あれで殴られたら絶対に死ぬ
「お姉様の武器を見て悲鳴を上げて失神するなんて失礼な方でした!」
すでに場所はオフタクの街から移り、王都方面にある森の近くに来ていた。
いつもマオ達が狩場にしている帰らずの森の入り口付近にはトロールは出てこず、かなり奥に行かないと出会わないから場所を変えたのであった。
無論、トロールだけを相手にするならば帰らずの森に行っても良かったのだが帰らずの森は複数のモンスターが縄張り争いを常に繰り返しており、日によってモンスターの現れる場所が変わることもあり下手をすれば複数のモンスターに囲まれてしまうこともあるのだ。
そのリスクを回避するためにマオ達は王都方面の森に黄色の柔らかな羽を生やした鳥、ペルーという騎乗鳥に乗ってやってきたのだ。
このペルーと呼ばれる鳥は鳥の癖に飛ばない。しかし、足もそんなに長くはないのだが異常なまでに足を高速で動かすので恐ろしい程の速さで走ることができるのだ。
そのくせ人懐っこく、人の側にいる事を望むのらしく人を乗せたり、荷物を運ぶのを手伝ったりするのだ。
そんなペルーに乗ってきたマオはペルーから降りるとポケットから取り出したお菓子を渡すとペルー達は喜んで食べ始めた。
「こんなに大きいのに食費がかからないなんていいですね」
「おまえとは大違いだな」
お菓子食べている様子を見て小さく呟いた言葉にセリムが笑いながら茶々を入れる。
大きな体の割にペルーはそんなに食べない。なにより1日にパンを一つ食べれば充分に活動できるのだ。
「お姉様の燃費の悪さはあの筋力のせいでしょ?」
「まあ、確かにあれだけの力だもんな。食べてる物を消費して力を出してると考えたら普通か」
などと勝手な事をいう二人を他所にマオは新たなる武器を両手で構えて素振りを行う。
マオが新たな武器を振る度に風が唸り、それなりに離れた位置にいるはずのセリムとエルレンティの髪がその風圧ではためくのだ。
「ちょっと森に入る前に感触掴みたいので少し待ってもらえませんか?」
「あ、ああ」
再び新たな武器の素振りを再開したマオは今度は無心で振り続ける。
その度に風がセリムとエルレンティに叩きつけられており、顔を青くしていた。
(あれで殴られたら絶対に死ぬ!)
それが二人でマオの素振りを見ていて出した結論であった。
しばらくマオが素振りをし、手応えを掴んだような感触を得た頃、近くの草むらからそんな彼等の姿を様子見しているモンスターの姿があった。




