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お姉様なら楽勝です

「最近凄い奴がいるって聞いたか?」

「凄い奴ですか?」


 修繕されつつある冒険者ギルド、その一角で食事が取れることを知ったマオは以前と同じように食事をとっていた。

 その同じテーブルに同席していたセリムの話にこちらも当たり前のように同席しているエルレンティが相槌をうっていた。

 マオは全く反応を示さずにギルドの本日のオススメを口にしているのだが、食事中にリアクションがないのはいつもの事なのでセリムは話を続ける。


「ああ、黒い鎧着込んだ大男みたいな奴とちびっ子の二人組らしい」

「別に子供連れの冒険者なんて珍しくないんじゃないですぅ?」

「まあな」


 冒険者は訳ありの人がなることが多い。子供を連れてクエストを受ける人がいるのも珍しくない話なのだ。


「ちびっ子の方は多分守護対象なんだろうけど黒騎士のほうが凄いらしいぜ? トロールを一撃で両断だとかオーガの群れを壊滅させたとか色々話が上がってる」

「んー、それってお姉様でもできませんか?」


 食事に夢中で会話に一切参加しないマオへとエルレンティは誇らしげに視線を向ける。


「いや、なんでお前が嬉しそうなんだよ。オーガの群れならマオでもいけるだろうけどトロールは無理だろ」


 トロール。身体は小さくても二メートルは越す巨大なモンスターである。力も強く、巨大であるにも関わらず意外と素早い。

 冒険者が相対するならば一人で戦うのは絶対に避けるような相手である。

 しかし、トロールと戦う上で厄介なのはその人間離れした身体能力ではなく、再生能力であった。

 頭が吹き飛んでも胸に穴が開こうと僅かな間で再生するのだ。

 倒す方法は再生能力を上回る一撃で叩き潰す、もしくは再生能力がなくなるまで倒すしかないのだ。


「お姉様なら楽勝です!」

「まあ、魔力を纏わせた武器で攻撃すれば再生力は落ちるからな。で、今日の依頼なんだが」


 話を切り上げる様にセリムはテーブルの上にクエストの書かれた用紙を置く。

 エルレンティはその用紙を手に取り目を通す。

 その用紙に書かれている内容はトロール五体の討伐と書かれていた。


「トロールの肉が必要なんですねぇ」


 依頼内容をきっちりと読んでいたエルレンティが内容を把握し口にするとセリムは「ああ」と頷いた。


「トロールの肉は上手いらしいからな。王都の方ではよく食べられてるらしい」


 それは王都の冒険者なら難なくトロールを撃破出来るということである。

 逆に言えば初心者の街であるオフタクの街ではトロールを撃破できる人材は少ないとも言えるのだ。


「トロールを撃破して俺たちのパーティとしての実績も積める。しかも依頼もあるから金も入る。まさにお得な依頼だ」

「なるほど〜」


 納得したのかエルレンティは用紙をテーブルへと戻し、食事が終わったらしいマオを見る。

 マオも食事を終えたことにより会話に参加する気になったのかエルレンティが置いたクエスト用紙を手に取り、眼を通していた。


「美味な肉!」


 美味しい食べ物に目がないマオが瞳を輝かせていることにセリムは作戦の成功を確信する。

 神官であるマオ(周りからはなんちゃって神官だと思われている)は討伐系の依頼をパーティで受けても見ていることが多い。それはエルレンティとセリムの二人でも充分だと判断しているのもあるのだが、一応神官である身なので無闇な殺しはしないのである。無闇矢鱈な暴力は振るったりするのだがそれはまた別の話である。


 そんなマオであるが食べ物が絡むと瞳を輝かせて全力で取り組む姿をセリムは見ていたため、今回の依頼を持ってきたのだ。


「マオも問題はなさそうだし、今回はこの依頼を受けるからな」

「はーい」

「余分に狩ればマオの取り分が増えますね」


 元気に返事をするエルレンティと不気味に微笑むマオを見てセリムは顔を引きつらせて笑う。


「お前なんで冒険者になったんだよ……」

「女神様の愛を広めるため、そして探し物のためですよ?」

「探し物?」

「はい」


 探し物が何か気になったセリムであったが軽やかな足取りで出口へと向かうマオに尋ねることは出来ず、そうして各自は依頼に向けての準備をするために一度解散するのであった。

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