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おーちゃんですね

「指ぃぃ! 私の指がぁぁぁ!」

「えーと……」


 あらぬ方向に曲がった指を抑えて仮面の少女が地面を転がり回るものでマオはすごく動揺していた。

 なにせ少女は明らかに鉄製である黒騎士の鎧を凹ましまくった張本人である。それも蹴りや拳で。さらに言えば黒騎士目掛けて振り下ろしたマオの全力の攻撃を片手で防いだのだ。

 そんな人としては異常と思える強度、あるいは筋力を持っているのだからメガトンバットくらいは軽々と先ほどと同じように止めるとマオは考えていた。

 しかし、結果はメガトンバットは指へと当たり、さして抵抗のないまま指をへし折った。


「なにするのよマオ!」


 カランという音と叫び声と共に少女の仮面が地面へと落ちた。痛みのあまり地面をのたうち回っていたために仮面が取れたのだ。


「あなたは……」


 仮面が取れたことにより露わになった少女の容姿にマオは驚いた。


「ふん、思い出したようね!この私を」


 真紅の瞳に痛みからか涙を浮かべながらその双眸でマオを睨みつける少女。だがマオは首を傾げていた。

 そんなマオの様子を見て少女はなんとなくだが嫌な予感を覚えた。


「ちょっと、あなたまさか……」

「どちらさまですか? 見た事がある気はするのですが……」

「やっぱり忘れてるのね! ギルドで話しかけてきた時に忘れてるような感じだったからそんな気がしてたのよ!」


 答えが予想できていたのか少女はドレスが汚れたままの状態でマオに詰め寄るようにして立ち上がると地団駄を踏む。

 足が地面に叩きつけられるたびに地面が揺れ、さらにはひび割れていく。


 そんな少女をマオは眺めていたわけなのだがやはりギルドで感じたような懐かしい感じがするのだ。


(どなたでしょう? 神殿の中にいたのであれば絶対に忘れないと思うのですが)


 マオが育った神殿にいた人物ならばさすがにマオも覚えていた。だがマオの記憶の中には目の前にいる少女のような人物が神殿にいた記憶はない。


「私よ! オレスティナよ!」

「オレスティナ?」


 いい加減に名前を思い出して欲しいからか少女、オレスティナは自らの名前を告げる。

 しかし、それでもマオは思い出さないのか腕を組み首を傾げていた。


「魔王よ! 魔王オレスティナよ! あんたと昔、神殿や森で一緒に遊んだ幼馴染様よ!」

「あ、おーちゃんですね? 思い出しました」


 ようやく思い出したらしいマオは手を叩き納得したようだった。


「おーちゃん久しぶりですね。まだその自称魔王設定は続けてるんですか?」

「設定じゃないわよ! 私はちゃんと魔王なんだから! あとちゃんと覚えてますみたいに笑ってるんじゃないわよ!」

「もういい年なんですからその危ない子みたいな設定やめたほうがいいですよ?」

「話を聞きなさいよ!」


 オレスティナが喚くがマオはニコニコと笑いながら自分より頭一つ分は小さいオレスティナの頭を撫でる。


「ところでおーちゃん、なんでこんな所に? なんかあれと冒険者登録したらしいじゃないですか」


 アレという部分でオレスティナにボコボコに凹まされている黒騎士へとマオは視線を向ける。


「そんなの人間側の戦力を調べるために決まってるじゃない! べ、別にマオの事が気になって追いかけてきたわけじゃないんだから!」


 頰を赤く染めながらオレスティナは顔を背けながら告げる。


「その痛い設定まだ続けるんですね」


 オレスティナのいう事が設定だと思っているマオは深々とため息をついた。


「そういうあんたはなんで冒険者なんてやってるのよ? 行く所がなかったら私のとこに来なさいって言ったでしょ?」


 忘れたの? とオレスティナは眉をひそめた。


「マオにも目的がありましたので。女神の愛を教えるという目的が」

「……あんたがまだ昔と同じように愛を教えてるのなら忠告するけどあれ、ただの暴力だからね?」

「ん? 痛みは愛に繋がりますよ?」

「相変わらずそこだけは会話が繋がらないわ」


 育ての親である神官長の修行という名のしごきに耐えた完成品であるマオに何を言っても無駄であると悟ったオレスティナはがっくりと肩を落とし、折れ曲がった自分の指に回復魔法を掛けるのであった。

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