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第十一話 魔王軍円卓会議

「これより第一回魔王軍円卓会議を開始する。議長は俺、将来魔王になる予定の久野東寺が務めさせてもらう」


 魔王軍(ではない)円卓(でもない)会議。それを開いたのは、今の主力メンバーたちに俺が人間の街に行くことを伝えるためだ。

 それにプラスしてなにか不満、報告があればそれを言う。


 ちなみに、円卓会議とは言っているものの立派な会議室なんて作れるはずもなく、みんな地面に座っている。

 悪いな、スケ方。俺だけが玉座なんかに座っちまって。


「まずは俺から報告がある。今日、一通りみんなの意見を聞いて、ダンジョンを改装したら俺はしばらくここを留守にする。で、今のうちになにか俺にやって欲しいことは?」


 俺のダンジョンの価値を知らしめるための宝を出して、攻略されないようにダンジョンを広げる。

 それをするにはあまりにもDPが足りない、と嘆いていたが幸運なことに俺のダンジョンに入ってきてくれた冒険者二人が【DP1000】を落としていってくれた。


『魔石を、ソロソロ欲シイ』

「オーケー、これでいいか?」

『助カル』


 アレスの意見は予想済み。用意していた魔石を投げて、はい一つ目解決。


 そういえば人間の街に降りるためのお金だが、ホーンラビットの巣に挟まって死んでいた死体から銀貨十枚と銅貨三枚をゲットしたためこれも解決している。


「はい、スケ方君」


 手を挙げていたスケ方を指す。

 えーと、戦力的に不安でしょうから、進化させてください? 生意気じゃボケ。


 ……まあ、改装が終わってDPが余っていたらやろう。


「というわけでスケ方君の提案は後回し」


 ショックを受けたのか、カラーンと肋骨を落とすスケ方。ちなみに、毎晩綺麗に落とす練習をしているのを俺は知っている。


「ああ、アレス。俺から一つ提案がある」

『何ダ』

「これからもずっと、出来れば一生俺らと一緒にいてくれないか?」


 アレスとはあくまで魔石と、後住む場所を提供しているだけの、言うなれば薄っぺらい関係。スケ方と仲もいいし、強さもかなり評価できる。


 できれば俺の留守中に守護者となって欲しいのだ。


『俺は、最初カラそのツモリダガ』

「ああ、ありがとう」


 ありがたい言葉だ。そして、ダンジョンが何となくアレスたちを侵入者から味方、という評価に変えたのを感じる。


 定期収入は無くなってしまったが、まあアレスたちを丸々仲間にできたのなら悪いことではないだろう。


 ……切り出すなら今だな


「全員、俺はアレスを四天王の一席、【一天】に昇格させようと思っている!」


 魔王軍といえば四天王。前々からずっと考えていたことだ。


「初めて聞くのです。そんなのあったのですかー?」

「今作った!」

「じゃあ、私は賛成です!」


 元気よく小雪が手を挙げる。そして、それを見たスラちゃんもピョン、と跳び多分賛成。


 スケ方もやれやれ、と一言呟いてから【一天】への昇格を許可。


 ホーンラビットはよくわかってないっぽいけど、いいよ、と言っている。


「では、レッサー・オーガのアレスに四天王の一席、【一天】の位を授ける! これは命令だ。拒否権は無いからな、アレス」


 そう言ったら、アレスは頬をカリカリとかいて、返事をした。


『よく分カランが、ヨロシク頼ム』


 ふう。アレスが居れば、化け物でも来ない限り安泰ではあるだろう。


 そして俺は指パッチンをした。


 今まですぐ玉座の間にたどり着けるぐらい短かったダンジョンの通路を、長くしたのだ。ガッツリとDPを消費したのを感じる。

 後で見るのが楽しみだ。


 そしてホーンラビットの食糧難など様々な問題を俺は解決していった。






 ◆ ◆ ◆




「うお、ひっろ」

「わあ、おっきくなってますね」


 大きくしたダンジョンは大きかった。やっぱ、パッと見でかく見えるのはいい。


 早くいっぱいDPが手に入るようになって、新階層と色々な魔物をたくさん召喚(スポーン)させられるようになりたいな。夢広がるね。


「じゃあ後は街に行って、俺のダンジョンで宝を――いや……やらかしたかもしれねえ……」

「どーしたんですか?」


 肝心の宝を用意していなかった。残ったDPも、完成したらしいゴブリンたちの巣を手入れして、荒い敷き布団を創造(クリエイト)して使い切ったところだ。


 どうするか……


『……トージ』

「……ああ、アレス。なんだ?」

『魔法使イが、持ッテタ』


 そう言って、俺に大きな魔石がハメられた杖を差し出してくる。


「くれるのか?」

『回復薬ノ、礼だ』

「超絶ナイスタイミング、ってやつだ。ありがとう」


 受け取る。魔石の価値は分からないが、今まで見た中で一番大きい魔石だ。

 10cm、ってところかな。これぐらい大きいのならばとてもレアな部類に入るだろう。


「……よし。あ、小雪、本になってくれるか?」

「な、なんか説明責任を果たされていない気もしますけど……いいですよ」


 右耳の、ピアスのトップに装飾としてついている超小型ドクロを外して、超小型本をつける。


『聞こえますかー?』

「死ぬほど聞こえてる。ああ、ダンジョン以外のことは一切知らないから街に降りてからはよろしくな」

『は、はい! トージのために頑張りますよー』


 やる気があっていいことだ。


「スケ方、これやるよ」


 不必要になった超小型ドクロをスケ方にぶん投げる。俺からの愛のプレゼントだ。よかったね。


「じゃあちょっと行ってくるわ。スケ方、そして【一天】のアレス。いない間は頼んだぞー」


 まあ、俺がいたところで戦いの力になれるという訳では無いが、それでもみんなのために動いているつもりである。


 だから、こうしてこの安寧の地を離れるのは若干不安がある。


 だが、俺の魔王道への第一歩だ。これはやらなければいけないこと。


「よし、行くぞ!」


 まずはモンテテール・アドリアン。略してモンテ街まで、突っ走ってやろうじゃないの。

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