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03

※伏字注意

 朝っぱらから不幸だと思った。理由は明白、街の広場にて告白されたからである。変態覗き()魔のハーレム()クソ野郎()に。


「…………」

「…………」


 ガキ共がニヤつきながらこの状況を見て楽しんでいる。


「おねーちゃん、返事してあげなよ!!」

「おう、ガキんちょ共。これは見せもんじゃねぇからお父さんお母さんの元に行きな」


 ガキ共は「え〜」と不満そうに言うが、素直に親の所へ帰ってくれた。

 さて、どう返事てやろうか。てかハーレムはどうしたんだ?


「まずハーレムはどうした」

「王様を説得して出兵させない様にしている」

「ふーん。で、何故お前がここにいる」

「監視、兼連絡役だから」

「本心」

「君と! 結ばれるまで!! プロポーズを!!!!止めない!!!!!!!!」


 ふむ、このまま蹴り飛ばすのはいいけど花が可哀想だな。

 ……よし、花束は受け取っておこう。


「……!!」


 俺が花束を受け取ると、奴の顔がパァアッと明るくなった。俺はそこに笑顔を向けて返事をした。


「断る!!」

「ぐおasdfghjkl」


 差し出された花束を受け取ってから、頭目掛けて回し蹴りをお見舞いする。頭からバウンドしたけどあいつ不死身だし問題ないよね。


「さて、朝飯でも食うか」







「それでシルヴィアちゃんはどうするの? 彼」


 シルヴィア、この世界で過ごす為に用意した偽名である。と言うか最近、本名が思い出せなくなって来た。


「どうもこうも無い。諦めるまでフルか、その前に殺す」

「こらっ、最悪ここだけでもいいからもう少し女の子っぽい口調にしなさい」

「……はい、分かりました。アリアさん」


 アリアさんは贔屓にしている食堂の店主、ゴーラさんの奥さんだ。美人で愛想が良いのだが、何故か俺に女子力を授けようとしてくる。絶対に俺が元男だって言うことを忘れているだろ。因みに偽名を考えてくれたのはこの人だ。


「ご馳走さま。それじゃ今日も仕事行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けてね〜」


 代金を払って、店を出る。

 店を出ると、奴に鉢合わせてしまう。


「やぁ、奇遇だね!」


 ストーカーか何かかな?


「……これから仕事なんだ。邪魔しないでくれ」

「手伝おうか?」

「んなもん要らん」


 避けて進もうとしたら遮られた。


「まぁまぁ、人手は多いに越したことはないって言うだろ?」

「複数人で受ける様な仕事は受けてないから問題無い」


 奴は「それは残念」と言って直ぐに引いてくれた。おかしい。でも、この方が助かるか。


「さてと、今日の仕事は……」


 懐から依頼書を取り出す。

 館の掃除。しかもここの領主の、もう使われていない館。


「これは……少しサービスしておくか」


 俺の拠点には贔屓にしている酒場から依頼書が届く。その依頼の内容は傭兵が受ける物や、暗殺者が受ける物まで多種多様にある。

 どうしてそんな依頼が来るのかと言うと、酒場のマスターが世間で言う【何でも屋】を運営しているからである。そして俺は生計を立てる為にそこに所属している。というか所属させられてる。狸爺め!!

 ……まぁ、孫みたいに可愛がってくれるから許すけど。


「ボーナスは幾らになるんだろうねぇ……」


 何でも屋は復讐代行、暗殺、諜報などの裏稼業や、稲刈り、田植え、下水掃除、犬の散歩から子供の世話まで何でもやる。

 下のお世話?

 んなもん受ける訳ねぇだろ。そんな金あるなら娼館にでも通え。


「さてと……ここか。昼間だしそんなに人はいないだろうな」


 下準備をするなら今か。

 てな訳で玄関からお邪魔しよう。


「……一階には居ないな。地下から薄っすらと喘ぎ声が聞こえるけど……ハッスルし過ぎでは?」


 地下は後回しにして2階から潰す。2階には玄関から入って直ぐの大きな階段から行ける様だ。


 階段は大理石で出来ている様で、ブーツのヒールがコツコツと鳴り響く。

 確か2階には……5人か。長年の経験(5年)でおおよその気配感知が出来る様になった。気配感知スキル?んなもん持ってねぇよ。

 それで気配は……それぞれ別々の部屋で寝ている様だ。扉越しにイビキが聞こえてくる。


 コッソリ部屋の扉を開けて中の様子を伺う。

 よし、寝てるな。大きな音を立てない様に侵入し、大鎌で軽く喉に引っ掛けて素早く引く。痛みは無いだろうけれど、呼吸出来なくなってじきに苦しさで目が醒めるだろう。


 これを残る4人にも行い、地下へと向かう。

 地下への入り口は、探すのは面倒だからそのまま大理石の床をくり抜いた。大鎌じゃ無かったら床をくり抜くのにも余計な工程が無いんだよなぁ……


「な、なんだ!?」

「どーも、お掃除の依頼を受けたものでーす。いやぁ、お楽しみの最中ごめんねぇ〜」


 男4、女3、か。女も仲間の様だし……お、賞金首の剛虎のキキと黒拳のデュクラバがいるじゃん。

 そして近くには薬が入っていたと思われる小瓶。


「ふむ、キメ〇〇(ピー)の最中だったか。それに3(ピー)まで……大丈夫? トんで無い?」

「何をごちゃごちゃと……!!」


 大剣が飛んでくる。


「おっと、プレイしている最中ならちゃんと相手を悦ばせる様に集中しなきゃダメじゃなか? 剛虎のキキ」


 大鎌で大剣を弾きながら俺は彼女に問いかける。


「わたしのことをぉ~知っているのねぇ~」

「おいおい、突かれてるのに喘ぎ声忘れてるぜ? 適度に鳴いてやらねぇと突っ込まれてる〇〇〇(ピー)が萎れるんじゃねぇの?」

「小娘がぁああ!!」


 後方から怒声と共に誰かが飛び掛かってくる。


「おっと、女に暴力を振るうなんて最低ですわね!!」


 俺は避けながら振り返り……直ぐさま挑発をする。その相手は以前、夜道を散歩していた俺に襲い掛かってきたレイプ魔だった。取り逃がしてしまったのが残念だと思っていたが、ここに居たとはね。


「あら、全裸だなんてもはやケダモノね!」

「ちょこまかと……!!」

「ガイウスぅ~避けなさぁ~い」

「おっと」


 黒い何かが飛んで来たので避けたら、それがレイプ魔の顔面に当たる。その瞬間、レイプ魔の顔面が爆ぜた。顔が無ければレイプ魔の身元が証明できない。つまり臨時収入が減った。


「……おい、黒拳のデュクラバ。臨時収入が減っちまったじゃねぇか!!!!」

「ふんっ、お前の都合など知らぬ」


 影から現れた大男に向かって怒鳴ったが、返ってきたのは謝罪ではない。まぁ、当たり前か。


「ったく、せっかく奴に対する鬱憤が晴らせると思ったのによぉ……

 お前ら、楽に死ねると思うなよ?」





 賞金首だと聞いてはいたが、アッサリ終わってしまった。これは貰えるお金は安いかもしれないな……

 俺は並べた首を、マスターに支給された小さな黒い立方体の箱に収納する。


「さてと、収納も終わったし帰ってくる奴らの分の罠を仕掛けとくか」

「手伝おうかー?」

「いや、大丈夫だからいい……ん?」


 手伝いを断ろうとして違和感を覚えた。だから振り向くと奴が居た。


「やぁ」

「覗き魔! お前は死んだはずじゃ?」

「残念だな。トリックだよ」

「……なんか悔しい」

「俺は嬉しいよ。ネタが分かる相手がいると」


 いや嬉しんだけどコイツじゃなければなぁ……


「というか覗き魔は酷いなぁ~」

「ストーキングに気付かれなかった事をいい事に、人の着替えを覗いていたじゃねーか」

「ち、違うって! ドアを叩いても返事が無くて窓から中の様子を確認しただけだよ!」

「それがたまたま俺の寝室の窓と……屋根裏部屋の」


 場所的に故意じゃなきゃ覗けない位置なんだよなぁ……


「…………女々しい」

「女々しい言うな!! 俺も自覚はしてるけどさぁ……」

「俺的にはTSっ娘の心情が外見に引っ張られて最終的に女の子になっちゃう展開は好きだぜ」


 コイツ……!!


「たとえ俺が本当に女になっちまっても、お前に落とされねぇからな」

「悲しい事言わないでくれよ~」

「ええいウザったい! いちいちボディタッチして来ようとするな! っと、床の接合よろしく」

「はいはい、後輩使いが荒いなぁ~」


 後輩なら求婚してくるな。そして俺を敬え。その証として死んでくれ。

 と思ってはいるが……便利だなコイツ。大理石の床の接合、無茶振りのつもりで命令したらマジで直しやがった。


「マジで直しやがったよコイツ」

「いやぁ、そう褒めないでくれよシルヴィア」


 名前を呼び捨てされて、背筋がゾワっとなった。

 やばい、冷や汗が止まらない。鳥肌が立つ感覚と共に俺はその場に立ち尽くしてしまう。


「ど、どこでその名前を知った……」

「ん~? シルヴィアが出てきたお店のママさんから」

「呼び捨ては止めろ。と言うか俺の名前をお前が口にするな。鳥肌と冷や汗が止まらん」

「あからさまな拒絶反応で心に大ダメージを負った件」


 そんな事は知らん。だってマジでお前に名前を呼ばれるの嫌だったから。


 その後、残党の掃除を終えて俺は報酬をたんまりと貰った。ただ、少しは手伝ってくれたし、アイツに心ばかりのバイト代を渡しておこう。

次回、婚約指輪(嘘)

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