第七話「おのれェェェェェ!!」
夜が明け。
夜が明け。
夜が明け。
また、夜が明ける。
買った乾パンを頬張り、馬を走らせる。
そして見えたのは、第二関所。
───だが、流石にそうか。
「帝国はもう、根回しをして私を殺しにきたか」
第二関所には、数百の兵達が見える。
流石に私でも、あの数を切り抜けられはしない。
「迂回するべきか。仕方ない」
馬に再び鞭を打ち、近くの森の中に入っていく。
帝国兵に見つかる心配はない。
記憶上ここの地区には、農村しかないはず。
だが、この壁の近くには……。
ヒヒン、と大声を上げて止まる馬。
目の前に、壁を隔てる……そこの見えない渓谷が広がっていたからだろう。
「……予想はしていた。ふむ」
馬を降り、その渓谷の幅を伺う。
落ちたら即死。合間は……当然、飛び越えられはしない。
「野良にお帰り」
馬を撫でて帰っていくのを見届けながら、私は体を多少動かす。
息を吐き。そして止める。
「我が国には、魔法がある。帝国とは、違ってね!!」
身体強化。
及び跳躍。
着地した時にはもう、私は壁の上にいた。
溜息が出てしまいそうな距離を、飛び越えたのだ。
「たがここから徒歩になる。どうにか足が欲しいところだが……」
壁を降り、関所を飛び越えたことに安堵する。
そうだ。シエル王国民は、潜在的に魔法の素質を持っている。
私の体はそれを持っている。というか……引き出した、か。
銃を持ち、私は歩いていく。
瞬間、エンジン音が空を通り過ぎていった。
いや、これは。私の上に───。
「機械飛空挺部隊───!!」
それは私の上に滞空していた。
降りてくる気だ。私を捕捉したのだ。
何故だ?
何故ここを知られた?
瞬間、笑いかける声があった。
「エクセル、やっぱり来ると思ってたよ」
はらわたが煮えくり変えるような声質。
私の顔が強張っていった。
「ツアー……ッ!!!」
彼が私を殺した張本人。
一番殺したいと思っていた人物だ。
「……帝国の差し金かぁッ!!!!」
銃を構え、飛空挺に撃つ。
効果はない。代わりに降りて来たのは、見覚えのある兵達だった。
「機械兵───」
飛空挺から照準をチェンジ。
直ぐに発射──────!!
瞬間。
「ぐは───ッ!」
無数の鉄鋼榴弾が、私の体を貫いていた。
飛空挺から、だ。
「お、おのれ、帝国──────」
ドサッ。
私は、死んだ。
──────再び、だ。