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第八話 魔石喪失事件

 玉座に座ってスラちゃんに水を上げながら、俺は考える。


 【DP1650】


 思わぬ臨時報酬のDP1000に、つくづくラッキーだと感じる。それに、ダンジョンの外にいるとダンジョンとの一体感(?)が薄れて、侵入者に気づけなくなる、というのが知れたのもかなりデカい。


 ダンジョンをそろそろ改装しようと考えていたからだ。


 ゴブリンたちが俺のダンジョンにいるとDPが増えるが、食料を取りに行く時はどうしてもいなくなってしまう。


 だからちょっと前に、ゴブリンたちが好んで食べるホーンラビットをこのダンジョンに召喚(スポーン)させ、このダンジョンで生態系を確立させようと試みた。


 だが、呼び出したホーンラビットはゴブリンたちに滅多打ちにされて死亡してしまった。あまりに弱かったのと、逃げたり隠れたりをできる場所がなかったからだと思う。


 で、考えた。ホーンラビットだけが出入りできるホーンラビットの居住空間を作ればいいと。


 そしてそのためのDPも貯まった。よっしゃあ!


 では、改装……の前に、試すことがある。


 スケルトンやゾンビを召喚(スポーン)させるのに必要なDPは100だったり、150だったり。

 でも、媒体があれば少しは消費DPを抑えられる。ゾンビだと【DP50】スケルトンだと【DP25】。


 その肝心の媒体も今手に入った。さっきの侵入者の死体だ。更に! 今は死にたてホヤホヤ、腐ってもいない。


 これをゾンビにするのもいいが、スケルトンにしたら骨に筋肉を装備している、という判定になっていけるんじゃないか?


 行くぞ、【創造(クリエイト)スケルトン】


 女の死体が立ち上がる。


 やっぱり俺の計算は完璧だったらしい。


 そして、ボキッと骨の折れる音がしてスケルトンは死んだ。






 ◆ ◆ ◆




 結局死体はDPにしました。悲しい。


 そういえば、スケ方のサックリやられてしまった片腕はくっつけたら治った。やったね。


 さあて、改装々々と。


「スラちゃーん、トージが遊んでくれないです」


 小雪がスラちゃんをモチモチと触りながら愚痴を吐いている。……後でね。


 さっきの戦いで戦力不足を痛感したから、少しでも得るDPを増やして強い魔物を召喚(スポーン)させるためにこれは急ぎやらなければいけない。


 まず、この前召喚(スポーン)させたホーンラビットの大きさを思い浮かべながら穴を開けて……2mくらいの長さのトンネルを作ってから、大きな空間を作り出す。


 床は草と土で……ああ、子供とかも産んで欲しいから、何となく居心地が良さそうな枯れ草も用意しよう。


 消費DP量は見ないでやった。多分、見ながらやったら血を吐いて死んでしまう。

 で、でも一応今のDPを確認しておこう……一応ね……


 【DP250】


 ぐ、ぐあーッ?!


「わ、わー! トージが血を吐いたー!」


 スラちゃんがズリズリと俺の吐いた血まで寄ってきて、食べ始めた。なんか怖い。


 全部舐めきったら最近水色に戻ってきていたのに、ほんのり桃色っぽくなった。何をしたいんだこの子……


 と、まあそれは置いておいて、肝心のホーンラビットを召喚(スポーン)させなければ。


 必要なDPは75だったはずだ。よし、やるぞ……やってやるぞ……


 ええい、やってしまえ!


 というわけで召喚(スポーン)ホーンラビット。


 見た目は俺の知っているうさぎがちょっとデカくなって、頭にユニコーンのような角が生えている、というだけ。

 まあ、ユニコーンなんて見たことないけど。


 そして移住空間に移動してもらった。感想は、まあまあ良い、と。


 そういえば一つ不安なことがあって、それはホーンラビットがそこに居着いて出てこないのではないかって懸念。


 まあ結果から言うとそんなことは無かった。歩いているアレスに三匹で襲いかかって、一匹やられて巣穴に戻って行ったからだ。


 そう、スケ方やスラちゃんにはゴブリンたちは味方だと伝えていたが、ホーンラビットには言っていなかったから侵入者と見なし戦いを吹っ掛けたのだ。


 いいね。二匹になったのは良くないけど、これはいいサンプルが取れたなあ。


 そして狩ったホーンラビットを玉座の間に持ってきて、老ゴブリン(ゴブリン・シャーマン)とゴブリン夫婦にプレゼントしていた。


 心臓部分にあった魔石も夫婦の妊娠している方へ渡すようだ。


 俺が複雑な感情でそれを見ていると、アレスは何を思ったかホーンラビット肉の切れ端を俺にくれる。


 な、なんとも言えねえ……






 ◆ ◆ ◆




 はて。


 ゴブリン妻が大切そうに抱えている魔石を見ながら、俺はあることを疑問に思った。


 ホーンラビットから魔石が出るのなら、この前倒したマウンテンウルフやら何やらからも魔石が取れてもいい気がするのだ。


 うーん……?


「おーい、スケ方」


 ギクッ。そんな擬音が聞こえて来そうなほど俺に呼びかけられて緊張したスケ方は、ゆっくりとこちらを振り向く。

 怪しすぎる。


「お前、魔石どこやった?」


 知りませんよ、だと?


 なるほど、なるほど……


 この将来魔王になる予定の俺に嘘をつくのならば、こちらにも相応の対応というものがある。


 スケ方のために用意していた牛乳がある。


「スラちゃん、来い」


 スラちゃんが牛乳を見て、ちょうだい! と飛び跳ねるがまだだ。


「スケ方、これはお前のために用意してやったものだ。だが、虚偽、欺瞞、嘘。それをするのなら……わかるな?」


 カタカタ骨を鳴らして、スケ方は完全に恐怖している。


「ふははははは! こういうことだ!!」


 スラちゃんにダバーッと牛乳を振りかける!


 そのグロテスクな光景を目撃してしまったスケ方は膝から地面につき、ひぇーと泣き叫んでいる。


「はっはっは。愉快々々。己の立場を弁えろ、骨」


 そうしてようやく、スケ方は魔石を不正に着服していたことを自白した。


 やはり悪は正義に退治されるな。うんうん。

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