第3話 この世界について
後日、俺はシャウラの膝の上で「星霊基礎」を読み逃しの無いように読んだ。
どうやら、この世界には星霊魔法というものがあるらしい。
これは星が見える夜に、魔力を使い夜空に浮かぶ星々の中から自分で思い浮かべた姿の《星霊》を創り出すものだ。
《星霊》とは星の光をエネルギーにして動く人形。
戦闘などの技能は無く、創造者の生活の手伝いをする程度のものらしい。
軍事に利用出来ないかと研究した者もいた様だが、どれも失敗している。
星霊魔法は万人が使う事が出来る。が、1度きりしか使えず、創った人形もすぐに壊れるらしい。
つまり使えない魔法と言う事だな。
この星霊魔法、名前は俺の星霊術と似ているが、これには、どんな違いがあるのだろうか。
本には星霊術についての記載は無かったが…もし、星霊魔法と大して変わらなかったら、このスキルはゴミスキルって事になる。
以前ステータスを開いて、星霊術について調べたが、「高位の星霊魔法」としか説明がなかった。これじゃ違いが分からない。「高位の星霊魔法」らしいので、せめてゴミスキルじゃなければ良いが…
「全知」なんだから、もっと詳しい情報を期待していたんだけどさ…あの時は本当にガッカリしたものだ。
しかし、この簡単な説明の下に「Lv.1」と書かれていたのを俺は見逃さなかった。
その後、すぐに全知についても調べてみると、星霊術と同じレベルだった。
多分、レベルが低かったから簡単な説明だったのだと思う。
それならレベルを上げるにはどうすれば良いかって事になるが……何となくだけど、魔力を増やす時みたいに、何度も使ったりすれば良いんじゃないか?まぁ、取り敢えずそうやってみないと分かんないよな。
ーーーよし、本を読んで知りたい事はある程度は分かった。
今俺は出来る事が少ない。
兎に角、今は魔力を増やしていこう。
■□■□■
1歳になり、1人で壁無しで歩く事と話す事が出来るようになった。
7ヶ月間、俺は魔法を使っては魔力を枯渇させるのを繰り返していた。
その度に具合が悪くなったが、それも大分慣れてきた。
その成果もあって、22あったMPが300に上がっていた。
我ながら頑張ったと思う。目に見えて成果が出ていると、より一層頑張れる。
それに、魔力制御もかなり上手くなった。
初めは手しか魔力を込める事が出来なかったが、今は額からでも爪先からでも魔力を込める事が出来る。
また、俺は魔法を使う際、明確なイメージさえすれば良いと思っていた。
と言うか、初めに読んだ本にそう書いてあった。
だが色んな本を読み込んでいく内に、イメージするだけでは無く、その事象の原理も理解していなければならない事が分かった。
それが出来ている魔法とそうで無い魔法では、天と地ほどの差があるらしい。
だから俺は魔法に関する本を読み漁っているのだ。
現在俺は空間魔法について学んでいる。
これは瞬時に移動したり、亜空間にものを保管出来たりする便利な魔法だ。しかしかなり理解するのが難しい。って言うか、理解するのは無理だと思う。本に書いてある事を何度読んでも、何を言ってるのか分からない。
かの有名な、狸と言われたら怒り出すロボットの便利道具であるドアやポケットをイメージする事で、ある程度使えるが、原理を理解するとしないとでは、移動可能距離などが結構違ってくる。
他にも様々な事が出来る様になるのだが…やはりその原理を理解するのは、前世の知識を持ってしても難しい。
しかしその知識で、本には記載されていない、新しい魔法を作る事は出来た。
つい最近使ったのが力魔法だ。
俺は物理がそこそこ得意だった為、案外簡単に作ることが出来た。
だから俺は空中浮遊などを行える様になった。
翌朝。
歩いて家の中を動き回れるようになった俺は、物置部屋で鏡を見付けた。
生まれ変わって1年が経つが、自分の姿を1度も見た事が無かった俺は、この時初めて新しい自分の姿を見た。
「ーーーおぉ」
思わず感嘆の声が出る。
俺、自分で言うのもなんだが、結構整った顔で生まれてきた様だ。目は大きいし、鼻筋は通ってるし、髪はフワフワしている。
流石シャウラの血が流れているだけはあるな。勿論ハマルと似た所もあり、眉毛の形など全く一緒だ。まぁ、ハマルもモブ顔ではあるが、あくまで外人さんの中でのモブ顔だから、日本人に比べれば整っている顔なんだよな…ただ特徴が無いだけで。
そして二人は何方も金髪だ。しかし俺は、白髪に近い金髪となっている。
目は二人に似ていて、綺麗な青ーーいや、コバルトブルーって言えば良いのかなーーだ。
そんな感じで鏡を見てると、首の側面に痣の様なものを見付けた。
変な形の痣だな。
確認してみると、それは背中の方まで繋がっていた。
服を捲り、背中を見てみると、そこにはまるで蚯蚓脹れの様な、蛇が通った様な痣ができていた。
何だこれ?
こんな形の痣なんて見た事がないぞ。気味が悪いな。
魔法とかがある世界だ。
この痣にも何かあるかもしれない。
…もしかしたら、ただの変わった形の痣なのかもしれないが。
どちらにしても、後々調べておきたいな。
■□■□■
それから2年間、俺は魔法やスキルを何度も何度も使った。
少し魔力枯渇時の酔いにも慣れてきたので、ペースアップしたせいか、MPは1250になっていた。スキルも“全知”のレベルが1から2になっていた。スキルを使う際、SPが枯渇したらどうなるのか不安だったが、特に具合が悪くなったりとかはしなかった。
また、この2年でこの世界についても学んだ。
この世界には《春大陸》《夏大陸》《秋大陸》《冬大陸》この4つの大陸があり、その名の通り大陸ごとに気候が異なる。
その内、《春大陸》に俺の住んでいる村、《カンプス村》がある。
ここは《エスタシオン》という国の端にあり、海に面している。
この国の首都は《フローラリア》といい、様々な花が咲き誇る美しい街だそうだ。
宗教に関して、この世界には多くの神が存在し、その数だけ宗教がある。
それらは大きく2種類、多くの種族に平等な宗教と、人種至上主義で他の種族に対して差別的な事をする宗教に分ける事が出来る。
前者で代表的なのはウェントゥス教やケラヴノス教、カタフニア教などで、後者で代表的なのはフロガ教やアンスロポス教、ルーカス教などだ。
特に後者の宗教は他種族を人種に仕えるべき奴隷として扱っているらしい。
「うわー。どんだけ自分達が偉いと思ってるんだよこの宗教の奴ら。頭大丈夫?」って思ったが、結構信者の数が多いらしい。絶対関わりたく無いな。
しかし幸いな事に、神を信仰するしないは個人の自由らしく、ハマルやシャウラは信仰している神などいないそうだ。
日本みたいなものだな。
日本もキリスト教じゃ無いのにクリスマスやハロウィンなどを行なったり、お盆には墓参りをしたりもする。
俺もクリスマスによく燥いだものだ。
また、以前シャウラに読んでもらった伝記に登場する魔物は今も尚、存在する様だ。
その上、魔物やその死骸が集まり邪悪な魔力が溜まる事によって、ダンジョンが形成されたりもするらしい。
ステータスに項目が無かった職について、冒険者、傭兵、商人、神官、盗賊など様々な職があるらしい。
また、この世界には職ごとにギルドがあるらしく、そこで登録などをするそうだ。
俺は将来何の職に就こうか…
そういえば俺、前世で進路希望調査用紙を提出しないまま死んでしまったんだよな。
提出日がすぐだったが、白紙だった。
つまり何を言いたいのかというと、俺は進路とか、将来の事を考えるのが苦手なんだ。
ーーーまぁ、まだ子供だし決めるのはもっと先でいいよな。
何にしても、まずはある程度力を付けなければいけない。
盗賊に遭遇したら対応できる程度にはしておきたいな。
もしもの時、殺されるのは御免だ。
後何年かしたら、ハマルとシャウラに武術や魔法を教えてもらうか。