英雄に憧れた少年③
「おぉ!」
僕達は王都に足を踏み入れた。そこは綺麗な髪をした人達がいっぱい居て、奥には噴水、屋台、家が並び立っている。
「どうだ?王都はでかいだろ?」
「はい!」
「ははは。そんじゃあ、俺は目的の場所に行く。冒険者ギルドはこのまま真っ直ぐ行けば他と比べてでっかい建物があるだろうからそこが冒険者ギルドだ。真っ直ぐってもあのでっかい城じゃねーぞ?あ、それとこれ。冒険者登録するには銀貨一枚必要だからな。ちゃんと返せよ?」
「ありがとうございます!あの、今日は何から何まで本当にありがとうございました!」
「おう。んじゃお前がでっかい事やって俺に奢ってもらえるのをずっと待ってるよ。またな」
「ありがとうございました!『エギル』さん!」
エギル。それはあのおじさんの名前。馬車に乗っている時に教えてもらった。
「よし、それじゃあ冒険者ギルドに行ってみよう!」
僕はここを真っ直ぐ進んだ。
「へぇー。美味しそうだなぁ...」
ギュルルル
「....」
あまりにも屋台の食べ物が美味しそうでお腹がなってしまった。でも、お金を貯めないと今はダメだ。確かお爺ちゃんは冒険者登録し終わったらまず安全そうなクエストをこなして、宿を取るのが先って言ってたな。
でもなぁ...お腹すいた。今すぐここから離れよ!
「はぁ...はぁ...」
案の定息切れしました。
―――――――――――――――――――――――――――――
10分ぐらい歩いていると正面に大きな建物が見えた。
「あれか!?大きいなぁ!遂に目的の場所に到着か?」
僕は大きい建物に近づくと、扉の端には看板があり、そこには冒険者ギルドと書いてあった。
「ついたぁ~!」
僕は扉を開ける。すると思っていた以上に中は広かった。周りはおじさんやお姉さんといった感じで大勢いた。流石冒険者ギルド。強そうな人ばかり...
僕は迷わず冒険者登録するためにカウンターに近寄る。そして、受付の人に話しかける。
「あの、冒険者登録をしたいのですが...」
「本当に冒険者になるんですか?」
「え?」
え?って言葉しか出なかった。
「いや、あんたみたいなぁ?弱っちぃー奴が冒険者になれる訳ないじゃん!すぐ死ぬって」
笑いながらそう言われた。僕は...
「僕は...英雄のようになりたくて...その、僕は!笑われようが何だろうが、僕は必ず強くなってみせます!その、なので...冒険者登録をまずしたいんですが」
《わっはっはっはっっは!》
僕はギルドにいる人達に笑われ――
「英雄のようになりたくて...あっはっはっはっ!お前みたいな貧乏人がなれるわけねーだろ!アッハッハッハ!」
英雄になれない。そんな事を言われた。そんなの分かっている。僕みたいなのが英雄に憧れたところで実際なれっこない。でも...それは誰が決めたんだ?貧乏人が...弱そうな奴が、英雄のように、強くなれないと、誰が決めた?そんなの無い。誰だって強くなれるってお爺ちゃんが言っていた。そして僕はそれを信じてる。僕だって必ず強くなれる。そして英雄になってみせる。こんな所で怖気ついてちゃダメなんだ。
「あの、冒険者登録をしたいのですが」
「やるわけ―――」
「何やってるんですか?クーズ?」
「ひっ!」
女の人の声がした時、場は静かになった。
「全く。クーズ。言いましたよね?これ以上新人さんを侮辱したりしたらクビだって。」
「いや、その...侮辱はしてないと言うか―――」
「クビです。ギルマスに報告しときますので、さっさと荷物持って出て言ってください。今後一切冒険者ギルドへの立ち入り禁止です。」
「そんな...ちっ!お前のせいだよ!この私が辱めを受けたのはお前のせいだ!覚えてろ!」
そう言ってクーズと呼ばれた人が出て行った。
なんだ...僕のせいだ僕のせいだって...僕なにも悪くないのになぁ..自業自得じゃないか。
「すみませんでした。その、もしかして冒険者登録をしたいのですか?」
「は、はい!」
「それでは、少々お待ちください。準備をして参りますので。...それと、あなた達、この子にまた変なことしたら...分かっているわよね?」
《はぃぃい!》
おじさん『おばさん』達はお姉さんの言葉で黙り込んだ。
一体あの人何者なんだ...
そして数分経った時、奥からさっきのお姉さんが出てきた。
「ごめんなさいね。あの子元々村にいた村長の娘さんなんだけど、性格があれでね。最初は真面目だったんだけど月日が流れる事に性格がではじめてきてね。何度も注意してたんだけど...」
「もう平気ですよ!ここで立ち止まってちゃあ、僕は英雄の様に強くなれないので。」
「偉いわ。必ず君は強くなれるわ。私が保証するわ。さて、冒険者登録しましょうか。まず、銀貨一枚頂ける?」
「はい。」
僕はポケットから銀貨一枚を出した。
「それでは、この書類に同意をお願いね。ちゃんと説明も見なきゃダメよ?」
「はい」
「それじゃあ、読みを終わったらここにチェックしてね。」
書類とペンを渡された。渡された書類を見る。
――命を落としたとしても、冒険者ギルド側は責任は問わない。それを承知の上でなりたいのなら次を読め――街の人、冒険者ギルドの受付人等を危害した場合冒険者ギルド立ち入り禁止、冒険者カードの剥奪。――冒険者同士での殺し合いは主犯のランクを下げるとする(しかし決闘の場合は別)――決闘を申し込むには冒険者ギルドの許可をとること。許可なしでした場合冒険者カード剥奪――魔物のドロップアイテムはトドメをさした人の物とする――
こう書いてあった。僕はペンで同意と書いてあるところにチェックをいれた。
「それじゃあ、これで仮登録完了ね。」
「仮登録?」
「そう。冒険者にはランクがあるのよ。最高ランクがS。上から順にS、A、B、C、D、E、F、Gとあるんだけど、Gランクの冒険者はまだ仮の状態なのよ。本格的に冒険者になるには、Fランクに昇格することね。さて、これがFランクカード。クエストを二回こなせば、Fランクに昇格できるから頑張ってね。依頼はあそこの一番右に貼ってあるから。一番右から左はまだダメよ?」
「分かりました。ありがとうございます。」
僕はFランクカードと言うのを貰い、袋にしまう。そして依頼書を見てみる。依頼書が貼ってあるところの上にはFランクの依頼と書いてあった。他にも上にランクが書いてあった。なるほど。と言った感じで依頼書をとる。内容は、
――――――――――――――――――――
孤児院の院長
子供達と4時間だけでも遊んでください。
報酬額『銀貨一枚』
――――――――――――――――――――
と言った感じで孤児院の子供達と遊んで欲しいと言うことだ。僕は人とあまり接したことないからこれはいい練習になるなと思い、孤児院の子供達には悪いけれども、練習相手にさせてもらう。本当にごめん...
そして、僕は孤児院の場所をお姉さんに教えて貰い、これが僕の初の冒険者活動となった。