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第九話 スラちゃんは怒っている

「今すぐには無理だけど人間の街に降りようと思ってる」


 スケ方とアレスの模擬戦を暇つぶしに見ながら、小雪にそう言う。


 そうすると、ポカンと口を開けたまま驚きの表情を隠さない。ななめ45°に叩いたら直るかな?


「ど、どーしたんですか、そんなこと言って」

「んー、俺らのダンジョンって認知されてないじゃん。だから雨宿りに来たヤツらぐらいしか寄らないし、魔物を見たら逃げていく人ももしかしたらいるかもしれないだろ」


 人間が来ないってことは、それすなわちDPが手に入らない。

 まあゴブリンたちのDP収入で少しは足しにはなるが、俺が魔王と名乗れるくらいになっている時はクソジジイになっている頃だろう。嫌すぎる。


「えっと……トージが人間の街に行くってことですよね?」

「そうなるな」

「私はどうなりますか、それ」

「留守番」


 ガビーンと衝撃を受けた顔をする。感情豊かで結構だ。


 まあ俺の今のところの考えは、冒険者なるものを雇うかパーティーを組むかして俺のダンジョンに侵入、お宝を見つけて帰る。それでダンジョンのことを広めてもらおうってのだからすぐには難しい。


 お金が無いとね。


 とりあえずお金を出すとしても銀貨、ってやつで一つ【DP100】。


 それに留守の間に攻略されるとまずいから、せめて第二階層くらいまで作っておきたい。


 あー、DPが足らなすぎる! やることが多すぎる!


「わ、私も行きます! 置いていかないでください!」

「あー……でも俺一人の方が多分上手くいくんだよな」

「それなら本に変身できますよ! だって本ですから!」


 必死だな。本になった小雪を連れて行ってもいいが、ちょっとサイズ感がね……


 あ、でも小さくなれるならありだな。スモールサイジング。


 アクセサリーとして身につけられる。


「よし、質問」

「ドンと来い、です」

「アクセサリーぐらいの大きさの本になれるか? ほら、ピアスとかに出来そうな感じの」

「……多分。試したら、できるかも?」


 うーん。


「よし、置いて行くわ。すまんな」

「そ、そんな……」


 ガックリと肩を落として残念そうにする。まあ、今後を左右する大切なことだ。諦めてもらおう。


 そして、小雪はちょうど俺が指定したピアスにできるぐらいの大きさの本になった。


 できるんかい!






 ◆ ◆ ◆




 というわけで、右耳に小雪の本を装飾としてぶら下げたピアスをつける。

 ついでに何日か前に侵入してきた女から得た黒のマントも羽織る。いいね。


 でも、水面で見ているからちょっと見にくいな。

 今度DPに余裕が出たら鏡も出そう。


「魔王らしくなって来たんじゃないか?」

『まだまだです』


 脳ミソに直接話しかけられた。すげー。


『どうですか、これが念話ってやつです』

「ああ、そう」


 でもあんまいい感覚ではない。


『もしトージが街に降りた時は、これでサポートしますよー』


 鼻歌を歌いながらそう言ってくる。脳ミソにガンガン響いて、うげー、頭がおかしくなりそうだ。


「ま、おいおい慣れていこう」


 というわけでピアスを外す。ピアスの軸は片っぽ作るだけでも中々DPが吹っ飛んだ。

 ……無くすのも怖いし常につけておこう。 ただ、装飾の無いピアスを付けるというのもつまらない。


 とりあえず本の部分を外す。そしてDPを30消費して超小型ドクロを手に出した。


「うへぇ、なんですかその悪趣味な物体は」


 小雪が苦言を呈ていしてくるが、宝石だのなんだのにするとDPが一気に跳ね上がるのだ。


 だから仕方ない。うんうん。

 で、本の代わりにドクロを装飾としたピアスをまた耳につける。


 ……んー、悪くは無いかな。でもスケ方が常にいるみたいでゾワッとする。


 まあ、なんか魔王というか悪役っぽくなっていいだろう。多分。


「そういえば、スラちゃんは怒ってます」


 ピアスが気になるのかピョンピョン跳んで自己主張していたスラちゃんを小雪が持ち上げる。


「怒る?」

「そうです。進化できるのにさせてくれないって怒ってるんですよー」


 俺の肩に飛び乗ったスラちゃんはチョン、とピアスに触れる。そして美味しいものでは無いとわかったのか、うげーと言って今度は小雪の頭に移る。


【DP125】


 まあスラちゃんの進化ぐらいどうということは無いか。

 スラちゃんに手を当てて、進化の画面を出す。レベルはもうマックスだった。


 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

【進化先】

 『ブラッド・スライム』:ランクE

 『ヒーリング・スライム』:ランクE-

 『ハイ・スモールスライム』:ランクF+

 『ビッグスライム』:ランクF+

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

【現在】

 『スライム』:ランクF

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「はい、じゃあ聞いてくぞ」


 選択肢を提示して、結局スラちゃんが選んだ進化先は『ヒーリング・スライム』。

『ブラッド・スライム』は強そうだな、と思ったがスラちゃんがいやだー、と強烈に拒否をしたから諦めた。


 ほんのりと光を放つ。


「わー、やったですね!」


 そして、無事『ヒーリング・スライム』になれたスラちゃんを胴上げする小雪。……一歩間違えたらイジメだな。


【種族】ヒーリング・スライム

【ランク】E-

【名前】スラちゃん

【レベル】1/10

【HP】50/50


【スキル】

治癒(ヒール)Lv1』

【称号】

『癒しの物体』『血の味を知る者』


 名前がスラちゃんなのか。じゃあ敬称を付けるならスラちゃんさん? スラちゃんちゃん?


 どうでもいいか。


 とりあえず、スラちゃんはかわいい。これだけは覆しようのない事実だ。


 プニッと触ると、スラちゃんも軽く吸い付いて返事をしてくれた。

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