話し合おう
森の一角を消失させたマオ一行は逃げるようにして救出した冒険者を連れて王都へと入り、王都の冒険者ギルドへと向かった。
そこで助けた冒険者たちを引き渡し、一息ついたところでセリムとエルレンティは他の冒険者達の目がある中でマオを正座さしていた。
「マオは悪くありません」
あまりに目力が強かったがためにマオは渋々といった様子で指示には従った。そしてセリムがどこからか持ってきたボードのようなものには「私は悪いことをしました」と書かれており、マオはそれを首から下げるような状態になっていた。だがその顔には不満がありありと浮かんでいた。
「あんなことして悪いことしてないはないだろ!」
「いや、まぁお姉様ですし」
怒るセリムと呆れたというか諦めたような苦笑を浮かべた顔を見てマオは困惑する。
「人を助けたのに」
「そこは確かに神官ぽいけどな! だけど森を消しとばしたのはやり過ぎだ!」
「初めてやったから加減がよくわからなかったんです」
「言い訳になるか!」
正直に答えたのに怒られた事にマオは少しばりムッとする。
「そういうセリムさんはさぞ儲けたのではありませんか?」
そんなマオの不機嫌な気配を敏感に察知したのかエルレンティが話題を変えるように声を上げた。
「な、なんのことだ?」
どう見ても何かあったと言わんばかりにセリムは体を震わせる。
そんなセリムを見てエルレンティはニヤリと口元を歪めて嗤う。
「先程助けた冒険者さん達から謝礼を受け取ってましたよねぇ。それ、私達にも入りますよね?」
「おまえ、聞こえてたのか……」
「エルフですのでぇ〜」
苦虫を潰したような表情に対してエルレンティは自慢のエルフ耳をぴこぴこと動かしながら誇らしげに胸を張る。
「一人だけ報酬を受け取るとはいい度胸です」
明らかに怒気を含んだ声を上げながらマオがゆらりと立ち上がる。
先程までは多少は、そう、本当に少しくらいはマオは自分も悪いことをしたかなぁなどと思っていたので特に暴れるわけでもなく静かに説教を受けていたのだ。
しかし、マオはズルは許さない。
「ちゃ、ちゃんて分ける予定だったんだ!」
このままでは殴られる未来が容易く予想できたセリムは必死に言い訳をし、同じ未来を予測したエルレンティは音を立てずにセリムから離れ、安全地帯であるマオの後ろへと下がった。
「おま、エル! なに逃げてんだ!」
安全地帯に逃げたエルレンティを見てセリムは裏切ったと言わんばかりに叫ぶ。
そんなセリムをエルレンティは鼻で笑うだけで留めた。
「なに人と話ししてる最中に余所見してるんですか?」
なにせエルレンティが手を下さずとも最強の死刑執行人が拳を鳴らしてセリムの前に立っているのだから。
「ま、まてマオ、話し合おう!」
手を上げてセリムは制止を求めて平和的な解決を求めた。
「拳でですか?」
しかし、マオには通じなかった!
「ち、ちが……」
会話など全くする気がないくらいに怒っていたマオは問答無用!と言わんばかりに無表情で拳を振り上げ、セリムの腹へめり込ますべく放った。




