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ざわざわするのです

「なにか危ない感じがしましたが?」


 ヒールフリングが必殺の一撃とばかりに放った不可視の風の刃を握り潰したマオは何かを掴んだという感触はあったのだがそれを何かまでは認識していなかった。

 そのため、先程のマオの心境はというと、「何かが飛んできてる気がする。多分掴める」という非常に曖昧なものであった。


「えぇぇぇ⁉︎ お姉様どうやったんですかぁぁぁぁ⁉︎」


 そんなマオを見て一番興奮していたのはエルレンティであった。なにせ彼女の瞳にはヒールフリングが風の刃を放ったことも、それをマオがたやすく握り潰した事も辛うじてだが見えていたのだから。


 通常、精霊魔法も魔法もどちらも防ぐ事はできても潰す、なんてことは出来ない。

 理論上は可能であるという事も言われてはいるのだが、未だそんな事をした人物はいない。

 普通なら避ける。

 だが、精霊魔法は精霊を見ることができる瞳を持たないと見ることすら出来ないものであり、そのため精霊魔法は必殺となり得るのだが……


「どうやってと言われましても……」


 その必殺の一撃を軽々と握り潰した神官はというとエルフの少女に肩を掴まれ前後に振られて顔を青くしていた。

 しばらくはされるがままにされていたマオであったのだがイラついたのか両肩を掴むエルレンティの腕を掴み、容赦なくかつ躊躇いなく腕を握り潰そうと力を込めようとしたのだが、そこは何かを察したらしいエルレンティはマオの手を振りほどき回避した。


「私の手を潰そうとしました?」

「勘がいいですね」


 忌々しそうにマオはキョトンとした顔のエルレンティを睨みつけていた。


「先程も言いましたが、マオはなんとなく危ない感じがしたから潰しただけです」

「うぞぢけ! ぜいれいまぼうだぞ!」


 血を流しながらヒールフリングが噛み付いているのだが、そんな彼に対してもマオは困ったような表情を浮かべるのみだ。

 そんな彼女の表情を見てセリムとエルレンティは「ああ、無自覚でやってるんだなぁ」と納得していた。なんだかんだでマオの神官としての理不尽というか規格外なスペックを目の当たりにしている二人である。納得したというより毒されていると言った方が正しいかもしれないが。


「この!」

(まだやる気ですぅ?)


 血を滴らせながらも精霊魔法を使いマオへと攻撃をしようとするヒールフリングを見てエルレンティは心の中で僅かに評価を上げる。

 普通ならば頼みの攻撃を看破された時点で心が折れ諦めたりするだろう。だが諦めずに攻撃を繰り出したことを自分ならできないと理解しているエルレンティは評価したのだ。


(まあ、無駄ですけど)


 エルレンティが口元を緩めて笑うのとマオが再び無造作にヒールフリングへと近づいていくのはほぼ同時だった。


「だから危ない感じがするのでやめてください」

「ひぎゃぁぁ!」


 近づき、ヒールフリングの顔へと蹴りが繰り出され、ヒールフリングはまた地面を転がった。


「あなたが何かをしようとするとこう、ザワザワするのです」

「ば、ばけものめ」


 さっきよりも出血量が増えた口元を押さえたヒールフリングが怯えたような眼でマオを見ていたのだがマオはそれをため息をつくだけで流した。


「マオは普通の人間ですよ?」

『それはない(ですぅ)』


 あっさりとマオの言葉はセリムとエルレンティの二人に否定されたのであった。

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