1-1 転生
うっすらと目を開けた時、おれは木漏れ日の中にいた。
再び目を閉じる。
心地よい眠りだった。鈍痛も気持ち悪さも不自由さもない眠りは久々だったから。
どれくらい微睡んでいたただろうか、ふと疑問に思った。
(あれ、なんで……)
なんで生きている?
ばっと起き上がって辺りを見回す。
昼間の森だ。病院の庭とかじゃない。草木が生茂る、しっかりした森。
おまけに少し肌寒い。
「……こんな所に放置プレイ?」
考えにくいが、状況を見ればそうとしか思えない。
「いや、そもそも……」
自分は死を待つばかりの重病人だったじゃないか。
「動く……」
手は自在に動き、思考もクリアだ。
マスクはおろか、点滴の跡も塞がっている。
唯一、病院で患者がよく着ている検診衣だけはそのままだった。
おかしい。これはなにか妙だ。
夢かとも思ったが意識がしっかりしてるし、地面の雑草の柔らかさやそばにあった花の香りなどは現実のものだ。
頭を巡らせている最中も、人が通り掛かる気配はない。
見渡してみると見える範囲は同じような状況らしい。
「すみませーんっ!」
大声で叫んでみたが、虚しさしか得られなかった。
(仕方ない、ちょっと危ないけど)
高い所にある見晴らしのよさそうな丘に登る。
現在地を確認し、町へ帰ろうとした時、おれの目に映ったのは。
「なんだよ、これ……」
雄大に広がる森と、明らかに日本ではない、異国の都市だった。