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そんな格好でどこにいく気だ

「お前達、そんな格好でどこに行く気だ……」


 セリム、エルレンティ、マオの三人は討伐クエストの準備を終え、オフタクの街から出ようとした所で門番に声をかけられた。

 門番は怪しい連中が入ってきたりするのが仕事でもあるのだが、オフタクの街は初心者の街。そのため、冒険者が街から外に行く際にもあまりにも酷い装備ならば止める権限を与えられたりしているのだ。


「なにって討伐クエストですけどぉ?」


 エルレンティが何を言ってるの? と言わんばかりに顔をしかめて答えた。その回答に門番の男は頭痛を覚えたのか頭を抑える様な素振りを見せた。


「あー、一応聞くがお前の武器はなんだ?」


 そう言い門番が視線を向けたのは腕を組んで待っていたセリムであった。


「見たとおりだが?」

「俺の目がおかしくなければフライパンと巨大な包丁に見えるんだが……」


 セリムの腰に下がっているのはマオの聖書によって砕かれた二振りの剣ではなく門番が告げたとおりフライパンとロングソード程の長さがある刃の大きな包丁だった。


「料理人か?」

「ちげえよ! 冒険者だよ!」

「……」

「お金がないんですよねぇ、ぷぷぷ」


 エルレンティが愉快そうに口元を隠しながら笑う。いつもなら言い返すセリムであるが今回は言い返さない。肩を震わせて耐えていた。

 というのもセリムがお金がない理由というのもギルドの修繕費の半分を請求されたからである。

 請求のされ方もギルドで受けるクエスト報酬から引かれることになっているためセリムに入るクエスト報酬は微々たるものであるためお金がないのだ。


 普通ならばセリムを笑っているエルレンティも同じように暴れており同様に請求されるはずだったのだが、


「異議です! 異議を申し立てるですぅ!」


 とエルレンティは抗議。

 結果、セリムとエルレンティが決闘を行う事となり負けた方が払うという話になった。

 結果は武器のないセリムに魔力に物を言わせた身体強化魔法を纏ったエルレンティの圧勝であり、セリムは二倍払う羽目となったのだ。


「いや、笑ってるお前も一体なんだそりゃ……」

「何ってカゴですが?」


 笑っていたエルレンティだったが疑惑の目が自分に向けられたことにより笑うのを止めると、背負っているそれなりに大きなカゴを見せつける様に背後を向いた。

 向けられたカゴの中を門番が覗き込むとそこには鉄くずやら折れた剣やらとおおよそ武器には使えなさそうな物が大量に入っていた。


「……ゴミ漁りでもしたのか?」

「失敬な! エルフの武器ですよ!」


 嘘だろ…… と門番が小さく呟いた。

 エルフの武器は弓だとばかり思っていたからだ。門番は信じられない物を見るかの様にエルレンティをマジマジと見直したのだが、エルレンティの瞳は本気と書いてマジと読むくらいに真面目な輝きだった。


「……おまえ、ひぃ⁉︎ マオさん⁉︎」

「はい?」


 名前を呼ばれたためにマオは一応返事をしたのだが

 諦めたようなゲンナリとした様子で門番は最後にマオを見たのだが、最後の神官がマオであることに気づき顔色を悪くしながら悲鳴をあげた。

 すでに暴れる狂神官マオの名前はオフタクで冒険者と関わりのある職業に就いている人の間では恐怖の代名詞となりつつあったのだ。

 しかし、怯えながらも前の二人の装備が装備であったため、マオだから問題ないという考えが頭によぎりながらも門番は一応の装備の確認を行っていく。


「変わりないな……」


 マオは一見代わり映えはしていなかった。そう一目見ただけでは分からなかった。

 しかし、全身を上から下に見ていき、いつも肩から鎖で掛けている鈍器たる聖書がないことに気付き、続いて聖書の替わりにぶら下がっているのが禍々しい物である事に気付くなり目を見開いた。再び悲鳴をあげる事となったのだった。

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