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そこに慈悲はない

「な、なんですう⁉︎」


 マオが突然の爆発と共に吹き飛ばされていたのを見ていたエルレンティは手綱を引き、ペルーの足を止めさせた。それはセリムも同じで土煙が上がる先程までマオがペルーと共に走っていた地点を見ていた。


「なにか飛んできたぞ!」


 セリムが見ていた先には巨大な大穴とその中心に突き刺さる巨大な槍があった。

 突き刺さった槍は真っ黒な槍であったが不気味というわけではなく見事な装飾が施された芸術品と言われても頷けるほどの出来だった。


「お、お姉様は⁉︎」


 そんな槍よりエルレンティは消えたマオの方が心配であった。

 マオがただの槍の投擲如きでは死なないと確信はしている。だが姿が見えないが故に不安なのだ。


「いや、あいつは無事だろ?」

「え?」


 セリムが呆れたように声をあげると時を同じくしてマオが空高くから落下してくると片膝を突くように着地し、その衝撃で地面がひび割れていった。


 純白の神官服は至る所に穴が空き、ボロボロになっているのだがそれを着るマオの額には青筋を浮かべ佇んでいた。


「…… 誰です」

「え?」


 静かに、低い声でのマオの呟きにセリムは思わず聞き返し、そして体が無意識に震えた。


「だれが槍を投げてきたんですか」


 発している言葉の内容は確認である。だが、マオから発せられる気配を目の前で受けているセリムにとっては脅迫のように感じられた。

 セリムに理不尽ながらも叩きつけられている気配の正体は殺意。

 おおよそ女神に使える神官が持ったり発したりしてはいけない物だったりするのだがセリムにそれを咎める勇気などを求めるのは無理な話であるだろう。


「あ、あいつじゃないかな?」


 体が震える。そして震える声で指差したセリムの手もやっぱり恐怖で震えていた。

 そんなセリムには眼もくれず、マオは地面に突き刺さる槍を暫く睨んだ後に、槍が飛んできたであろう方向を睨みつけた。


「アイツが槍を投げたわけですね……」


 ゆらりと立ち上がったマオの視線の先には槍を投げた姿勢のままで固まった黒い鎧を着込んだ騎士が佇んでいた。

 それを視認したらしいマオは手に持っていた聖書の形を即座にメガトンバットへと切り替え、無言で歩き始めていた。


「絶対ぶっ飛ばします」


 マオは苛立っていた。

 自分が吹き飛ばされた事もそうだが、なにより食べる予定であったペルーが投げつけられた槍の衝撃により跡形もなく吹き飛んでしまったからだ。

 その怒りをぶつけるべくマオはメガトンバットを振り上げ、地面を砕き駆ける。

 一瞬にしてエルレンティやセリムを置き去りにするほどの最高速度に到達したマオはゆったりとした動作で背中の大剣へと手を伸ばす黒騎士へと迫り、ごく自然な動作でメガトンバットへと魔力を込め、さらには身体強化魔法を得物を握る腕のみに集中させると問答無用でメガトンバットを振り下ろした。


「食材を無駄にする者死すべし」


 そこに慈悲はない。

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