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拉致られる

「久しぶりの人の気配です」


 汚れた格好ではあるがオフタクの街を歩いているマオは浮かれていた。

 なにせ一ヶ月近く森の中を彷徨っていたのだ。人の気配より獣やモンスターの方に馴染みが深くなっていたくらいだ。

 スキップをするようにして木で作られた建物が多い街の中を歩いていたマオではあるがぐーとお腹が鳴ったので歩みを止めるとお腹を抑えた。


「まずはお腹を満たさなければ!」


 グッと拳を握るとマオは再び歩みを再開する。


「おう、マオちゃん。しばらく見なかったな!」

「しばらく森でサバイバルしてましたので」

「あらマオちゃん、神殿の買い出しかしら?」

「いえいえおばさん、つい先日、いや、先月? から神官見習いを卒業したのですよ。ですから神官です」


 そんなマオの姿を見て次々と街の人たちが声をかけていた。

 神官見習いの時、いや孤児として神殿に置いていかれ育てられた時からちょくちょく他の神官と共に買い出しにオフタクには来ていたのでこの街の住人もまたマオの事を子供の頃から知っているのだ。


「あ、まおだー」

「きたなー」

「失礼な。マオだって汚れたくて汚れたのではありません」


 からかうようにマオに纏わりついてくる子供達の物言いにマオは少しばかりムッとしたような顔をする。


「まあまあまあ! なんて汚れてるんだい!」

「あ、テテおばさん」


 慣れ親しんだ声の聞こえる方へと視線を向けると恰幅の非常によい女性が大きな足音を立てながらマオに向かって歩いてきているところだった。


 女性、テテが歩くたびに地面が揺れる。

 別にテテが太っているというわけではない。単純にデカイ。縦と横にデカイのだ。

 高さだけでもマオの二倍はある。


「相変わらずデッカいですね。テテおばさん」

「わたしゃ巨人族の中でも小柄なほうさ。そして何より人間族がちっちぇのさ」


 カラカラとテテが笑う。それだけで建物が揺れてたりしているのだが、周りの街の人たちにはいつもの事なのか気にせずに往来を続けていた。


「とりあえずはそんな汚れたままなのは私が許さないよ」

「えー」


 ヒョイっと軽々とテテはマオを摘み上げるようにして持ち上げると脇に抱えて音を立てながら歩き出した。


「あの、マオは一応女の子なんですけど?」

「たがだか十年位しか生きてない人族なんて子供のようなもんさね」


 荷物のように抱えられたマオは抗議の声を上げるのだがテテはカラカラと笑うだけで全く話を聞く気はない。


 巨人族の寿命は長い。

 人間が七十まで生きれば長寿と言われるこの世界、巨人族の寿命は千を超える。

 そんな長寿な種族である巨人のテテから見れば今年でおそらく十三か十四歳位にはなるであろうマオなど生まれたばかりの子供とほぼ変わらないのだ。


「あのとりあえずマオ的にお腹が減ったから先に食事をしたいんですけど……」

「綺麗にしてからだよ!」


 お腹が鳴り、身体が食べ物を求めているのを察したマオが抱えられたままの状態で、その提案をしたのだがテテは即座にそれを却下。


 結局マオはテテに抱えられたまま連行されていくのであった。


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