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 ―カポーン……

「生き返るぅ……」


 王都にある貴族御用達の大浴場。その湯船に俺は浸かっている。

 今日は依頼で王都にある違法賭博場を潰しに来た。そして今はその仕事終わりの自由時間である。


「風呂なんて久し振りだからなぁ……いつもは川で水浴びだったからなぁ」


 冬という季節は無いが、雨期はある。しかし、イセタルツは比較的気候が温暖な為、王都よりかは暖かい。まぁ、スーレインの方がもっと暖かいんだが。


 さて、他の客は居ない時間を狙ってきた為、今は辺りは静かである。女湯に入る事に抵抗よりかは期待があったが、俺はヘタレって人の居ない時間に入った。

 しかし、そこに聞き覚えのある女たちの声が聞こえてきた。


「いやー本当に私達が使っていいの? エリー」

「勿論よ! だって私達仲間じゃない!」


 マサキのハーレムである。と言うことはアイツも来てるってことか。

 ……鉢合わせたくねぇな。


「あら? 先客がいらっしゃるみたいですね」

「こんにち――!?」


 まぁ湯が心地良すぎて隠れるのが遅れたから見つかるわな。そして当然驚かれるね。


「なっ!? 貴女なぜ此処に!?」

「何故って……一応ガワは女だし」


 不思議と女体を見ているのに興奮しない。彼女たち限定ってのもあるかも知れないけど、茶髪の娘……確かフーカだっけ、彼女は着痩せするタイプだったらしく、実際はぼんきゅっぼんだった。前世なら勃ってただろうな。


「それに今確信した。男としての大切なピースが1つ欠けちまってたぜ……」

「あたし達にとっては多分良かったことね。絶対」


 そうだね。でも美少女は目の保養になるから大好きだぜ。


「もう敵対関係じゃ無いし……そんじゃ改めて自己紹介でもするか。俺の今の名前はシルヴィア。よろしくな、マサキのハーレムさんがた」

「本当にマサキを殺すの諦めたのね……あたしはミーア、よろしく」


 赤髪の少女が初めに名乗る。

 次に金髪で高飛車な感じの少女がエリー。

 茶髪の着痩せするタイプの少女はフーカ、俺と歳が同じでビックリした。

 水色の髪のやや幼い印象を覚える少女は第二王女のレイ。

 最後に青髪の、知的な印象を持った少女がエマでこの中で最年長者だった。


「ま、いくらやっても殺せないし、会うたびにプロポーズされるからな。だから諦めた。

 それにしても……改めて思ったが、別嬪さん達だなぁ。前は全然見てなかったから髪色と言動で覚えてたわ」

「別嬪さんって……一応貴女もその部類に入ると思うのだけれど?」

「冗談はよせよエリー様。俺がそんなのに含まれるわけねぇだろ」


 一応貴族なので様付けはする。呼び捨てして不敬だと言われたら最悪打ち首になるだろうし。

 しかし、彼女達は呼び捨てを許可してくれた。どうやら様付は肌に合わならしい。でもレイは別だな。姫様だし。


「私も呼び捨てでいいと言っていますのに……」

「流石に王族を呼び捨てするのはマサキのアタックと同じくらい怖いので」

「てかマサキに聞いたんだけど、あなた一回だけマサキの名前を呼んであげたんでしょ? あれ以降一回も名前を呼んでもらえなくって泣いてたわよ?」


 泣いていたって大袈裟な。

 ……アイツが泣いている様子を想像したけど、ちょっと気持ち悪いな。


「名前を読んだ理由? 気紛れだよ、きーまーぐーれ。てか知ってどうするんだよ」

「それは……」


 これは誰にも悟られちゃいけねぇ。だからはぐらかす。もし本人に知られでもしたら、俺は自死を選ぶね。


「ま、何されようとも言わねぇけどな」


 そう言った途端、少女達の目付きが鋭くなった。そして今日は何故王都にいるのかを俺は問われる。


「……依頼だよ。違法賭博場を潰したんだ。バニーガールとかに変装したりしてな」


 ま、潜入と言っても賭け金をベットされる側だけどな。


「ならこの後私達と共に城下町を廻りません?」


 勿論拒否権はありませんよと言わんばかりの圧を感じた。そして断ったらコイツら、マサキにある事ない事言うつもりだな?


「…………お手柔らかに頼む」


 苦笑いが限界だった。正直何されるか分からなくて怖いです、はい。

 因みに左手の指輪はバレてない。これだけは絶対に隠し通さねば。








「……で何故洋服屋に?」

「シルヴィはいつも同じ服だと思うので私達が新しいものを見繕ってあげようと思いまして……」

「フーカもそうだけど、みんなの顔怖いんだが?」


 俺は彼女達から距離を取ろうと後ろに退がる。しかし回り込まれた。


「こ、この身を汚されようとも俺は言わんからな!!」

「大丈夫ですよ、シルヴィア様。私達はただ、お洋服を買いに来ただけですから」

「そうそう、レイの言う通りよ。それに、頑なに見せようとしないその左手とかも気になるし」


 そう言えば、前会った時は左手は手袋して無かったからね。そりゃあ気になるだろうね。


「こ、これはあれだ。あの後仕事中に火傷しちまって、人様に見せられねぇんだ」


 しかし苦し紛れの言い訳は届かず、俺は店内で身包みを剥がされた。もうお嫁さんに行けない。



「この指輪は……」

「断じて違う! 事故で抜けられなくなっただけだ!」


 実は腕を斬り落とそうとしても無理だったよね、この呪いの指輪。


「ほう……そう言うことにしてあげますわ」


 そう言いながら、白いワンピースを渡される。手袋と包帯、アームカバーは没収された。


「ここ、これを着ろと……? いえ着ます。着させていただきます」


 マサキを盾に脅されて俺はワンピースの着用を余儀なくされた。


「白も似合いますわね……」

「……着飾るよりかは比較的に楽だな。スボンが無いのが恥ずいけど」

「つ、次はコレを……」


 レイが藍色のシルクドレスを持ってくる。それは体型がクッキリを見えてしまうもので、さらに生脚がちらりと見えるもの。何を言いたいのかと言うと、少し……色っぽいですね。

 それからはゴシック系、男装系、清楚系など、様々なジャンルの装いを着せ替え人形の如く着せられた。


 店を出た頃にはもう日が暮れていた。因みに、彼女達はいくつか俺がセーフを出した服を勝手に買い、俺に渡してきた。人の金で買われたものだから捨てられねぇじゃねぇか。

 それらを指輪に仕舞い、俺は泊まっている宿に戻った。

 そこは彼女達と鉢合わせた浴場があるんだけどね。


 廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。その声は、少し偉そうな感じがする。


「待て、そこの女」


 俺は歩みを止めて、声の主の方へ振り向く。


「何か御用でしょうか、アルガス第一王子」

「俺の名を知っているか。まぁ良い」


 たしかに傲慢な雰囲気だな。しかし、そこまで嫌な感じはしない。


「俺との手合わせを許す」

「……拒否権はない様なのでよろしくお願いします、とでも言っておきましょう」

「分かっているでは無いか」


 付いて来い、と言いながら彼は歩き出す。俺はその後に続いた。

 着いた場所は大きな広場。おそらくトレーニング施設だろう。そこの中心に彼は立ち、剣を構えた。


「……寸止め、で宜しいでしょうか?」

「構わん。それとそろそろ口調は戻せ。先程から首筋が痒くてたまらんのだ」


 もう臨戦態勢か。も少し力を抜けば良いのに。

 俺は指輪から愛用の大鎌を取り出して軽く構えた。そして彼の視線に目を合わせる。


 そこから数時間が立ったのだろうか。俺と彼は睨み合いをしていたが、彼が「参った」と言って呆気なく手合わせは終わった。


「……強いな」

「そりゃどうも」

「決めた、お前を俺の護衛に任命する」


 突然すぎませんかね?

 面倒だし断ろう断ろう。それに、今の生活が気に入ってるし。


「残念ながらそれは辞退させてもらおう。今の生活が気に入ってるもんでね」

「そうか……それは残念だな。だが、俺は諦めないからな? 転生者殺し」


 どうして分かったんだ? ちょっとと怖いんだけど。

 まぁ、根は真面目そうだしアドバイスはしてあげるか。


「そんじゃもう寝みぃから失礼するわ」

「ご苦労であった」

「……最後に1つだけ。もう少し肩の力を抜きな。そうすれば拮抗状態の時に気疲れでバテねぇと思うぞ」


 俺はトレーニング施設を後にした。














「シルヴィア!! やっと見つけた!!」

「ええい近寄るな!!」


 廊下でマサキと鉢合わせた。最悪だ。

 俺は大鎌を取り出し牽制する。しかし、彼は近寄ってくる。


「もう一度、名前を呼んで欲しいだけだ!」

「こ、断る!! しつこいんだよお前。ウザい!!」


 腕で顔を隠しながら叫ぶ。

 顔が熱い。あいつの顔を直視できない。

 どうして。どうして、俺は男なのにこんな気持ちになってるんだろう。絶対に男に惚れるなんてあり得ないと思ってたのに。

 これは気の迷いであって欲しい。そう俺は願う。しかし、彼の顔を見る度に頭の中が真っ白になるのだ。

 だから俺は――。


「頼む、俺を見ないでくれ……()()()

シルヴィアにとっては最悪な結末でしょうが、これにて物語は完結です!

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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デモモウマイニチコウシンヤリタクナイ(;´Д`)←前日に最終話をほぼ0から書き上げた


11ページ目にシルヴィアのイラストを載せるつもりなのでまだ完結はいたしません。

更新がいつごろになるかは分かりませんが、イラストも見てくださると嬉しいです。

シルヴィアのイメージとしては、シャドウバースのオズの大魔女ですネ。

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