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失礼なことを言ってる自覚

「あぁ、観光したかったですぅ」


 帰りのペルーの上でエルレンティは嘆く。

 名残惜しそうに徐々に小さくなっていく王都を見ている様はとても悲しそうに見える。

 しかし、すでに王都を離れてから何度も呟かれる言葉に隣を並走しているマオはかなり嫌気がさしていた。


「だから王都にいてもいいと言ったではないですか」


 マオとしては勝手についてきているのはエルレンティなのだ。そしてマオはちゃんと選択権を与えた上で自分についてきたのはエルレンティなわけでぐちぐちと言われる筋合いはないのだ。


「そういえばお姉様、あの黒い鎧の方とはお知り合いだったのですぅ?」

「ああ、俺も気になった」

「意外と見てるんですね」

「お姉様が自分から話しかけようとするのは珍しいから覚えていただけです」


 なるほど、とマオは頷いた。

 確かにマオはあまり自分から人に話しかけようとすることは少ない。

 教会に行く時ならば別だが、他で話しかけるのはギルドでの食事の注文時やクエストを受ける時くらいだ。

 そこまで考えてマオはあることに気づいた。


「マオ、友達少なくないですか?」

『え、いたの?』


 マオの友達少ない発言にセリムとエルレンティはびっくりしたようにマオを見た。

 しかし、その驚いたような表情にマオは少しばかりイラっとした。


「なんですか、いたの?って。マオにも友達くらいいます」

「う、うそだろ…… あ、あれか? 友達の意味を間違えて覚えてるとか?」

「お、お姉様、友達ですよ? 私みたいな下僕じゃなくて友達ですよ?」

「あなた達、失礼なこと言ってる自覚ありますか?」


 無意識に聖書の形へ変えた神結晶へとマオは手を伸ばしたが、それが目に入った二人は慌てたように首を振った。

 しかし、マオとしては気になったのはエルレンティが下僕宣言を恍惚とした表情でしていたことだった。


(普通の人は下僕宣言で喜んだりしませんよね?)


 自分の常識がズレてるのかとマオは少しばかり不安になった。


「で、なんの話だっけ?」


 不穏な会話になりそうな気がしたのかセリムが話題を戻そうと試みた。


「だからお姉様に友達がいないって話です」


 しかし、エルレンティはそんな空気を無視した。エルレンティの空気の読まなさにセリムは額に青筋を浮かべ、睨んだ。


「空気読めよ! マオに友達なんていないんだからさ! 話題を変えようとした俺に合わせろよ!」

「何気に失礼ですからね!」


 大声と共に聖書がセリムへと投げつけられるがセリムは全く反応できていなかったのだが乗っていたペルーの方は気づいたのか「キュア!」と一声上げると僅かに速度を上げ聖書を軽々と躱したのであった。


「む」


 聖書が地面に突き刺さり土煙を上げるのを見たマオは僅かに眉をひそめるが鎖を引っ張り聖書を手元へと引き戻す。


「鳥のくせに……」

「キュア⁉︎」


 ボソリとマオが小さく呟いた一言にマオが乗るペルーが悲鳴のような小さな声を上げながらマオへと振り返る。

 その声はまるで「僕食べられる⁉︎」という本能からの叫びであった。

 ちなみにマオは知らないのだがペルーは乗り物として使われる以外に食用肉としても売られたりしている。走れなかったりするペルーは食べられるという悲しい現実であったりする。


「食べれるんでしょうか?」

「キュアキュア!」


 首を振って否定するペルーであったが、マオの頭の中に「どんな物でも焼いたら食べれる」というサバイバルを生業にしている人たちが唖然とするような考えがあった。

 といってもマオには死ぬほどの目(毒草や毒キノコなどを空腹のために手当たり次第に食べた)にあいながらも習得した解毒魔法があるために死にはしないがゆえの発想であるのだが。


「走れなくなればただの肉ですよね……」


 すでに殺す気になってしまっているマオが再び聖書を振りかぶり、そして、


「うん?」


 突然体に衝撃を感じたマオは空へと爆音と共に吹き飛んだ。

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