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一言で言うなら

 喧騒が絶えず鳴り止まない冒険者ギルド。

 そんな場所でマオとそれにくっつくようにしてエルレンティは食事を取っていた。

 基本的にマオは静かに食事をするタイプである。この静かにというのはあくまで食事中にマオが喋らないだけで他の面々が騒がしくても別段問題ない。……食事の邪魔さえしなければだが


「そういえば、あなたをセリムにちゃんと紹介していないですよね?」

「え、あ、そうですね」


 食事の手を止め、食事中であるにも関わらずマオが珍しく呟いた。

 それを同じように無言で野菜を食べていたエルレンティは驚きながらも頷いた。


「あなたも投石や投擲で遠距離攻撃ができるようになりましたし、セリムの要望にもそうはずですよね」


 マオも一応はパーティメンバーであるセリムの事を多少は気にしていたのであった。

 というのもギルドの中に入ってくると嫌でも顰めっ面のセリムの姿が目に入り、次いで周りの冒険者達から「なんとかしてくれ」という鬱陶しい視線を向けられて煩わしかったからだ。


「あなたを入れればセリムも満足でしょうし」

「お姉様!」


 マオの言葉にエルレンティが瞳を潤まして喜びの表情を露わにする。


「お姉様はやめてください」

「お姉様はお姉様です」


 あなたのほうが年上ですよね? とマオは小さく呟いたのだが地獄耳であるエルフの耳は今回は機能せず、只々、喜んでいるだけのようであった。


 エルレンティがマオをお姉様と呼ぶのはどうやら聖書で頭を叩きすぎた時にマオに感じていた恐怖が崇拝にすり替わっているだけなのだが、それを行った本人は知る由もなかった。


「よお、マオ」


 そんな風にマオがエルレンティをセリムにパーティメンバーとして勧めようと考えていると不意に声をかけられた。その声の主を確認すべくマオが声が聞こえた方へと向く。

 するとそこには今まさに話題にしていたセリムの姿があった。


「あら、セリム丁度良かったわ」

「マオ、丁度良かったぜ」


 二人同時に同じセリフを呟き、


「新しいパーティメンバーの弓兵だ」

「新しいメンバーのエルレンティよ」


 二人同時に別々の人物を紹介したのであった。

 そして紹介された二人はというと、


()あなたは(きさまは)!』


 二人もまた紹介された人物を見て驚愕を露わにし、さらには露骨に警戒し、セリムの紹介した弓兵の男は弓を構え、エルレンティはテーブルのナイフをいつでも投げれるように構えた。

 一瞬にして室内は緊張が張り詰めた空間へと早変わりし、その場にいる察しのいい冒険者やギルドの職員は巻き添えを食わないように退避を開始していた。


「え、知り合いですか?」


 そんな緊張の張り詰めた空気など無視するようにマオは自分の感じた疑問を飄々と投げかけるのであった。


「こいつはヒーリフルング。里で私をいじめてきたエルフの一人です!」


 ナイフを構えたエルレンティが恨みのこもった瞳で男のエルフ、ヒーリフルングを睨みつけた。そんなエルレンティの視線を真正面から受け止めたヒーリフルングは鼻で笑う。


「ふん、エルフの癖に弓もまともに使えん、しかも精霊も見ることができん落第者がなにを抜かしている」

「なんですかぁ!」


 ヒーリフルングの言葉にエルレンティは怒りを露わにするがヒーリフルングは余裕の笑みを崩さない。


「ふん、悔しかったら俺に勝ってみるんだな落ちこぼれ。まあ、弓すら使えんお前に里で一番の弓の技量を持つ俺が負けるわけないがな」

「きぃぃぃ!」


 言い合いを続ける二人を呆然と見ていたマオであったがセリムの服の裾を引っ張り声を小さくして話しかけた。


「セリムさん、あの方なんですの?」

「なんか最近森から出てきたエルフらしい。冒険者の登録もしたのは最近らしくてメンバー探してるらしかったからさ。それよりお前の連れてる奴は? 前に一緒にスケルトンに追われてエルレンティだっけ? どういう関係だよ」

「関係……」


 セリムに言われてマオはエルレンティとの関係を考えた。


 成り行きでモンスターに追われているところを助けて、修行さして、力を覚醒さして、お姉様と呼ばれている。


 しばらくそんな関係をなんというんだろうとマオはしばらく硬直したまま考えていた。やがて答えが出たのか手を叩き、


「いろいろあって一言で言うなら弟子?」


 そう結論を出したのであった。

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