7話
暑い…
思わずつぶやかずにはいられない。気温は30度をゆうに超えている。
蝉の声に気おされる。オスが、メスを引き付けるために音を立てているらしい。
人間のように特定の誰かとの恋愛ではない。
奴らは誰でもいいのだ。
私たち人間とは違う…
絵梨佳と颯佑の言い争い、そして、颯佑からの食事の争いから2日。
何もつかめないまま次のバイトの日を迎えた。
しかも絵梨佳、颯佑と同じシフトだ。
―気まずい―
なんで、二人は一緒にいたんですか?
お二人は付き合っているんですか?
喧嘩の原因は?
なぜ私を食事に?
杏香にも同じメッセージ送ってましたよね?
興味は尽きない。聞きたい。けど聞けるわけがない。
二人の様子にいつもと違うところはない。
颯佑は、笑顔で話しかけてくるし、絵梨佳は相変わらずとっつきにくい。
客のほとんどいない店内で、ゆっくりとした時間が流れる。
いつもと同じ5時間の勤務。
それなのに、今日はそれが十時間にも二十時間にも感じる。
早く帰りたい。
どうして二人はあんなに平然と仕事をしていられるんだろう。
21時、シャッターを閉め、店じまいだ。
レジで作業をしていると、絵梨佳が近寄ってきた。
絵梨佳「どう?そろそろ慣れてきた。」
突然の声掛けに、反応しきれなかった。
私「は、はい、だいぶスムーズにいくようになりました。」
絵梨佳「そう、それならよかった」
続かない会話、ほんとにこれでいいのかな…
どうしよう、あのこと聞いてみようかな…
でもな…そう考えていると
絵梨佳「颯佑のことなんだけど…」
絵梨佳のほうから話を持ち出された。
予測しえなかった事態に思わずパニックになる
私「え、いや、颯佑さんは、私は、何も…」
絵梨佳「え、何言ってんの??それより、颯佑には気をつけ…」
そこまで行ったところで、颯佑が声をかけに来た。
「おーーーい!今日は早めに上がっていいってよー!」
絵梨佳は小さく舌打ちをうち、
「まあ、そういうことだから、ね」
といい、話は終わった。
いったい何なんだ…
気を付ける??
颯佑さんに?
私の彼氏だから手を出すなってこと?それとも…?
いろんな想像、憶測が頭を駆け巡るが、何一つとしてはっきりしない。
いったい何がどうなっているんだ…
バイトを終え、部屋に戻る。
ベッドに横になり、携帯の画面を見る。
颯佑からのメールにはまだ返信していない。
杏香から、部屋に行っていいかといわれたが、今日は断った。
眠れないのは、暑さで寝苦しいためだけだはない。
いったい何がどうなっているんだろう。
私はどうしたらいいんだろう。
気分を変えるために原稿用紙に向かってみても、そのことばかりが頭に浮かんでペンが進まない。
締め切りまであと三か月、立ち止まってる余裕なんかないのに…