第五話 スケ方の進化
「わー、すごいです。この人、魔石を持ってます!」
「何だ、それ」
「ほら、なんか便利なやつです」
「超絶納得した」
本ちゃんの深遠な語彙力に俺は思わず涙……もし広〇苑が創造できたらプレゼントしてあげよう。
「あ、そういえばDPが今すげーあるからスケ方強化しようぜ」
「スケ方さんも喜ぶですよ!」
フンスフンスと少し息を荒くして本ちゃんは喜んでいる。もしかしたらスケ方のファンなのかもしれない。
……さて、今何をしているか。それは、戦利品漁りだ。
今のところ使えそうだなってのは、
・回復薬3個
・軽く鎧もついている服
・魔石が入っている袋
ってところだ。
そしてDPも堂々の350(50は死体を還元した分)。うひょー、一気にお金持ちだ。
「ああ、そうそう、提案があってだな」
「なんです?」
「DP200でツルハシを創造できるんだ。これで人工的にダンジョンを広げればすげーDP節約になる気がするんだけど、どう?」
「絶対やめたほうがいいです」
「照れるのもいい加減にしろって……」
本ちゃんの熱いご声援を頂いたところで、創造粗製のツルハシ。
本ちゃんは呆れた顔で俺を見てくるけど、俺の考えた叡智の煌めきを目の当たりにすればひれ伏すだろう。
「まず試しにここだ」
玉座の間から、さっき戦ってた場所に戻る。
ゴツゴツの壁を叩くと適度に質量のある響き。ツルハシは既に構えている。
「刮目せよ。これが未来の『魔王』の勇姿ッ!」
勢いよくツルハシ振るう!
――そして、ツルハシは激しい音と共にぶっ壊れた!
「……やらかしたーッ!?」
「当たり前です……」
◆ ◆ ◆
「クノ、元気だしてくださいよー」
つんつんと俺を本ちゃんがつついてくる。
でも、もう無理だ……立ち直れない……
「……あれ、本ちゃんって俺の名字知ってたっけ」
「さっき聞いたのですよ。『俺の名、クノトージの誇りに〜』みたいな」
「俺の傷口をえぐらないでくれ」
「それって真顔で言うことなのですか?」
そういえば、俺本ちゃんの名前知らないなあ。
何となく本ちゃん、で通してきたけどそれも不便だ。
「ああ後、東寺でいいよ。そっちが名前だから。……で、名前なんて言うんだっけ」
「【ダンジョン経営の基本】です」
「んー……シンプルだけど小雪ってのはどうだ?」
「なんですか、その略しました! って勢いで私の名前要素がどこにもない名前は」
そう言ってプイッとそっぽを向いてしまった。
でも、頬は少し赤らんでるし、本当にいやというわけでは無さそうだ。
「じゃ、改めてよろしく。小雪」
「こ、こゆき……ふ、ふん。まあいいです。受けて立ちましょう、トージ」
スラちゃんもピョンピョン飛び跳ねて祝福してくれてる。うれしいね。
と、少し話がズレたが本題に戻ろう。スケ方の強化だ。
また玉座の間に戻って、スケ方に話しかける。
「今からDP使ってお前を強化する。いいな?」
そう言ったら、スケ方はカタカタと骨を鳴らして返事をした。
よし。
「小雪、強化ってのは具体的にどうすんだ?」
「まずレベルをマックスにするのですよー。そして、進化です!」
「進化!」
いいね、いいね。
剣もあるし、防具も揃っている。それを強化したスケ方に装備させれば大幅な戦力アップが期待できるだろう。
「50DPぐらいか、な」
スケ方の頭蓋骨に手を当てて、DPを放出する。
見た目は今のところ変わってないけど、ステータスを見てみよう。
【名前】スケ方
【レベル】10/10
「よし」
「わーい、スケ方さんも強くなりましたね!」
目をキラキラ輝かせて小雪はそう言った。
進化は、んー、こうかな。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
【進化先】
『骨太スケルトン』:ランクE+
『スケルトン・フェンサー』:ランクE-
『スケルトン・ファイター』:ランクE-
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
【現在】
『スケルトン』:ランクF
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
なるほど。
こんな感じになるのか。……それと今何となくわかったが、進化にもDP消費するな。
下手な選択はできなさそうだ。
「スケ方、なりたいのがあったら骨を鳴らせ」
ここは本人の意思に任せよう。
「1、骨太スケルトン」
……無音
「2、スケルトン・フェンサー」
カタカタ、と骨を鳴らす。
「一応最後のも言っておくぞ、スケルトン・ファイター」
……静寂。
「よし、じゃあスケルトン・フェンサーでいいんだな?」
俺的には骨太スケルトンになって欲しかった。だって、骨粗鬆症を完治できそうな進化先だもん。
……いや、もしかしたら『骨粗鬆症』の称号を持っているから骨太スケルトンへの進化先があるのか?
うーん、否定できねえな。
まあとりあえず、スケルトン・フェンサーに進化、と。
そう決めた瞬間、目の前のスケ方が光を放ち、バラバラだった体も元に戻っていく。
そして、少しがっしりした気がするスケ方が玉座に座っていた。なんかスケ方が魔王みたいでむかつく。
まあ、軽くステータス確認。
【種族】スケルトン・フェンサー
【ランク】E-
【名前】スケ方
【レベル】1/15
【HP】100/100
【スキル】
『剣術Lv1』『受け身』
【称号】
『弱・骨粗鬆症』
「おー、一気に強くなった感じあるなあ」
さっすがスケ方。俺が期待していただけあるぜ。
でもまだ骨粗鬆症は持ってるっぽい。無念。
ちなみにDPを確認したら100になっていた。結構使ったなあ。
鎧と剣をプレゼントして、いそいそと着ているスケ方を片目で見ながら、俺はあることを思った。
――腹が、死ぬほど減った。
食料も一応DPで出せるが、定期収入が無い今あまり散財するのは危険だ。
つまり今俺たちがするべきことは、ただ一つ。
周辺の土地の確認と、迅速な食料確保ひいては定期収入の獲得。
そして、定期収入については魔石を使えばどうにかなるかもしれない、とそう考えている。
上手く行けば仲間が増える、最高の一策だ。