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森の中では

他の冒険者のお話

「に、にげろ!」

「早く早く!」


 明るい森の中を四人の男女が走っていた。よく見ると彼らが冒険者の証たるアクセサリーを身につけているのがわかるのだがその場には必死に逃げようとしている彼らとそれを追う追跡者の姿しか見えないために意味はない。

 一応述べるのであれば彼らの冒険者としてのランクは青。一端の冒険者として数えられるランクではあるのだ。


 そんな彼らは今傷だらけになりながらの敗走を行なっているところであった。


「くそ! トロールの群れなんて有りかよ」


 四人のうちの一人、大剣を背負った戦士らしき男が忌々しげに呟く。

 彼らの受けた依頼はトロールの討伐などではなく、薬草の採取であった。

 その薬草の群生地というのが偶々トロールの巣の近くにあり、それを採取している最中にトロールの見回りと遭遇してしまったのが事の始まりであった。


 ただ遭遇しただけならばよかった。その場をすぐに離れればトロールに追われることなく離脱することができたかもしれない。

 だが、パーティを組んでいた神官の少女が甲高い悲鳴を上げてしまったのが問題だった。

 森の中に響き渡った悲鳴はトロールの巣まで届き、巣で寛いでいたトロールが腰を上げて獲物を追うのに充分な理由であった。


「まだ追ってきてる」


 パーティの一番後ろを駆ける魔法使いである少女が息を切らしながらも後ろを振り返ると棍棒やら剣やらを振り回し、障害物になりそうな木をなぎ倒しながら一直線にパーティに向かってきているのが見て取れた。


「こうなりゃやるしかねえ!」


 騎士の青年が足を止め、迫るトロールを迎えるべく盾を構えると、戦士の青年も同様に足を止めて大剣を構えた。


「追ってきてるのは三体だ。ぶっ倒して逃げる!」

「そうね」


 それに同意するように魔法使いの少女は前衛の二人の後ろに付くと杖を構え魔法を詠唱し始める。神官の少女も涙を浮かべながらも同じように魔法の詠唱を開始していた。


「いくぞ!」

「女神の慈悲を、ブースト!」


 身体強化魔法を神官の少女が前衛の二人へと掛ける。淡い光が二人の体を包み、魔法が掛かった事を確認した二人が大地を蹴り飛び出した。


「オラァァァァ!」

「ガァァァァァ!」


 トロールが振り下ろした棍棒を騎士の青年が盾にて受け止め、それを弾き飛ばす。弾き飛ばされたことによりトロールが後ろへとたたらを踏んだ瞬間を見逃さずに戦士が大剣をガラ空きになった胴へと滑り込ませ振り抜く。

 それによりトロールの体の上下はあっさりと別れ、上半身は音を立てて地に落ちた。


「フレイムアロー!」


 大剣を振り抜いたままの姿勢で硬直していた戦士の横から新たなトロールが剣を振りかぶっていたのだがそれは魔法使いが唱えた炎の魔法が顔面に直撃したことにより中断を余儀なくされ顔を庇いながら後ろへと下がる


「ほ、ホーリーバインド」


 そんな後ろへと下がったトロールの足元から神官が唱えた魔法ホーリーバインドが襲いかかる。地面から突然現れた鎖がトロールの足元へと纏わりつき、その場に拘束する。


「せぇぇい!」


 身動きが取れないトロールに対して硬直が解けた戦士が再度、大剣を振るい首を刎ねた。


「いけるぞ! あと一匹だ!」


 トロールの二体を地面に伏させた戦士と騎士が声を上げる。

 それを聞き、魔法使いと神官も士気を高めた。


 だが彼らは根本的な事を見落としていた。


 トロールは体を半分に割った程度では死なない。

 これはトロールの討伐などを受ける際に調べることの基本である。いや、モンスターの討伐に出向く際にはそのモンスターがどのような物なのかという下調べは当たり前の事なのだ。


 しかし、彼らは今回の依頼でトロールの討伐を受けたわけではない。あくまでも薬草の採取のであった。しかし、その薬草がトロールの巣の近くにあるという事を調べていたのであればトロールの事を多少でも調べていればよかったのだ。


 だから彼らは知らなかったのだ。

 トロールという名前のモンスターは知っていても。

 トロールの再生能力を。

 そして体や首を両断したくらいではトロールは死なないという事を。


 それから数分後に彼らは倒したはずのトロールが起き上がり襲われる事となった。

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