第4話 訓練の始まり
…コンッ カンッ
木と木がぶつかり合う音が家の前で響き渡っている。
「やーっ!!」
「まだまだ隙だらけだぞ〜〜」
ガンッ
ハマルの一撃で俺の手から木剣が弾き飛ばされ、そのまま俺は尻餅をつく。
「イテテ…やっぱり父さんは強いな」
「そりゃ、アルはまだ小さくて、力も弱いからね〜」
5歳になった俺はハマルとシャウラに武術や魔法を一日毎に交互に習っている。
今日は武術の日だ。武術、と言ってもハマルは器用なので朝、昼、夕方で体術と剣術、槍術、弓術を習っている。
今日はその2回目。
前回は基本的な知識だけ教えてもらった。
今はその確認として試合を行なっている。
体術と剣術でボロ負けだった俺は、続けて槍術でも他2つと同じ結果になった。
「今やって分かったと思うけど、アルは基礎がまだ全然できていないよね〜」
だから、とハマルは続けて
「武術は後回しにして、毎回筋力と体力のトレーニングをしていこうか〜
まず今日は家の周りを5周して、その後に体幹を鍛えて、腕立て伏せと腹筋を…50回かな?それぐらいやって貰うね〜腕立て伏せは、まだ辛いだろうから膝をついても良いけど、腹筋は頑張ろうね〜
あ、それ終わったらもう1回家の周りを3周走ってもらうね〜」
と、ニコニコしながら言った。
…鬼か!?
俺5歳児だぞ?
前世でもこんなに体を鍛えたことは無かったぞ⁉︎
それに家の周りを5周ーーいや合計で8周かーーって…
この家には物置小屋や畑がある為、普通の家より敷地が広い。
日本で言うところの小学校一つが入るくらいはあると思う。
そのせいで1周あたり約500m、8周だと約4kmになる訳だ。
5歳児にとってはキツすぎるだろう…
まぁ、お願いしたのは俺だし、止めることは無理そうだしな…
そう考えながら、ハマルを見る。
顔だけはいつも通りの笑顔なんだが、変な圧が加わっている様に見える。
はぁ…頑張れ、俺。
ーーー夕方
パチパチパチ
「やったね〜やっと全部終わったね〜」
拍手をしながらハマルが言う。
「ゼェゼェ……ゴホゴホゴホッ」
息が上がり過ぎていて、返事を出来ない。
やはり今の俺にはとてもキツかった…
もう全身ガクガクだ。
一番キツかったのがランニングで、時間も掛かった。
でも明日は魔術を習う日だからやらn…
「じゃあ明日も同じ事、やってもらうね〜 …あ、でも走るのは全部で2周、筋力トレーニングは30回だけでいいよ〜」
…明日もやるのか。
嫌なんだけど。
「……でも、明日は、魔法の日、だよ。」
息を整えながら少し反論してみる。
「うん。だから朝のうちに終わらせようね〜シャウラもそれで良いでしょ??」
「ええ、良いわよ。」
!?
振り向くと、家の玄関前にシャウラが座っていた。
全く気づかなかった。忍者か⁉︎いや、それを言うならくノ一か?
「じゃあ、明日の魔法の勉強はお昼からね。」
この日から俺の、5歳児にしては過酷なトレーニングーー普通に前世でもキツイと思うーーが始まった。
そして飯の量も増え、いつもより多い晩飯を出さた。
「今日からこの量を全部食べてね〜」
とハマルに笑顔で言われ、俺はそれを平らげなければいけなかった。
キツかった…。
そしてベッドに入ると、泥のように眠った。