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治療師の弟子  作者: 鈴木あきら
第1章 新しい人生
21/27

第21話 狩猟

遅くなって申し訳ありません。

7日後


俺とハマルは今、村付近の森で狩りを行なっている最中だ。

ここには普通の動物も、魔物も生息している。

魔物と言っても弱い魔物ばかりで、森の深くに入らない限り強い魔物に出くわす事はない。

それでも魔物は普通の動物と比べ、凶暴性があり攻撃力、耐久力共に高い。

強い魔物に成るにつれて、それに加えて知能も高くなっていく。

そんな話を聞いて、現在5歳児である俺がそんな魔物に遭遇しても大丈夫だろうか、と思うだろう。

実際俺はそう思ったが、ハマル曰く「訓練を初めて一年くらい経つから、弱い魔物ならアルでも大丈夫大丈夫〜」との事だ。

まぁ、成長補正の影響でハマルに習っている武器はある程度使う事が出来る様にはなった。

それに魔法やスキルもあるから、確かに少なくとも普通の動物なら狩れると思う。

しかしハマルが狙うは、火を吐く魔物、レッドケルウスだ。

それだけの説明しかされなかったが、一体どんな魔物なのだろうか。

俺としては普通の動物、鹿とか兎とかを狩りたかったんだが…

そんな事を考えていると、ハマルが歩みを止め身を屈める。それに俺も続く。


「いたいた。アル〜あれがレッドケルウスだよ〜」


ハマルが指をさした方向に目を向けると、約15メートル先に蝦夷鹿よりも大きく雄々しい角を持った赤い牡鹿が草を食べていた。

俺は肩に掛けていた弓を手に取る。

するとハマルが


「あ〜、弓だと刺さらないから、槍の方が良いよ〜ほら、前教えたスキルを使ってさ。本当は頭とか心臓を狙うのが良いんだけど、難しいから首の背中側の付け根を狙ってみてごらん。ここを壊すと走れなくなるから〜」


とアドバイスをしてくれた。

首の付け根となると、脊椎と肩甲骨の交点の辺りか。

恐らく神経の束があるのだろう。多少ずれたとしても、肩甲骨が破壊されると物理的に走れなく成る筈だ。


「うん、わかった。」


ハマルに渡された槍を片手に構え


“投槍”


この7日間で新たに獲得したスキルを発動させると、槍が真っ直ぐレッドケルウスへ飛んで行く。


スキルを発動させずに投げるとその際に腕に負荷がかかるが、これを使うとそれが全く無く、狙った所に必中させる事が出来る。

まぁこれには範囲があり、それを超えるに連れて命中率が下がるのだが。

しかしスキルのレベルが上がればその範囲も広くなり、目に見えない程遠くからでも必中させる事が出来るそうだ。


俺がこのスキルを獲得したのが一昨日。

獲得したてでレベルも1だが、“全知”によると現段階で20メートルが必中範囲となっている。

俺とレッドケルウスの距離はその範囲内となっている。

つまり、俺が投げる槍は必ず命中するという事だ。

俺が投げた槍はハマルに指定された所に命中する。


「ピーーッ」


レッドケルウスは鳥のような鳴き声をあげ、逃げる為に駆け出したが、その場に崩れる様に倒れる。立ち上がろうとするが、それが出来ない様だ。

攻撃は見事に命中した。

俺は「アル凄〜い!」とハマルに頭を撫でられながら、仕留めたレッドケルウスの元へ向かう。

近くから見ると、遠目で見るより更に大きかった。

俺の知っている鹿の2倍はあるのではないか。

綺麗な赤い毛皮からはそれより少し暗い色の血が付いている。

槍が刺さっている所から筋肉の筋が見え、骨が飛び出ていた。

前世も含めて初めて見るグロテクスな光景だったが、具合が悪くなる事はない。

恐らく常時発動スキルの”感覚麻痺”がその原因だろうな。

そんな事を考えていると、ハマルがナイフを俺に渡してくる。


「苦しんでるから、早くとどめを刺してね〜」


確かに苦しそうに身を痙攣させている。息も荒い。

攻撃したのは此方だがそれは食べる為だ。だから罪悪感は無い。それよりも感謝するべきだろう。

俺はハマルの指示を受け、首の頸動脈に刃を入れる。

鮮血が散り、レッドケルウスの呼吸が浅くなっていく。

心臓が停止したのを確認した俺は、心の中で『いただきます。』と合掌する。

その後、ハマルと共にそれの脚を一本の棒に縛り付け、もう二本ーー其々、片方の端がY字になっているーーを地面に刺し、脚を縛り付けた棒を掛ける。

それから血が抜けるのを待つ。血抜きが終わったら、二本の棒を片付けて獲物を二人で運ぶ。

身体強化をしないと(頑張ればいけるが)運べそうもない為、スキルで身体強化をする。


「関節以外強化したらダメだからね〜ちゃんと体を鍛えないと〜」


ハマルに強化を禁止された。

どうやらスキルを使ったのがバレたようだ。無詠唱なのに、だ。

何故バレたのやら。

はぁ、明日は筋肉痛確定だな。

俺達はーー俺は腕をプルプルさせながらーーそのまま家へと帰って行った。



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