第12話 回復魔法について
遅くなって申し訳ありません。
ーーー7日後
カランカラン
「こんにちはー」
「おや、シャウラん所の……」
「アルファルド、だろ。」
カイルが店の奥から出て来る。
「できれば2人とも『アル』って呼んでください。母さんと父さんにそう言われてるので。」
「そうかい。」
「あぁ、分かった。」
2人が頷く。
良かったアトリーは居ないようだ。
もし居たら、早速カイルと試合をしろと言われていただろう。
このままアトリーが来なかったら「居なかった」という事で試合をせずに済むかもしれない。
……いや、試合をしなければ明日からも厳しめの訓練になるな。
やはり試合は避けるべきではないか。
「それでアル、お前は魔法を習いに来たんじゃろ?」
「はいっ。」
まぁ、まずは回復魔法を学んでからだ。
「簡単な話じゃ。この魔法は、ただ物体を元の状態に戻すだけじゃよ。その物体のつくり、どう壊れているかが分かれば簡単にできる。まぁ、人によって向き不向きはあるがの。」
ビリッ
ミゼルが手元にある紙を手に取り、それを破る。
「ほれ。やってみろ。」
破れた紙を俺に渡す。
もう実践なのか?
まぁ、確かに仕組みは簡単だが…
これは“全知”や前世の記憶を使えば簡単にできそうだ。
俺は破れた紙に目を向ける。
これは目で破損個所を確認できる為、人の体などよりは簡単そうだ。
紙を手の上に乗せ、紙の繊維と繊維が絡みつくように修復するイメージで紙に魔力を流す。
ーー上手く、繋ぎ目も分からない程綺麗にくっついた。
しかし手がぶれたせいか、少し段ズレができたしまった。
これで大丈夫か?
「あの、これで大丈夫ですか?少しズレちゃったんですけど…」
「ふむ。初めにしては上出来じゃな。」
「お前…アルだからもうあまり驚かないが、普通はその歳では無理なんだからな?」
「お前はちっともできなかったからのう。」
「俺は合ってなかっただけだ。」
やはり適性の有り無しじゃ全く違うな。
“転生者”様々だ。
「えっと…他に何をすればいいですか?」
「後は本でも読んで知識を付けるだけじゃ。怪我は外だけとも限らんからのぉ。」
内側の怪我…骨折とかか。
病気も含まれるのか?
「この魔法で病気も治せるんですか?」
「病気?なんじゃそれは。」
「【悪魔の手付き】の事ですよ。」
ーー【悪魔の手付き】
この世界の人々は外傷は無いが苦しみ、死に至る事もある病を悪魔の仕業としてこう呼ぶ。
「それは無理じゃ。これは仕組みが分かっとらんからの。」
流石に無理か。
この世界は科学というものが無い為、医学が発展していないだろうからな。
俺も医学なんて知らない。
一般的な高校生が学ぶ訳もないしな。
「…そうじゃ。」
ミゼルが店の奥に入って行く。
少し経つと、一冊の本を手にして戻ってきた。
「ほれ、これをやるよ。」
ミゼルが俺に本を差し出す。
どうやら人の体の構造についての本のようだ。
「良いんですか?」
「良い良い。儂はもう必要ないからのぉ。」
「ありがとうございます!」
人の体について、前世の生物の授業でそこそこ学んでいるが、本があって損はない。
有り難く頂戴する。
カランカラン
「おや、坊やじゃないか。」
後ろからドアの開く音と、聞き覚えのある声がする。
…タイミングが良いな。
後ろを振り返ると、そこにはアトリーが立っていた。
次回更新は21日です。