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第三話 二人目の侵入者

 白の透き通るような髪に、思わず目が惹き付けられる赤の目。


 そして、パッと見無口で冷たそうな印象を受ける顔の割にはお喋りな、自称本。

 胸の薄さは本とそっくりかもしれないが……いや、そう考えたらこの子は本当に本なのか?


 うーん、分からなくなってきた。


 まあいいや。


「さて、250DPをどう使おうか」


 あのおじさんの死体を還元したら、【DP50】のおまけがきたのだ。

 ラッキーだ。


 そしてこれがあればスケルトンを二体召喚できる。スケ方が二体、スケ方が二体……絶対いらない気がする。


「つよーいモンスターがいると便利ですよ」

「250DPで?」


 それならこのカックカクの洞窟をどうにかした方がいい気がする。


 うん、それだ。超名案じゃん。


 思い立ったが吉日、ダンジョンさんに頼んでさっきよりは自然風な洞窟に作りかえてもらった。これでDPはすっからかん。


 俺が達成感に浸っていると、本ちゃんが閃いた、と言った感じで手に拳をポンと置く。


「DPでスケ方さんの強化をするのはどうでしょうか!」

「故人の名前は出さないでくれ……」


 ってかモンスターって強化できるんだ。


「死んでませんよ? ギリギリで生きてます」

「いや、死んでるから骨になってるんだろ」

「人はそれを屁理屈と言います」


 というわけで、まだ生きているというスケ方(白骨死体)の様子を見に行くことになった。


 ドアを引いて、ダンジョンからの視界ではなく自分の視界で変わったダンジョンを見る。


 まず感じた印象は、ゴツゴツとした自然な洞窟っぽいなというもの。で、直線だった道は右に曲がったり左に曲がったりしていて、奥に何があるのか好奇心がくすぐられるような感じになっていた。

 超絶いいね。ダンジョンさんセンスある!


「ああ、そういえばDP全部使ったわ」

「は、はいぃ?」

「うん、改装費用」


 本ちゃんはカッコよくなったダンジョンの壁を眺めて、しばらくしてから頭を抱えて座り込んだ。


 俺のダンジョンのカッコよさに目がやられたのかな?






 ◆ ◆ ◆




「どーみても死んでねえか?」


 バラバラに砕けているスケ方がそこにはあった。

 唯一無事な頭蓋骨がさらに哀れだ。


「うーんと、目にギューッと力を込めてスケ方さんを見てみてください」


 パタパタと目に力を込めるっぽい感じのジェスチャーをして俺に教えてくれる。

 なんのためかはわからないけど、とりあえず従ってみる。


【種族】スケルトン

【ランク】F

【名前】スケ方

【レベル】1/10

【HP】1/50


【スキル】


【称号】

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)



「おー」

「見えてますか? それがスケ方さんのステータスです。確かに生きているでしょう」


 フフン、とあまり無い胸を張る。


 その仕草があまりにもうちの犬と似ていたから、とりあえず撫でてやることにした。

 そうしたら本ちゃんはえへへ、と照れた声を出して気持ち良さそうに目を細める。


 俺の長年のなでなでテクは間違っていなかった!


「ふう。それで、スケ方はどうやったら復活するんだ?」

「それにDPを使うつもりだったのですよ……まあ、最悪放っておいてもいいです」

「じゃ、放置で」


 バイバイ。お前のことは忘れねえぜ。

 いつか復活したらカルシウム沢山摂取させてあげるからな。


 と、放置したがなんかスラちゃんが運んで玉座に座らせていた。

 まあいいや。






 ◆ ◆ ◆




「いやぁ、もう。ダミアンさんったらどこいっちゃったんスかね」


 ブツブツ呟いている誰かが来た。


 玉座の間におじさんから頂いた回復薬(ポーション)と衣服を置いておいて、俺は洞窟に横になる。


「あーもう。雨降ってきっちゃったッス」


 いいね。うちのダンジョンに入ってくれそうだ。

 俺の狙いは人里の情報を得ること。せっかくダンジョンっぽさを無くしたし、ここで暇潰しをしている人のフリをして色々聞き出そうと考えているのだ。


「わっ、すみません。ここで雨宿りさせていただいてもいいッスか?」


 洞窟に入ってきたのはさっき殺したおじさんよりは小柄で、歳も若い男だった。

 服装や腰に剣を刺しているところを見るに、おじさんの連れとかそういうやつだろう。


「いいですよ」


 できるだけ相手に警戒心を抱かせないために穏やかな空気を醸し出す!

 うおおおお!!


「あ、じゃあ失礼するッス」

「どうぞー」


 ……沈黙。


 それに何やら相手が俺をチラチラと見てきて落ち着かない。


「そういえば、ダミアンっていう名前の剣士を知りませんッスか? 僕とここら辺散策してたんスよ」

「さあ、分からないなあ」

「へ、へー。ちょうどあなたが持ってるような剣を持ってたんですよ、ね」


 なるほどー。

 これは確かに。俺おじさんからもらった剣そのまま腰に刺してるんだった。


「こんな感じの剣ってどこで作られてるか知ってるかい?」

「えー、ダミアンさんはエペーヴル・マシーヌにまで行って作ってもらったって言ってたッスね」

「そう、そのエペーヴル・マシーヌで有名な鍛冶師に作ってもらったんだろう。その人は己の持つ黄金比でしか剣を作らない人でね。作品がよく似ることで有名なんだ」

「職人さんのこだわりってやつッスか。すみません、ちょっと誤解してたかも」


 セーフ。


 手に汗握る展開だった。中々に強烈な攻めで、思わずぶん殴りたくなった。

 ……それとも一発殴ってみるか?

 うーん。


「――そういや、多分冒険者さんッスよね。どんな依頼でここまで?」


 ナイス。超ベストタイミング。君のおかげで俺は自我を保てた!

 でも質問は最悪だぜ。

 ここは華麗に受け流そう。


「な、何だったっけー。そ、そういう君はどこから来たんだい?」

「えぇ……」


 なんでかドン引きされた。

 そしてお相手はコホン、と咳払いをして口を開く。


「一番最寄りの街のモンテテール・アドリアンッスよ」

「ふーん」

「なんすかその反応……」


 一番近くの街はモンテテール・アドリアン、と。


 相手をチラリと見る。


 そうすると俺の視線に気づいたのか、相手も視線で俺に返事をした。


 その目は(いぶか)しげで明らかに俺を疑っている目だった。


 簡単には騙されてくれないらしい。


 ……なら、だ。こちらにも一応の策はある。


「おっ、雨はやんだな。じゃあ俺モンテテールに行くから。アディオス!」

「いや、ぜんっぜんやんでないッスよ!?」

「あー、後そこの奥行くとある扉は絶対触んなよー。マジでやばいから」


 さて、戦略的撤退だ。


 少々無理があったかもしれないが、まあ勝てればいいのよ。ハハハ。

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