第17話 エルフ
13話と14話がほぼ同じタイトルだった為、結合しました。
「今日どうだった?魔法は使えたの?」
晩飯を食べながらシャウラが俺に聞いてくる。
…今日は色々な事が有ったな。本当に疲れた。
ミゼルに回復魔法について教えて貰っていたらアトリーに遭遇し、カイルと共に誘拐され、ゲートを通りノクターンへ。
振り返ると「疲れる訳だな」と思う。
「うんっ。傷を治す魔法と、毒を消す魔法を教えて貰ったよ。凄い楽しかった!」
「良かったね〜それで帰るのが遅くなったの?」
「教えて貰ってる時にアトリーさんに会って、そのままカイル君と試合をする為にノクターンの冒険者ギルドに連れてかれちゃって…まぁちゃんと勝てたけどさ。それにゲートを通るのが始めてで、楽しかったしね。」
「おぉ〜それは良かっーーー」
「そんな遠くに⁉︎アトリーったら、私達に何も言わないで…もし何かあったらどうするつもりだったのかしら。」
初めは驚いていたシャウラだが眉間の皺を作り、声のトーンを落としていく。
ーー場の空気が冷たく成る。
どうやら少し本気で怒っている様だ。
まぁ、日本だったら無断で子供を連れ出すなんて警察沙汰だしな。
その上2人とも、特にシャウラが親バカだ。怒らない訳が無い。
と言っても、少し不機嫌に成る程度だと思っていたが…
シャウラが怒るのも分かるが、この空気の中で晩飯を食べるのはちょっとな…
「で、でもねっ、アトリーさんが僕達を少し無理矢理連れて来たからって、そこのギルドマスターのゼラフさんに沢山怒られてたよ。僕達、アトリーさんを残して帰って来ちゃったんだけど、大丈夫かな…」
ゼラフの名前が出た途端に、場の冷たい空気が無くなっていく。
「そうっ。ならアトリーも反省してくれそうね。」
…相当怖いんだろうな。ゼラフに怒られるのが。
シャウラも怒られた事が有るのだろうか。
笑顔に成っていくのを見て、内心「ざまぁ」と言っている声が聞こえる気がする。
「そういえば、『ステータス』って何?」
話を変えて、スキルについて聞く為に、自分のステータスボードを俺以外にも見る事が出来るか確かめる。
それにハマルが乗って
「これはね、自分状態を表す物だよ〜“ステータスオープン”って言ってみて?」
「“ステータスオープン”…っおぉ。」
「出て来たみたいだね。これで自分の状態の確認とかを出来るんだよ。意識してみれば人にも見せれるけど、普通は自分しか見れないからね〜」
「あれ?この種族って所に書いてある、『クウォーターエルフ』って何?」
「あ〜それは、僕がハーフエルフだからだね〜」
「え⁉︎」
シャウラでは無く、ハマルだったなんて…
……確かによく見ると、ハマルの耳が少し尖っている。
我ながら上手い芝居をしていると思っていたが、本気で驚いてしまった。
家にはそう言った種族に関する本が無い為、エルフについて知らないフリをしなければ…
「父さんって人種じゃ無かったんだ…ハーフエルフってどんな種族なの?」
「『エルフ』って言う耳が尖った寿命が無い種族と、人間との間に生まれた子供がハーフエルフって言うんだよ〜ほら、僕の耳も少し尖ってるでしょ?ビックリするよね〜」
耳が尖っている事より、エルフに寿命が無い事の方が驚きなんだが。
となると、ハマルや俺の寿命は何年に成るんだ?
「わー本当だぁ。でも、エルフって寿命が無いんでしょ?父さんや僕ってどうなるの?」
「人から聞いた話だと、10万年は生きれるらしいね〜僕。アルはその半分の5万年は生きれるんじゃないかな〜」
気が遠くなる程長いじゃないか。
それだと、何時か親しい者達が死んで逝くのを見送らないといけなく成るだろう。
それは嫌だな…
まぁ今考える事ではないか。
「すっごい長いね!何だか物語の中にいる人みたいだ。エルフの人達は…もう神話の域に入りそうだね…」
「そんな事もないよ?ミゼルだってエルフだしね。案外身近に居るものだよ〜」
「え⁉︎ そうだったの⁉︎ あっ、そう言えば確かに耳が尖っているね…」
…少しオーバーリアクション過ぎたか?
2人はあまり気にしていない様だし、大丈夫かな。
それにしても、ミゼルがとても永く生きているなら、スキルとかも沢山持っていそうだな。
次に会ったら、参考にステータスを見させて貰うか。
「ミゼルさんと言えば……今日ミゼルさんにスキルについて教えて貰ったんだけど、スキルって父さんも母さんも沢山持ってるの?カイル君も持ってて…」
「カイルも随分成長したみたいだね〜僕は武技スキルなら沢山持ってるよ〜」
「私は魔技スキルが多いわね。」
「……『ぶぎ』と『まぎ』って何?」
ミゼルから聞いた話には出て来なかった言葉だな。
スキルの種類のことか?
「スキルには種類があるの。それが武術を学ぶ事で獲得出来るスキルと、魔法を学ぶ事で獲得出来るスキルで、それぞれ『武技』と『魔技』って呼ばれているのよ。」
「そっか!それで武術が得意な父さんは武技スキルが多くて、魔法が得意な母さんは魔技スキルが多いんだねっ。」
「そうそう〜」
成る程。何方か偏った訓練の仕方をすれば、その分スキルにも偏りが出来るという事か。
そう考えると俺はこの歳から両方を訓練して貰っている為、その心配は無さそうだ。
「所でアルは何かスキルを持ってるの?」
「えっとねー………」
さて、ステータスボード様々なスキルが有る訳だが…
流石に“浮遊”の事を言ったら、「何故そんなスキルを⁉︎」って言うことに成りそうだしな。
無難な“身体強化”について話しておくか。
「“身体強化”って言うのがある。」
「あらっ、もうスキルを獲得してるのね!凄いわアルっ。」
「それにそのスキルは使い勝手が良いからね〜僕も持ってる。」
「そんなに凄いの?」
「鍛え始めてあまり経っていないのに、スキルを獲得している事が凄いのよ。」
「そ、そうなんだ。でも、もっと沢山欲しいな。その方が戦う時、便利になりそうだしね。」
「じゃあこれから、何時ものに加えてスキルの習得もして行こうか〜」
「その案良いわね。明日から使えるスキルを教えていきましょう。」
えぇー……
これ以上キツくなるのかよ…
翌日から今以上に厳しく成った訓練の筋肉痛に悩まされる事となる俺だった。
次回更新日は9月28日です。