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エルフは森では使える子

「なんか騒がしいですわね」

「そうですね」


 いつも暗い帰らずの森とは違い明るい森の中をトロールを探していると野生の獣のような勘から森の騒がしさに気づいたマオが周りを見渡す。

 エルレンティは高性能なエルフ耳が何かを捉えたのかピクピクと動かしていた。


「全然わからん」


 この中で一番普通の人であるセリムはというと森の中の騒がしさに全く気づいていなかった。


「動物たちがいないじゃないですか」

「こんなに何かがぶつかってる音がしてるのに?」


 マオとエルレンティが別の観点から森の異常に気づいた事を知ったセリムは今度は言われたことに注意しながら周囲へと意識を向ける。


「…… たしかに動物の気配がしないな。だが何も聞こえないぞ」


 マオの言う通り周りには動物の気配が感じられなかった。相変わらずなにも聞こえないが。


 動物というのが賢いというか勘が効くというのはセリムも知っていた。自分より強い物の気配を感じ取り姿を消すことがあるということも。


「なんかいるってことか」


 警戒のレベルを上げるかのようにセリムは自然と腰の包丁へと手を伸ばしていた。エルレンティも同じように警戒してか、いくつかの鉄屑を手に握りしめ、いつでも投げつけれるような姿勢を取っていた。

 そんなパーティが警戒をしている中、マオだけが特に武器を構えるでもなく普通に歩いていた。


「多分、大型のモンスターが出たんだと思います」


 エルレンティが屈み、地面を触りながらそう報告する。


「そうなんですか?」

「はい、地面のあちこちで草が大きな範囲で潰れてます。これは多分モンスターの足跡です。それに人の足跡もありますし誰か追われてるのかもしれません」


 エルレンティが指差した場所をマオも見るが草が潰れてるだの足跡というものは見えなかった。


(エルフの技能なんでしょうか?)


 そう考えるマオであった。

 マオの考える通り、森で生きるエルフにとっては森での痕跡を見つけることなど朝飯前なのである。


「てことは誰か襲われてるのか!」

「わかりませんねぇ。足跡の痕跡は出来てからすぐのものですけど追われてる人たちはもう逃げ切れたかもしれません。死んでる可能性もあります。もしくは……」


 言葉を続けようとしたエルレンティを遮るようにして森の奥から爆音が響き、次いで咆哮が森の木々を震わした。


「もしくは戦闘中かですぅ」


 耳を抑えながらエルレンティは予測を告げる。


「助けに向かうぞ!」


 包丁とフライパンを引き抜いたセリムが一番に森の奥へと駆け出す。

 その後を追うようにしてマオとエルレンティも駆け出すのであった。


「エルレンティって使えない子だと思ってましたが初めて役に立ってる気がします」

「お姉様! 流石に酷くありませんか⁉︎」


 マオがボソリと呟いた本音だったがエルレンティのエルフの耳はそれを捉え涙を浮かべながら振り返った。

 そうして一同は一部緊張感がないまま襲われているかもしれない人の元に急ぐのであった。

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