神官長はあきらめた
ダンジョン、それはモンスターなどが集まったり、魔石、魔力などがなんらかの偶然により発生するものである。
ダンジョンには様々なタイプがあり、建物のようなものもあれば洞窟のような物もあれば自然物のような形のものもある。
「さて、教育開始です」
「待ってください! なんなんですかここ!」
マオにより引き摺られるようにして連れてこられ、放り投げられたエルレンティは怯えたように体を鎖で縛られたままの状態のままで震わせながら叫ぶ。
現在マオとエルレンティがいる場所。
それはオフタクの近くに存在するダンジョンであった。
いや、オフタクの近くというよりはプレンティ神殿の真横というべきであろう。
プレンティ神殿の横にはダンジョンがある。それは公然の事実である。
このダンジョンはプレンティ神殿の神官たちが戦い方を覚えるために使用したり。技量を高めるために使っているのだ。
そのため、申請さえすれば誰でも使用はできるのだ。
「なあ、なんで俺まで連れてこられたんだ?」
悲鳴を上げるエルレンティの横で何故か同じように鎖で縛られたままの状態で転がされているセリムの姿があった。
「? マオが一人で神殿まで帰れるわけないじゃないですか」
「いや、俺が聞きたいのはそこじゃない」
意外な事にマオは自分が方向音痴であるという事を自覚していた。
マオはエルレンティを教育し直すということを考えついたその日の内に未だパーティメンバー集めをしていたセリムを鎖で拘束、そのままプレンティ神殿への道案内をさせたのだ。
「あなたは、街に出てしばらく経ったから成長したかと思ったらいきなり人を縛ってダンジョンにに入りたいんですと何なのです……」
セリムを見下ろすマオの横に立っているのは顔を顰め、さらに頭を抱えているプレンティの神官長だった。
「神官長、マオはこのエルフを教育するのです」
「人を指さすのはやめなさい。はぁ、あなたがやることはロクでもないのですから」
「ははは、神官長、ジョークですか? マオはいつも皆のためを思ってやってるんですよ?」
「程々にするのですよ?」
深々と諦めたようなため息をついた神官長は一応釘のようなものを指すとすぐに踵を返してダンジョンの外へと姿を消した。
「ちょっ⁉︎ 待ってください! 私は教育なんてされたくないんですけどぉぉ!」
エルレンティが神官長が去っていくのを見て悲鳴のような声を上げる。
「さ、行きますよ」
エルレンティを縛る鎖を片手にマオはダンジョンの奥へと意気揚々と向かい歩き出した。エルレンティを引き摺りながら。
「やぁぁぁ! 行きたくなぁイィィ!」
「だからなんで俺まで⁉︎」
セリムも一緒に。
必死に体をくねらして抵抗するエルレンティであったがマオの見かけによらない筋力の前では抵抗も虚しく、引き摺られていくのであった。




