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08

 スーレインから帰ってきてここ二日間、マサキは俺の前に現れ無かった。その間俺は、依頼でガキ共の子守をしたり、街外れの爺さんの話し相手になったりしていた。


「今日もありがたいねぇ」

「これも依頼内容の一つだからな。爺さんは気にするな」


 薪を割りながら、俺は答える。ただ、何故か鉈で薪を割ることが武器による攻撃と認識される為、大鎌で割っている。


「さて、これで全部だな。次は何をすればいい?」

「そろそろ昼餉にしようかのぉ」

「手伝おうか?」

「こればかりは儂一人で大丈夫じゃ」


 この爺さん、元々名の知れた料理人だったらしく、老いた今でもまだその技量は衰えていない。こう言うのは、技術が体に染みついていると言うのだろう。


「わかった。その間は……庭の草むしりでもしてるか」


 草むしりと言っても、手入れが行き渡っている為ほぼやることが無い。そんな時、目の前に誰かの足が現れる。


「邪魔なんだが」

「……」


 上を向けば、マサキが真顔でこちらを見ていた。いや、何処か悲しそうだな。


「なんか喋れよ」

「……結局一度も名前を呼んでくれなかったな」

「俺が言うとでも?」

「だよなぁ……」


 大きなため息を吐いた奴は、屈んで スーレインから帰ってきてここ二日間、マサキは俺の前に現れ無かった。その間俺は、依頼でガキ共の子守をしたり、街外れの爺さんの話し相手になったりしていた。


「今日もありがたいねぇ」

「これも依頼内容の一つだからな。爺さんは気にするな」


 薪を割りながら、俺は答える。ただ、何故か鉈で薪を割ることが武器による攻撃と認識される為、大鎌で割っている。


「さて、これで全部だな。次は何をすればいい?」

「そろそろ昼餉にしようかのぉ」

「手伝おうか?」

「こればかりは儂一人で大丈夫じゃ」


 この爺さん、元々名の知れた料理人だったらしく、老いた今でもまだその技量は衰えていない。こう言うのは、技術が体に染みついていると言うのだろう。


「わかった。その間は……庭の草むしりでもしてるか」


 草むしりと言っても、手入れが行き渡っている為ほぼやることが無い。屈みながらちまちまと毟っている時、目の前に誰かの足が現れた。


「邪魔なんだが」

「……」


 上を向けば、マサキが真顔でこちらを見ていた。いや、何処か悲しそうだな。


「なんか喋れよ」

「……結局一度も名前を呼んでくれなかったな」

「俺が呼ぶとでも?」

「だよなぁ……」


 大きなため息を吐いた奴は、屈んで下を向く。そして奴は、俺の討伐隊が到着したことを告げてきた。


「ふーん。で、場所は?」

「街の中央広場。以前俺が回し蹴りを喰らった場所だな」

「爺さん! ちょいと急用が舞い込んできたから行くわ! 飯を一緒に食えなくてすまねぇ!」


 俺は台所にいるであろう爺さんに聞こえるようにそう告げると、マサキと共に中央広場へと向かった。




 広場には大勢の兵と先頭に馬に跨った指揮官らしき男が一人。その周囲には街の人が見物している感じ。


「こりゃぁ大層なお出迎えで」

「ご同行、願えるかな?」

「先ずは馬から降りろよ。礼儀も無いのか?」


 つい癖で煽ってしまった。馬に跨っていた男は顔を赤くし、物凄い形相でこちらを睨む。いやごめんて。

 殺気立つ兵たちだが、俺はそれでも断った。


「第一身に覚えがねぇな。罪状があるなら言ってくれよ」


 案の定述べられたのは転生者殺しの事。ただそれだけで俺が連れていかれるのが納得いかないと思ったのか、街の人たちは兵士たちに罵声を浴びせる。

 確かこの街に来た時に、この街は転生者に好き勝手されて困ってたっけ。


「ええい黙れ!! これは――」

「なぁ、どうせ外にも人がいるんだろう? それに王様も。どうせ拒否されてることが分かってるならさっさと用件を伝えろよ」


 そして事前に得ていた情報通り、俺の討伐が告げられた。さらに街の人たちは罵声を浴びせるが俺がそれを制す。


「街を巻き込まなかったことは褒めてやる。本当は殲滅でもしようかなと思ってたけど……うん、殺しはやめておく」


 そして俺は男に近寄り、場所を聞く。すると返ってきた答えは俺が決めて良いとのこと。そこにマサキが俺に耳打ちする。


「どうやら俺が平気で監視に付いている事から舐められているみたい」

「ふーん」


 じゃ、場所は平原でいいか。男には身を隠せないが良いのかと聞かれたが、問題ないと答える。


「どうやら俺は暗殺系の能力を持っていると勘違いされてるみたいだな」


 兵が居なくなった事を確認した俺はマサキに聞こえるぐらいの大きさで呟く。


「それも弱い俺が殺されていないぐらいのね」

「……俺ってさ。実は自信に満ちた表情をグチャグチャに壊すの好きなんだよね」

「うわっ、性格わっるっ!」

「うっせ」


 自覚はしている。でも、それに気が付いたのは発明系の転生者を狩った時だったね。そいつは自分の身を守る魔道具を身に付けていて、完全に油断しきってたよ。俺が目の前に現れても「僕は死なないさ。最高傑作があるからね」とか言ってさ。

 死ぬ直前には「どう……して……」とか言って、さっきまでの満遍な笑みが崩れていったから思わず腹抱えて笑っちまった。


「でも、お前は未だに殺せそうにないわ」

「それは良かった。俺にはまだ未練が沢山あるからね」

「言っておくが、お前がいなかったからって別に寂しくなかったからな?」

「くっ、押してダメなら引いてみろ作戦もダメだったか!」


 おいおい、そもそも俺はお前の事なんざ意識してねぇって言ってるだろ。

 ……最近はなんかウザいくらい脳裏にチラつくけど。


「さて、お喋りはここまでにして場所を移るか。それとお前のハーレムは参加するのか?」

「俺含めて全員参加しないよ。死にたく無いからね」

「それは賢明な判断で」


 殺さないことは出来る。が、俺は手加減というものが苦手だ。だから、最悪骨が変になるぐらいは相手には覚悟してほしい。


「それにしても馬鹿だよなぁ。殺害に方法や事件現場から直ぐに暗殺系じゃ無いことぐらいは分かるのに」

「い、一応レイはちゃんと説明したらしいんだけど、戦力が減ってしまった事にしか目が行ってなかったらしく……ね」


 そんな話をしながら俺たちは街の外へと向かう。街の大人たちは特に心配している様子はないが、子供たちは違った。こちらの様子を伺っている。しかし俺は気にしないように門を潜ろうとした。

 すると、突然後ろから軽い衝撃が伝わってくる。


「シルヴィア姉ちゃん、嘘だよね!? 姉ちゃんが悪い人だなんて嘘だよね!?」

「それは……」


 何か言おうとしたマサキを手で制し、俺は軽く上半身をひねって少年の頭に手を乗せた。そして軽く撫でてやる。

 すると、手はまだ俺のマントを掴んでいるが少年は少し離れ、俺の視線に目を合わせた。


「なぁ坊主。どうして俺が悪い人じゃねぇと思うんだ?」

「だって、僕たちを悪い人から助けてくれたから……」

「でもそれだけが良い人と呼ぶには値しないぜ? 実際、俺がしたことは悪いことなんだ」


 この国にとってね。でも、この国以外の転生者も俺は殺している。その国々でもどうやら転生者殺しを探しているらしい。


「俺はこの国以外でも似たようなやつを潰している。そしてその国たちはその犯人を捜している」

「でも……」

「あー……俺は誰かに物事を伝えるのが苦手だからハッキリ言うぜ。俺は良いか悪いかというなら悪いに部類する人間だ。あいつらと同じ好き勝手やってるだけさ」


 少年の目は未だ涙目だ。しかし、俺の顔を見て安心したのか掴んでいた手は緩んでいた。

九話、十話、書ク、終ワッタ、ナイ

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