時だが、俺のために感情をさらけ出してくれるディオを見られるというのは良いものだな。」


「…っ叔父上……っ」


言われて初めて目から涙が出ていることに、気付いた。


「大丈夫だ。俺は死なない。

勿論武力による制圧はするが、俺は和平交渉をしたい。なるべく皆が血を流すことなく、治めて見せるさ。俺になら、出来る。


そうだろ?」


ニッと自信溢れる笑みを浮かべると、僕の頭をぐりぐりと撫でてくれた。


「何かあれば、俺のもとに来い。…きっと彼女は、ディオが言えば動くだろうから。」


そう言って遠くを見つめる叔父上。僕は小さく頷くくらいしか出来なかった。



叔父上が辺境へ旅立ってから、瞬く間に王宮内の空気が悪くなった。


あからさまな嫌がらせや襲撃が増えたのだ。叔父上の残してくれた精鋭の騎士数名が母上と僕を護衛してくれたけれど、このままでは遠くない未来、僕達は殺される。


父上は一体何を考えているんだ!!沸々と怒りが沸いてきた。


母上を守ることもせず、謁見を申し込んでも、返事は返ってこない。

兄上の横暴は止まらない。僕を攻撃するだけじゃ治まらないのか、最近は貴族子息にも手を出し始めたらしい。悪評ばかりが聞こえてくる。


そうすると、僕を王太子にすべきだと言い始める声があがり、益々兄上と正妃の機嫌は悪くなり、こちらにまで被害が及ぶ。


「……母上。

叔父上の元に行きましょう。」



叔父上が辺境へ行ってから3ヶ月。僕は決断した。このままではダメだ。


母上は先日階段から突き落とされ、怪我をした。一歩間違えれば死んでいたかもしれない。


……ここにいては、全てダメになる。


そう思ったから。

これからどうしたら良いのか、まだ答えは出てないけど。


「……っディオ………ごめんなさい………」


母上は泣きながら、僕を抱きしめた。


……母上には笑っていて欲しいのに。


唯一、母上が穏やかに笑っていられた人の元へ、母上を連れていく。







……けれど、その願いは一生叶えることが出来なかった。





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