表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
治療師の弟子  作者: 鈴木あきら
第1章 新しい人生
10/27

第10話 振り返ると

「さっきの試合、何がいけなかったと思う〜?」


晩飯を食いながらハマルが聞いてくる。


「うーん…身体強化を足にしかしてなかった事かな。もし全身にしてたら、アトリーさんに吹っ飛ばされても気を失わなかったと思う。」

「そうだね〜。それにアトリーの背後に回った時の攻撃をもっと遠くから最初の、魔法で覆った剣にしていたら、アトリーの攻撃が届かなかったかもね〜。まぁ、地力の差もあるけどさ〜。」


ーー地力の差。

勿論、鍛えた力の差もあるが、俺とアトリーには大きなレベルの差があった。


レベルはゲームと同様に経験を積まないと上がらない。

それも実戦のだ。

倒した…いや、殺した相手の魂が経験値となってレベルが上がっていく。

『魂なんて物もあるのか。』

この事を本で知った時そう思ったものだ。

しかしこの世界は魔法など、非科学的な物がある世界だ。

魂があってもおかしくはない。

レベルを上げる際、殺さなくても相手が降伏した場合は、その相手の魔力全てを奪って、それを経験値に変換する。

魔力が枯渇しても死ぬわけではないからな。

とても具合が悪くなるが…


アトリーとの試合の際、年齢やスキルなどを除くステータスを少しだけ見させて貰った。

年齢を見て、それがバレたら絶対ボコボコにされるだろうし、実戦では実際に会って“全知”を使わなければ、敵の情報を事前に知っている事は少なく、試し合いには不要だろうと思ったからだ。

俺の見た情報はレベルとHP、そしてMPだけだ。

アトリーのレベルは39。それに対して俺は1。

それもそうだ。アトリーは戦いの経験が豊富の冒険者で、俺はただの体を鍛えてる5歳児だ。

生きてきた時間も、戦いの経験も違う。

レベルが上がると、ただ鍛えているよりも強くなれる。

絶対にレベルを上げる方が効率的に強くなれる。

基礎を作ったら、その内実戦訓練をハマルに教えて欲しいものだ。


HPとMPについて、HPは俺が2050なのに対して、アトリーは19870。

…桁で違うじゃないか。

やはりHPはアトリーの方が何倍も多い様だ。

しかしMPは34、俺の生まれた時とほとんど同じだ。

魔法を使わない、使えないと生まれた頃と変化しないという事だろう。


「そう落ち込まないで良いのよ?アルは5歳の割にはとっても強いんだから。」


考え込んでいる俺を見て落ち込んだと思ったのだろうか、シャウラが声をかけてくる。


「落ち込んでないよ。少し考え事をしてただけだよ。」

「あらそうなの?」

「それより…僕って強いの?」


この世界では、俺ぐらいの歳の子どもはどれ程強いのだろうか。

訓練を始めて1ヶ月しか経っていない。

せいぜい普通の5歳児より少し強いくらいだろう。

……それにしてはアトリーとの試合の時、周りに驚かれたな。


「ええ、強いわよ。」

「どのくらい?」

「10歳より下の子はアルに勝てないと思うわよ?」


思っていた以上に俺は強い様だ。


「えっ!?まだ少ししか習ってないよ?」

「アルは吸収力が凄いからね〜」

「そう。アルは魔法も武術も、教えた事を全部すぐに習得しちゃうのよ。」

「普通はもっと掛かるんだけどね〜」


これは恐らく“転生者”の称号による影響だろうが、これは思っていた以上にその影響が大きいな。

もう少し気を付けないと変に目立ってしまう。

この2人や、もう既に実力を見せてしまった人はもう遅いが、今後出会う人には、少し強い程度に思われる様にしないとだな。

その為には同年代くらいの基準を知らないといけない。

…そういえば、アトリーがカイルと試合をやらないかと言っていたな。

ミゼルに回復魔法を教えて貰う時に、試合もするか。


「だから私達も色々教えちゃうのよね。私はもう身体強化を教えてるわよ…」

「僕なんて僕が使えるほとんどの武器を教えてるよ〜」

「……普通はいつ習うの?」

「私は、16歳くらいの時に身体強化を習ったわね。」

「僕は〜10歳から親父に剣を教えてもらったけど、体術と長剣しか習ってなかったな〜」

「そんな事を僕に教えてたの!?」


今習ってる事が難しいわけだ。

俺は生まれた頃から魔法について学んでいたが、それでも難しいと思っていた。

こんな事を習っていたなら、それにも納得ができる。

普通、俺の歳より11歳も上の時に習った事を教えるか?


「僕の歳でそんな事ができたら、変な目で見られるじゃん!」

「ただ凄いだけだよ〜それなら目立つくらいだろ〜」

「僕は目立ちたくないのっ。」

「なら加減とかすれば良いじゃない。」

「普通が分からないから手加減もできないんだもん…」

「今まで僕達を相手にしてて、同じ歳の子と戦ったことがなかったもんね〜」

「……なら、ギルドの訓練所に行ってみたらどうかしら?」

「流石シャウラ、いいこと思いつくね〜」

「『ギルドの訓練所』ってなに?」

「冒険者になる為に必ず行かないといけない所よ。ここである程度必要な事を学んで、試験に合格しないと冒険者にはなれないのよ。」


学校の様なものか。

確かにここなら他の人の実力も分かるかもしれないが…


「僕まだ冒険者になるって決めてないよ?」

「他にも似た様な所があるけど、どれもここよりお金が掛かって、アルを行かせる事は出来ないの。」


この家は使用人を雇える程の金を持っているが、それでも足りないという事か。

どれだけ高額なのだろうか…


「ギルドの訓練所っていくら掛かるの?」

「試験を受ける時だけお金が必要だけど、試験を受けるか受けないかは自由なのよ。学んだりする期間は3年で何歳でもいいけど、冒険者になれるのは10歳からだから、7歳になってから行ってみたらどう?ね、受けてみない?」


なるほど、受験料だけかかるってことか。

もし受験しなければ、無料ってことだな。

…面白そうだし、シャウラやハマルに教えてもらえない事も学べそうだ。

行ってみて損はないだろう。


「…うん。面白そうだからやってみようかな。」


期間は3年で、7歳からか。

あと2年も…いや、2年しかないな。

生まれて5年が経つが、あっという間だった。

その間にできる事はやっておきたいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ