4-3 火刑
ソフィアさんと話した次の日の夜、最悪な知らせがおれの元に届いた。
ミリアンヌがギルドに息を切らし駆けてきて告げた内容は。
「処刑!? しかも二日後だと!?」
大声でミリアンヌを問い詰めた。
「正確には明後日の日没に火刑に処すっていう書面が市議会から。火刑で神の意向を聞くとか書いてあった。教会も黙認するみたい」
「火刑って……」
つまり火で炙ってそれの結果で魔族か調べるってことか? 実質処刑と変わんねーだろうが。
あまりにイカれた刑罰に頭が追いつかない。
「裁判はどうなったんだ? まだのはずだ」
社長が仕事放り出して疑問を口にする。
そうだ、おかしい。あまりにも早過ぎる。
「裁判官はダモスとか貴族も多いから、市議会の決定がそのまま通っちゃったんだと思う」
あのダモスとかいう貴族が裁判官? で市議会で決定したから裁判は無しに? いい加減にしろ。
「教会は? なにもしないのか?」
「確かに教会は市議会と同じくらいの権力を持っているが、貴族もいる上に汚く繋がってる。まして今回は修道院から出た、言ってみれば身内の恥だ。早く消し去りたいと思ってても不思議じゃない」
社長が真剣な表情で語る。
「嘘だろ。じゃあ、誰も止めらんないってことかよ……」
「……あり得るとすれば国王の権力なら介入出来る。だが国王はこれまで国内の事件にはあまり関わってない。庇う理由もないし難しいな」
国王……。
「やばいよ、このままじゃカリーナが殺されちゃう……」
ミリアンヌは頭を抱えた。
「……」
社長も黙って考え込んでしまった。
ソフィアさん達も動いているだろうが、そもそも戦う場である裁判が無くなり、あったとしても裁判官があれだ。どう考えても難しい。そうするとソフィアさん達は力ずくでもカリーナを助けようと実際に戦うだろう。
最悪の事態が予想される。
「……処刑までにやれることはやるが、いざとなったらおれが無理矢理でもカリーナを攫って国外へ逃げる。シスターみんなで戦うよりは現実的だろう」
「ユウマ……」
「本気か……?」
「もちろんです。もしかしたら、これが最後になるかもしれません」
ファウロスは目を見て、この青年が本気だと悟った。
「まあ待て。そう焦るな。お前さんの覚悟は伝わった。いい顔するようになったじゃねえか」
ファウロスは満足そうに笑みを浮かべた。
「ただ、見通しが甘いな。強引に攫うとしてもどの国に向かってなにで逃げるか。その後はどうやって生活するのか。準備っつーもんが必要だ」
「……」
確かにおれはこの世界の世情に疎い。地理も頭に叩き込んでおかないと……。
「だからその準備はしといてやる」
「……! でもバレたら社長が……」
「この際そんなことは気にしてられないだろ。もっと周りを頼れ。自分ひとりでなんでも解決しようとするな。年寄りはこーゆう時にかっこよさが出るもんだ」
「でも……」
「バレたらヤバいってんならその時のために準備しておくだけさ。なに、旅は慣れてる」
おれは初めてこの人を尊敬に値すると思った。めちゃくちゃ株上がった。
「ありがとうファウロスさん。この恩はいずれ必ず」
「当たり前だ」
「やばい、あたしあんたらに惚れそうなんだけど」
「それも当たり前だ」
がははといつものように豪快に笑った。
「しかしそれは本当に最後の策だ。……それまでに動くって言ったな。具体的にどうする?」
「実はさっきの話で思い付いたことが。もしかしたら比較的平和に解決出来るかもしれません」
「詳しく話せ」
おれは自分の策を社長とミリアンヌに説明した。