1-3 野宿
こちらに転生してきて二日が過ぎた。
一日目はまじの道端で野宿。寒過ぎて風邪ひくかと思ったが、こっちに来てから体が頑丈になってきている気がする。
ニ日目は雨だった。
道沿いの店に雇ってもらえないか片っ端から声をかけたが、字が読めない、金の単位も分からない、明らかに怪しいやつを好んで雇う物好きもおらず、全滅。
ただ、ひびの入った鍋を譲ってもらったおかげで多少漏れるが雨水は確保出来た。森の木で雨宿りしながら一日考えを巡らした。
が、三日目の夕方になっても妙案は浮かばない。
そろそろ食料の問題もなんとかしなければならない。
森を見てきた感じ、やはり季節柄果実やきのこのような食べられそうな代物はなかった。
「どうすっかな……」
今浮かんでいる案はふたつ。ひとつは道行く人に物乞いをしてその金で街に入り、職を探す。それさえ難しいようであれば……。
「盗みか……」
日本では考えもしなかったが、現実問題そうしなければ餓死または病死するだろう。
現に今も一日雨に打たれたせいか熱っぽくてふらふらするし。
「リアルな異世界転生って、こんな感じなんだな」
満足に動けるうちに動かねば状況が悪化する。とりあえず、今日は夜まで物乞いをしよう。
そう決め森から街道に向かう途中にある泉で、人影が目に入った。
「!」
心臓が跳ねた。理由は単純だ。これほど盗みに適した状況はそうない。やるなら今しかない。
恐らくはひとり。泉の側で座っている。
身を隠しながら近づいていくと、見えた人影は。
修道衣に身を包んだ巌のような大男が鳥と戯れていた。
いや、服装を考えると女か? 分からん。
なに言ってるか分からないだろうが、おれも自分の目が信じられない。
何度見てみても変化はなかった。
これが美しいシスターとかならさぞかし絵になるだろうが、現実は違った。
例えるなら、ヒールプロレスラーが改心して出家したような。それくらいのガタイと強面だった。服が似合わないにも程がある。
これは新手の啓示だろうか。盗みをするなという。
「もう、わけわかんねえ……」
言ってる途中からふらつきがピークに達しておれは前のめりに倒れた。
倒れた音で向こうがおれに気付いたようだが、視界もぼやけてるしどうでもよかった。
そのままおれは意識を失った。
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「人を見るなり卒倒するなんて失礼な人ですね」
近づいて見ると、倒れた男はボロボロの衣服のみでそれ以外は身につけていなかった。
「……」
頬がこけていて、いくつかの擦り傷に虫に刺されたような発疹が至る所にあった。呼吸も荒い。
「あまりいい状態とは言えませんね」
修道衣に身を包んだその人物は男の側で腰を下ろした。