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治療師の弟子  作者: 鈴木あきら
第1章 新しい人生
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第9話 嵐の足跡

俺は始めの魔法授業で、一度発生させた事象はそれにイメージし易い言葉を付け、唱える事によって、素早く事象を発生させる事ができると習った。

その言葉は基本的に頭の中で唱える。

口で唱えたら、敵に何の事象を起こすかバレてしまうからだ。


また、その言葉は日常的に使う言葉ではいけない。

怒りなど、感情が大きく動いた時の言葉は魔力を帯びる事がある。

そういった時に日常的な言葉を魔法で使っていると、誤って魔法を使ってしまう事があるらしい。よって、俺は魔法で使う言葉を英語にしている。



■□■



ーーー『風の剣(ウィンドソード)


アトリーの剣が届かない距離で姿勢を低くした俺は、風を纏いリーチが長くなった木の短剣を横に振る。


「おっと。」


少し驚いた様だが、アッサリと攻撃を防がれる。

しかし風の剣切ったせいで、アトリーの木の長剣は真っ二つになる。

すかさず、俺はアトリーの懐に入り


(ライト)


目を晦ませる。

そこから身体強化をした足で背後に回り込むと同時に上に跳び、アトリーの首に短剣を振る。

よし、決まっtーーー


ガンッ


木と木がぶつかる音が聞こえる。

アトリーがニヤリと笑い、俺の攻撃を防いでいる。


あっ…これは負けるな。

そう思った途端、俺は腹を殴られ、後ろにふっ飛ばされる。

力強すぎだろ…

体からミシミシと音がする。

これは…骨が1、2本折れたかヒビが入ったな。

だからヤダって言ったんだ。

ってかアトリーの奴、ゴリラ過ぎない?

明日の訓練は出来そうにないな。

そのまま俺は意識を失った。




ーーー目が醒めると夕日で紅く染まる空が目に入った。

少し時間が経った様だ。

周りには皆が俺の周りを囲っている。


「いやー楽しかった!」

「楽しかった、じゃないわよっ!だから試合させるのが嫌だったのよ。相変わらず手加減が下手ねっ!」

「それでも許可したのはシャウラだけどね。」

「うっ……」


シャウラとアトリーが言い争っている。


……おかしな事に体に痛みが無い。

絶対1本2本は骨が折れたと思うんだが…

ミゼルと目が合う。


「…おっ。目が覚めたかい。」

「アルっ!大丈夫?体痛くない?」


シャウラが駆け寄って来る。


「うん、体は痛くないよ。絶対骨が折れたと思ったのに…」


立ち上がって、体を動かす。

どこも全く痛くない。


「確かに5本くらい骨が折れてたけどねぇ。」


やはり折れてたのか。

折れたのは1、2本程度じゃなかった様だ。

アトリー恐るべし、だな。


「試合の後、アルが気を失っている間にミゼルが魔法で治してくれたのよ。」


回復魔法もあるのか。

どんな原理なんだろう。


「ありがとうございます。ミゼルさん。」

「こんなの、なんて事ないわい。」


まだ授業で習って無いが、簡単なのか?

呆れた様にシャウラが続ける。


「こんな事なんて言ってるけど、これは難しい魔法なのよ。」

「母さんはできないの?」

「ええ。練習してもできなかったわ。人によって合う魔法と合わない魔法があるのよ。」


そんなのがあるのか。

俺は“転生者”の称号があるから、あまり気にしたことが無かった。


「母さんは何が得意なの?」

「そうね…一番得意なのは広範囲の攻撃魔法かしら。」


魔法の属性とかでは無いんだな。

てっきり、水とか風とかなのかと思っていた。


「僕も回復魔法を使えるかな?」

「どうかしら、私は教えられないし…」

「これに興味があるのかい?」


ミゼルが聞いてくる。


「はいっ。」


俺は頷く。


「なら時間がある時に儂の店においで。今日、面白いのを見せて貰ったお礼じゃ。教えてやるよ。」

「ありがとうございます!」


これは有難い。

回復魔法が使えたら、怪我を治すのに時間を費やす事はない。

店への行き方は覚えたから、次の休みに教えて貰うか。


「それよりっ」


アトリーが会話に割って入ってくる。


「坊や、こんなちっこいのに戦い方が上手いじゃないか。あれ、坊やって何歳だっけ?」

「5歳です。」


今日はよく歳を聞かれるな。


「両親みたいに冒険者を目指しているのかい?」

「いえ…まだ考え中です。でも、身分を証明出来る物は持っていた方が便利ですしね。少なくとも、自分の身は守れる様になりたいなと思ってます。」

「大人だねぇ。」


アトリーの視線がカイルに向けられる。


「カイル〜。あんた、色々と歳下の坊やに負けてるんじゃないかい?もっと鍛えないとねぇ。」

「コイツが異常なんだよ。普通、この歳でこんなに剣と魔法を使えねぇだろ。それに、剣術だけならまだギリギリ勝てる。…と思う。」


「カイル君はアトリーさんに剣術を習ってるの?」

「剣術だけだけどな。コイツも俺も、魔法を使えないんだよ。」

「どうだい坊や。こいつとも1戦やってみるかい?」

「…今日はもう遅いので、また今度機会があれば。」

「えーーーー良いじゃないかぁ。」


アトリーが子供の様に駄々をこねる。


ハマルが続ける


「確かにもう暗くなってるね〜じゃあ、今日は解散でいい〜?」

「そうじゃな。ほれ、カイル、アトリー、帰るぞ。」

「えーーーー良いじゃないか。少しぐらい。なあなあなあなあなあ……」


ゴツンッ


「ガキじゃあるまいし。さっさと戻るよ!」


アトリーがミゼルに叱られながら連れて行かれる。

やっと静かになった。


ふと、俺とアトリーが試合をした場所が目に入った。

俺が吹っ飛ばされたせいで、何本か木が折れている。

まるで嵐が通ったみたいだ。

……いや、まさにその通りか。

本当にアトリーは嵐の様な人だった。


今日はとても疲れた。

骨を5本も折られたし…

明日は訓練がある。

飯を食って早く寝よう。

玄関に向かいながら


「母さん、お腹すいた!今日のご飯、何だろうねーー」

「帰ってエルに聞かないと分からないわ。」

「あ、そうそう。今日は鹿を狩って来たよ〜」

「じゃあ、今日はお肉料理ね。今日はアルが頑張ったし、新しく調味料も買ったから私も頑張って手伝おうかしら。楽しみにしててね。」

「やった!。じゃあ早く家に戻ろうっ。」


俺は2人の手を引っ張り、家に向かって走った。





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