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魔王オレスティナ

「マオ無事か!」

「お姉様!」


 オレスティナとマオが会話をしているとそこへペルーに乗ったセリムとエルレンティがやってきた。

 やってきたと言ってもその距離は遠く、まるで巻き添えを喰らわないようにしているようであった。


 というのもセリムとエルレンティには声には出さないが確信があった。

 マオの知り合い=なにかしらロクでもない人物であるという確信だ。

 それがいかに見た目が可憐な少女であったとしても必ずなにかしらがあると感じていたのだ。


「なによあんた達。弱そうな感じね!」


 黒髪をなびかせながらオレスティナが治癒したばかりの指でセリムとエルレンティを指差す。そんなオレスティナの姿を見てセリムとエルレンティの二人は瞬時に悟る。マオの同類であると。


「あなた誰ですぅ」


 警戒心を露わにエルフ耳を動かしながらエルレンティが問うとオレスティナがよくぞ聞いたと言わんばかりに笑みを深めた。


「ふ、私はね! オレスティナ。魔王オレスティナよ!」


 漆黒のドレスのスカートを翻しオレスティナは両手を腰に当て胸を張り宣言した。同時に軽く威圧するために魔力を解放していた。

 その魔力はオレスティナが思うよりも凄まじく、彼女としてちょっぴりビビらしてやろうというくらいだったのだが、本当に魔王である彼女のちょっぴりの魔力は二人を硬直させるには充分な威力であった。


「ま、魔王……」


 肌が焼け付くような魔力を叩きつけられたセリムは声を震わせる。

 魔王オレスティナは魔王と呼ばれるに相応しい魔力を持っていた。

 それはセリムがいつか勇者になると公言しているのを撤回したくなるほどの魔力。目の前の魔王は圧倒的な存在であると本能で悟っていた。


 実際、オレスティナは新たに魔王になったとは言え、実力主義の魔族のトップに君臨している。

 魔王とは魔族の中で一番強い者に送られる称号であり、強者の証でもあるのだ。


 体を震わせながら隣にいるエルレンティを見ると彼女もまた恐怖に体を震わせ、いつもはピンと立っているエルフ耳がヘタれるように下へと下がっていた。


 二人の萎縮しきった様子を見てオレスティナは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


「この程度の魔力で体が震えるなんてダメね。マオに相応しくないわ!」


 そしてオレスティナの発する魔力に全く動じないマオへと向き直り、その姿に更に笑みを深めた。


「さあ、マオ!あんたは私と一緒に相応しい場所である魔王軍に行くのよ!」


 そうして彼女はマオを自分の軍へと誘うように手を伸ばしてきたのであった。

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