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04

※後半シリアス注意

 玄関の扉のノックと俺を呼ぶ声で起こされた。時刻は……まだ地球時間で言うお昼の12時じゃねーか。

 でも起きないとな。さっきから「ダーリン」って聞こえてくるんだ。いったい誰なんだろうね。


「ダーリン!」

「誰が“最愛の人”じゃボケェ!!!!」


 わざわざ寝間着から着替えて出迎えたと同時にツッコミを入れさせるな。


「そもそも付き合ってねーだろうが」


 俺に顔面に蹴りを入れられて吹っ飛んだ奴に言う。5メートルほど吹っ飛んだみたいだが、直ぐに奴は起き上がり反論してくる。


「じゃあなんて呼べば良いんだよ! 名前がダメならハニーやダーリンって呼ぶしかないじゃないか!」

「耳、ちゃんとある? 君。俺、お前の恋人でも伴侶でも無いからな?」

「え? 付き合ってなくても好きな相手には言うでしょ」

「俺は一度も聞いた事無い」


 それでも奴は諦めていない様だ。


「……まぁ丁度いいや。前にお前が言ってた事でちょっと気になることがあったんでな……いいか?」

「ん? 俺の何が聞きたいんだい? あ、でも、覚醒時のイチモツの長さは流石に恥ずかしいから聞かないでね?」


 家に上がれると思った途端そのテンションかよ。マジでコイツはどう殺せば良いんだ……


「お前が最後の転生者だっていう事の理由だよ」

「ふむ……良いよ。ただ中で話そう」

「最初っからそのつもりだ。森の中にも耳のデッカい鼠がうじゃうじゃいるからな」






 奴を家に上げ、音が外に漏れない部屋に案内する。前の住人はここを拷問部屋に使っていたらしく、掃除する度にその器具が見つかるのが最近の拠点での悩みだ。

 俺はドサッとソファーに座る。そして奴に向かいの席を指差して座るように促した。


「……で、最後って事は何だ? 奴らは飽きたのか?」

「そうみたい。一番最初の奴が行方不明になってから原因を考えて、チート能力とか授けて楽しんでたらしいんだけど、最後まで寿命のとおりに生きた人がないくて次第に……って感じらしいよ」

「はんっ、ザマァねぇな」


 転生時の手違いで、予定していた容姿とは大きく異なったり、変な場所にスポーンさせたり散々だったが、奴らが本当に恨めしかった俺は、喜びを露わにしてしまう。


「嬉しいみたいだね」

「まあな。私怨で八つ当たり見たいなことをしてた自覚はあるけど、結果的に奴らが異世界転生に失望してくれるとは思わなかったし」

「なら俺と結婚する?」

「流れ的にそうはならんだろ。今死にたいのか?」


 不死の所為で殺せないが、つい言ってしまう。


「君に看取られて死にたいかな」

「一生来ないね」


 結局プロポーズじゃねーか。頭どうなってんだコイツ。


「あ、そういえば俺が転生する時にさ、神様が言ってたんだ」

「何て?」

「行方不明になった一番最初の転生者を探してくれって」


 そんな頼まれ事を押し付けられたんだ。念の為訊いておくか。


「そいつの見た目は? 探せって事は聞かされてんだろ?」

「ああ、勿論。黒髪の、目が前髪で隠れるくらいファッションに無頓着な男だってさ。細身で生前がほぼ家にいる生活をしていたから肌は白いらしいよ。ただ、転生させるときに座標にミスが生じたらしく、どこに行ったか分からないそうで」


 ……聞き覚えがある特徴だ。と言うか、うん、十中八九俺かも知れない。


「……かも知れない」

「え? なんて?」

「十中八九俺の事かも知れない」

「……マジ?」


 マジのマジ、大マジだ。生前の名前はもう思い出せないけれど、容姿は覚えてる。だって転生前に一度、全身を見るから。


「……そんで俺を捜索してどうすんだよ」

「さぁ? でもこの指輪を渡せって言ってたよ」


 そう言いながら懐から小さな箱を取り出すマサキ。嫌な予感しかしないが一応最後まで待ってやろう。

 わざわざ対面に座っていたのに俺の横まで移動し、奴は膝をつく。そして箱を俺に向けて掲げると、パカッと開けておもむろにプロポーズの言葉を述べた。


「俺と……結婚して下さい!!」

「なんだ? 今日は結婚の気分なのか? しょうがねーな、その頭ぶっ叩いて直してやるよ」

「と言う冗談は置いておいて、この指輪は魔道具だよ。なんかインベントリの代わりになるって神様が言ってた」

「ほぉ~、それは便利だ。ありがたく受け取ろうじゃないか」


 俺はその指輪受け取り、右人差し指に嵌める。


「…………」

「ブカブカだね」

「ま、まだ指はある……!!」



 結果、左手薬指に綺麗に収まった。ドウ……シテ……ドウ……シテ……!!


「ぬぅぁぁぁぁぁああああああああ!!!! 外れねぇぇぇええええ!!」

「左手の薬指……返事はOKって事でいいんだよね! 式はいつにする!? ハネムーンは何処へ行こうか!?」


 呪われた装備なのか、外そうにもビクともしない。これはもう切断するしか無いと思う。

 俺はトリップしているマサキを放置して、テーブルに左手を置き薬指めがけてナイフを振り下ろした。しかし、カキンッと言う音を立ててナイフは見えない何かに阻まれる。


「クソッ、強盗防止のか!!」

「諦めたら~?」


 勝ち誇った様な笑顔がウゼェ……


「……しゃーない、これ以上誰かに見られるのも嫌だし手袋で隠すか」


 俺はソファーから退き、部屋を出る。確か寝室に手袋が……いや、アームカバーしか持ってないじゃん俺。


「……なんで着いて来る」

「暇だから……ダメ?」

「さっさと帰れ!!」


 奴の首根っこを掴み、一旦玄関まで移動して外へ放り投げた。







 急いで左手用の大きな手袋を作った。ただ、突貫で作ったものだから、この後ちゃんとした物を知り合いの鍛冶師グラスに作ってもらう予定である。


「それにしてもアイツで最後……か。もし殺せたらどうしよう。生きる目的が無くなるのは困るなぁ……」


 念の為にと左手に包帯を巻きながら、今後の事を考える。しかし、目的が完遂した後のことなど全く考えてはおらず、途方に暮れた。


「……ま、今はグラスの所に顔を出すか。手袋の発注のついでに」


 俺は包帯の上に手袋を嵌め、生活拠点を出た。











 ◆


「お父様お願いします!! 確かに犯人は見つけましたが、私達が敵う相手では無いのです! ですから――」

「ええい黙れ! たかが1人では無いか!! 量で攻めれば直ぐに片付くであろう!!」

「違うのです!! 彼……いえ、彼女は普通の人では無いのです!! 彼らと同じ転生者です!!」

「大した強力な能力など持っておらぬとお前が言ったでは無いか!!」


 言い争いが会議室の外まで漏れている。しかし幸いなことに、外に聞き耳を立てている者は誰もいない。


「姫様、王の仰せられる通りですぞ。たとえ転生者であっても、たかが小娘1人相手なら多数で抑えれば良いではありませんか」

「ガレア卿……そうでは…無いのです……それでは……勝てないのです……」

「マサキ殿が今監視しておられるのであろう? 彼でも監視が出来るならば問題ないではありませんか」


 国の、マサキへの評価は最低である。

 評価は『彼の能力は一般の兵士とは変わらない。ただ防御面で優れているだけの転生者』だ。その為、彼のハーレム以外は彼の本来の能力を知らない。


 それ以前にレイは、王やその周りの貴族に言えない事がある。それはマサキが彼女を口説いていたと言う事。


「姫様はマサキ殿と出会いおかしくなられた」


 貴族の誰かが呟く。確かにマサキのハーレムに加わりたいが為に、彼女は国にとって重要な婚約を解消している。


 この場に彼女の味方となる者は1人も居ない。

 そして会議は終わった。


 転生者殺しの討伐は、反対者1名、他全員が賛成と言う結果だった。

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