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マオの探し物

「いやですが?」

「なんでよぉぉぉ!」


 マオの否定の一言により今まで威圧感を出しまくっていたオレスティナが一瞬にして威圧を消し、瞳に涙を浮かべながらマオへと詰め寄った。

 セリムとエルレンティは周りを覆っていた威圧感が一瞬にして霧散し、二人はようやくまともに呼吸することが叶った。


「オレスティナ、あなた幾つですか? いいか加減に妄想の世界に逃げるのはやめてはいかがです?」

「も、もうそうちゃうやい!」


 マオはオレスティナの言葉を全く真に受け止めていなかった。それどころかオレスティナの魔王発言はマオの中では妄想として処理されていた。

 これはオレスティナが昔からマオと会うたびに「私は魔王なんだぞ!」と宣言していたのが問題だった。

 なにせ会うたびに言ってくるのである。そのためマオはオレスティナの事を『魔王になりきりたい痛い子』と認識してしまったのだ。

 更にいうならば幼少期より神官長の地獄の特訓というしごきを受けてきたマオはオレスティナが昔から無意識に発している威圧する気満々の魔力を受け続けていたために魔力に対してねは耐性を得ていた。

 これのせいでオレスティナの魔力には全く動じず、余計にオレスティナの凄さがわからないという事態に陥っていたのだ。


「だから私は魔王なんだってば!」


 そのような理由からマオに全く魔王であるという事を信じてもらえないオレスティナは喚いた。それはもう盛大に。


 しかし、マオにとってはそんなことは関係ない。オレスティナの魔力に萎縮しないマオにとってオレスティナはただの痛い子に過ぎないのだから。


「関係ありません。それにマオは探し物があるんです」

「探し物?」

「そういえば前にそんなこと言ってたな」


 マオの言葉に首をかしげるオレスティナと思い出したかのようなセリム。オレスティナは自分の知らないマオの秘密をセリムが知っていると考えたのかまるで殺すような視線をセリムへと送っていた。


「な、なんだよ……」


 物理的な魔力の波動まで出されているのでセリムは顔を青くしながら後ずさる。


「お、お姉様!一体何を探してらっしゃるのです⁉︎ それにその言い方ですと長い間探されているんでしょう⁉︎」


 その場の空気を変えようと珍しく空気を読んだらしいエルレンティがオレスティナの視線に篭った魔力にセリムが殺される前に話題を強引に先に進めるべくマオを促す。

 それにマオは「かなり探してますよ」と答えた。


「なんなのよ、それ見つけたら魔王軍に入ってくれるの? だったら見つけてあげるわよ!」


 どうしてもマオを仲間に入れたいらしいオレスティナが力強く宣言する。

 だがそんなオレスティナにマオは全く信用していないような眼差しを向けているのだがオレスティナは気づかない。


「マオの探し物はですね、五年前にマオの誕生日に食べようと思ったスピリットアップル……」


 スピリットアップル。それは精霊が気まぐれに作ると言われているリンゴである。

 見た目は白く輝くリンゴであり、いくら時間が経過しようと腐ることはない。

 そしてそれは非常に美味であり、食べるだけで寿命は伸び、魔力は増え、お肌はスベスベになるという女性じゃなくても欲しがるような代物である。無論、お金で買えるような代物ではない。


「スピリットアップル、魔王軍の宝物庫にあったかしら?」


 オレスティナが腕を組み首を傾げて思い出そうとしていた。


「話は終わってません」


 が、その思考はマオにより遮られた。


「マオの探し物はフェアリーアップルではなく、フェアリーアップルを盗んだ奴を探すことですよ」


 食べ物の恨みだった。

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