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お腹がいっぱいになるとよく忘れる

「うう、武器は無くなるしどうやって依頼受けたらいいんだよ」


 お茶を飲むマオの横でメソメソと泣きながら少年が項垂れていた。

 結局、彼は売り払われた自分の剣を冒険者から買い戻すことはできなかったようだ。


 そんな少年をなんかメソメソして男らしくないなぁ、等と陥れた本人であるマオは考えていたのだが顔には出さない。

 むしろ関心は今飲んでいるお茶が美味しいことに向けられていた。

 そう考えたのはあくまでも横で呪詛のようにブツブツと呟く少年の声が聞こえたからに過ぎない。


(しかし、聞こえたからにはなんとかしてあげなければいけませんね。だってマオは神官、迷える子羊を導くのは神官の義務です!)


 陥れた側の人間がどの口で言うのかという話なのだがマオは本気だった。


「お金なら貸しましょうか? ちゃんと利子は頂きますが」


 マオはとりあえずは世の中の八割くらいは解決できそうなお金の提供を手に金貨と銀貨が入った皮袋を乗せ提案してみる。


「俺の剣売って得た金だろが!」


 少年はあっさりとそれを拒否した。

 マオはそれに首を傾げて思案を再開する。どうやら少年の望む解決法は残りの二割に分類する物らしい。


「そんなに利子はつけませんよ?」

「利子の問題じゃねえんだよ!」


 ならなんの問題なんだ、とマオはさらに困惑する。

 とりあえずこの子羊は面倒だなぁと判断したマオはまたお茶を味わう事に集中する。


「仕方ない。こうなったら仕事に行くぞ。予備のナイフはあるからそれで軽い依頼をこなして武器を買わなきゃだめだ」

「そうですか」


 なにやら決意を固めた様子な少年へとマオはおざなりな言葉を返す。

 しかし、マオがカップをテーブルに置いたタイミングを見計らったかのように神官服の首元を掴まれる。


「え?」


 驚いた声を上げたマオだが、そんなマオを無視して少年はマオは引き摺るようにして出口に向かって歩を進めている。


「お前も来いよ! 食べた分はきっちり働いてもらうからな!」

「あれは奢りでしょう?」

「人の武器を売り払っておいて奢りもなにもあるか! というかお前何しにきたんだよ!」


 怒鳴り散らす少年の言葉にマオは目を大きく見開き、思い出したかのように手を叩いた。


「そうですよ! マオは食事のためだけにここにきたわけじゃないんですよ! 神官の修行の為に冒険者の登録に来たのですよ!」


「「「今更かよ!」」」


 店にいる全員が一斉に叫んだ。

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