第8話 試合のゴング
カランカラン
「シャウラはいるかい?」
「えっ⁉︎アトリー…?凄い久しぶり。いつ以来かしら?」
「6年位だね。」
「もうそんなに経つのね…懐かしいわ…」
シャウラがアトリーを懐かしい目で見る。
「儂はいつも会っているがな。」
「そうだね。私はこの店の常連なんだよ。」
「えっでも、私は見た事はないわよ?」
「そりゃあ、来る時間帯が違うからのう。お前は朝、アトリーは夜によく来る。」
話を途切らす様にアトリーが
「それよりシャウラ、ちょっと聞きたい事があるんだけどね。シャウラの所の坊やと試合をしても良いかい?親の許可を貰わないと、試合をしてくれないんだよ…」
「……何言ってるの⁉︎そんな事をしたらアルが死んでしまうわ!」
「大丈夫だよ。手加減するし、それにあんたらが鍛えてるんだろ?それなら死にはしないよ。」
「それでもダメよ。」
「ほう。じゃあ、シャウラは坊やが弱いって言うのかい。それとも自分の教えに自信が無いのかい?だから坊やの実力も安心できる程、信頼のある物ではないって事か。」
「アルの実力は信じてるわ。ただ、貴女は手加減が下手くそだから、アルとの試合が不安なのよ。」
「確かにコイツは手加減が下手じゃったのう。」
ミゼルが賛同する。
「いやだねぇ。それくらい出来るよ。」
「絶対無理。出来ない。」
「私はもう、シャウラの知る私じゃないんだよ。私だって成長してるんだ。今なら、あんたを簡単に倒せるかもね。」
アトリーが挑発じみた発言をする。
「それに試合ができないなら…………………を、坊やに教えてあげようかな〜」
アトリーがシャウラの耳元で何かを言う。
教えるって何をだ?
シャウラがその発言で硬直している。
どうやら、俺に聞かれたくない事の様だ。
「何を教えてくれるの?」
少し気になる為、アトリーに尋ねる。
「それはな……」
「アルとの試合を許可しましょう。」
遂にシャウラが折れてしまった。
これで、アトリーがハマルに許可を貰ったら俺は試合をしなければいけない。
シャウラは一体、アトリーに何て脅されたんだか…
アトリーがニヤリと笑う。
試合なんかしたら、怪我でバキバキになる。
明日、武術を習えなくなるかもしれない。
しかし、まだハマルが居る。
シャウラは折れてしまったが、ハマルもシャウラも親バカだ。
俺が危険になる事は許可しないだろう。…多分。
「そうと決まれば、次はハマルだね。ハマルは家に居るんだろう?」
シャウラが頷く。
「よしっ。早速出発だ。」
「これは少し面白いことになりそうじゃのぉ。よし。儂も付いて行くからカイル、お前は店番をやっとれ。」
「何ついて行こうとしてんだよ。あんたこそ店にいないとダメだろう。俺じゃまだ、分かんないことがあるんだからさ。」
「じゃあ今日はもう店を閉めるかのぉ。ついでにお前も付いて来い。」
「は?それで大丈夫なのかよ。」
「それくらい、大丈夫じゃ。」
カイルが溜息を吐く。
どうやらここに居る皆で家に帰る事になる様だ。
■□■
「いいんじゃない?実力を試せるいい機会だね〜」
おい!
何あっさり許可してるんだよ!
俺怪我しちゃうよ?
明日動けなくなるよ?
「でも父さん。僕なんて全然相手にならないだろうし、明日の訓練に支障が出るかもしれないよ。」
「そうなったら、明日は休みでいいよ〜」
どうやら試合は避けられない様だ。
アトリーは木の長剣を手に持つ。
それに対して俺は、一番得意の木の短剣を手に持つ。
「それで良いのかい?」
アトリーが聞いてくる。
長剣と短剣ではリーチに差があるが、これの方が小回りが利く。
「これで大丈夫です。」
「じゃあ、早速やろうか!」
「何を使っても良いから、頑張って見てね〜」
「…分かった!」
そして試合のゴングが鳴った。